国際援助の削減

このテーマの活動ニュース一覧を見る

国際援助はなぜ削減されているのか

国際援助がいま、危機に直面しています。大きな要因となっているのが、米国政府による国際援助への大幅な資金削減です。
 
トランプ政権は2025年2月に突如、米国際開発局(USAID)や米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)などを通じて行ってきた多くのグローバルヘルスおよび人道援助プログラムへの支援を凍結。国際援助への支出を大幅に削減するとともに、これらの活動を解体し、スタッフの多くを解雇することを発表しました。

加えて、世界保健機関(WHO)からの脱退や Gaviワクチンアライアンスへの支援打ち切りなど、国際保健協力の枠組みからの離脱も表明しています。
 
米国は長年にわたり、グローバルヘルスおよび人道援助プログラムの主要な支援国であり、2024年には関連資金の約4割を拠出しました(出典:経済協力開発機構=OECD)。また、世界の政府開発援助(ODA)の約3割も米国が占めています。

こうした米国の援助資金は世界中のコミュニティの健康と福祉の向上に貢献してきた一方で、その総額は米国の連邦政府予算の1パーセント以下にすぎません。
 
加えて、英国、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、オランダなどの欧州諸国も、国際援助の削減を発表または実施しています。
© Gabriella Bianchi/MSF
© Gabriella Bianchi/MSF

国際援助の削減による影響

米国の突然の資金削減は、長引く紛争や貧困、度重なる自然災害などによって弱体化している国や地域の人びとや、そこで活動する多くの援助機関に、すでに直接的な影響を及ぼしています。

栄養治療食や栄養補助食品の不足、予防接種の中止、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)のプログラムや避妊薬などの供給の停止、安全な水の不足、HIVや結核、マラリアなど感染症の治療の中断などが起きています。
 
例えば、PEPFARおよびUSAIDの資金削減により、ウガンダ、ジンバブエ、南アフリカではHIVの治療施設が閉鎖されたり、抗レトロウイルス薬(ARV)による治療が難しくなったりしています。

ナイジェリア、ケニア、タジキスタンでもARVの不足により、治療の中断や、薬剤耐性が発生してその後の治療が困難になるリスクが高まっています。

国境なき医師団(MSF)は、米国の資金削減により、多くの人道援助プログラムや援助団体の活動が中止に追い込まれ、人びとが命の危険にさらされている現状を目の当たりにしています。
© Martim Gray Pereira/MSF
© Martim Gray Pereira/MSF

関連記事:米国の国際援助削減の決定から100日が経過──世界中で拡大するグローバルヘルスと人道援助の危機

国境なき医師団の対応と活動への影響

MSFは米国政府から資金提供を受けていないため、他の多くの援助団体が直面しているような直接的な影響はありません。米国の政策変更や資金削減が原因でプロジェクトを中止することはなく、今も世界70カ国以上で医療・人道援助を続けています。
 
それでも間接的な影響は出ています。援助活動は単独では行えません。MSFも活動地内外のさまざまな保健組織や人道援助機関と緊密に連携してサービスを提供しています。しかし、MSFが連携するさまざまなプログラムが資金削減によって中断を余儀なくされています。

また、MSFが患者の搬送先としていた専門的なケアができる医療機関の減少や、サプライチェーンの混乱による物資の不足や在庫切れも予想されます。今後、医療の提供がさらに困難となり、コストも大幅に増加する可能性があります。
 
MSFはこの国際援助の削減によって生じた深刻な状況に対応するため、活動の拡大や優先順位の見直しなどを検討しています。同時に、米国政府と議会に対し、グローバルヘルスと人道援助プログラムへのコミットメントを従来通り維持するよう、強く求めています。 
© Mohamed Ali Adan/MSF
© Mohamed Ali Adan/MSF

国際援助の削減の活動ニュース

活動ニュースを選ぶ