"手違い"ではすまされない——医療施設への攻撃

2016年02月19日

医療施設への攻撃は国際人道法の違反である——国境なき医師団(MSF)は、紛争のすべての当事者に対し、国際社会が長い年月をかけて築き上げてきたこのルールを直視するように求めます。

2016年1月~2月中旬までで、シリアだけでも17軒もの医療施設が爆撃されました。その中にはMSFが支援している医療施設6軒も含まれており、スタッフ14人が命を奪われました。MSFは、医療施設が標的とされる傾向が強まっていることを、身をもって感じています。一方、攻撃した当事者は「手違い」や「過誤」という言葉で事態を軽く見せかけようとしています。

MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は、攻撃に遭ったことを訴える場さえ持たない医療施設もあることを念頭に、「紛争当事者が少しの説明責任も果たさないまま、こうした傾向が続いていることは容認できません」と断じています。

調査報告書『シリア内戦2015:国境なき医師団(MSF)支援先施設における死傷者の記録』

国境なき医師団(MSF)は、2016年2月18日付で、シリア国内でMSFが支援している病院・診療所計70施設から得たデータに基づいて民間人の紛争被害について詳述した調査報告書『シリア内戦2015:国境なき医師団(MSF)支援先施設における死傷者の記録』を発行しました。ぜひご一読ください。



アフガニスタンの外傷センター。42人の患者・スタッフが命を奪われた


左:シリアのマアラト・ヌマン病院。少なくとも7人が亡くなり、8人が行方不明だ
右:イエメンのシアラ病院。6人が亡くなり、少なくとも7人が負傷した

MSFが運営・支援している病院への攻撃(2015年10月~2016年2月)

2015年

10月3日 アフガニスタン・クンドゥーズ州の外傷センターに爆撃
患者・MSFスタッフ42人に命を奪われ、外傷センターは閉鎖に
10月26日 イエメン・サアダ州のハイダン病院に数回にわたる爆撃
MSFスタッフ1人が避難中に負傷
10月29日 シリア・首都ダマスカス近郊のドゥーマ仮設病院に爆撃
15人が命を落とし、100人以上が負傷
翌30日、病院の近くの市場が爆撃されて70人以上が命を奪われ、550人以上が負傷
11月19日 シリア・エルビン市でMSFの支援先病院にミサイル2発が着弾
2人が命を落とし、病院の建物や救急車が損壊した
12月2日 イエメン・タイズ州のフーバンの移動診療が被弾
9人が負傷し、そのうち2人は重体

2016年

1月10日 イエメン・ラゼーでシアラ病院に爆撃
6人が命を奪われ、少なくとも7人が負傷(1月25日時点)
1月21日 イエメン・サアダ州のジュムフリ病院の救急車が空爆で被弾
運転していた保健省スタッフが命を落とした
2月5日 シリア・ダルアー県のタファス野外病院に爆撃
3人が命を奪われ、6人が負傷した
2月15日 シリア・イドリブ県でマアラト・ヌマン病院に爆撃
患者・スタッフ計25人が命を奪われた

このほか、MSFの運営・支援先ではない複数の医療施設も爆撃を受けたことが報告されています。

紛争地での活動体験——日本人スタッフの目

渥美智晶/外科医/イエメン

到着したその初日の夕食時、街からすぐ近くの検問所へ2回連続で空爆が有りました。比較的間近での空爆は爆撃音だけではなく、衝撃波もからだに大きく感じ、不安な初日の夜となりました……

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池田知也/外科医/イエメン

アデンでは、2015 年10月のはじめの3週間、車で1~ 2時間はなれたところで激しい戦闘があり、多くの傷病者への対応を行いました……

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小野不二雄/ロジスティック・マネジャー/イエメン

毎日多くの患者が来るのですが、7月には一般の人びとが暮らす住宅地域に砲撃があり、6~7時間の間に150人近い患者が搬送されてきました。そしてそのすべてが一般市民でした……

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