対テロ政策の人道援助への影響

基本情報

人道援助の活動は、かつてない困難に直面している。2001年の9・11アメリカ同時多発テロ以降、「テロとの戦い」を目的とした法的枠組みが国際的につくられたことが背景にある。国連が後押しし、各国が20年以上にわたり展開してきた対テロ政策は、人道援助従事者の安全確保、活動の実施、そして援助対象者に大きな影響をもたらした。国境なき医師団(MSF)の統計では、援助スタッフへの国家による攻撃や逮捕、起訴が、武装勢力による襲撃や拉致よりもはるかに多いことが示されている。

なぜこうしたリスクにさらされているのか。それは各国の反テロ法や刑法が、国際人道法で認められているはずの人道援助活動の一部を犯罪とみなすようになったからだ。犯罪またはテロの共犯として規定される恐れがあるのは、次のような活動だ──①テロリスト指定された勢力の支配地域に暮らす人びとへの援助提供 ②テロリスト指定された勢力の指導者と接触を持つこと・維持すること③テロや犯罪の疑惑がある人物を医療・人道上の理由で搬送すること ④テロ・犯罪疑惑がある患者を医療施設で治療すること。

実際に、シリアで反体制派の支配地域に暮らす人びとに援助を行うMSFは、政府からテロ組織とみなされ、スタッフが拘束された。ナイジェリアでも武装勢力の支配下にある地域での援助活動や、活動立ち上げに向けた武装勢力との接触で、軍当局から糾弾された。コンゴ民主共和国では、犯罪・テロ指定されたグループとの人脈を築こうとしたとしてスタッフが有罪判決を受けた。カメルーンでもテロ指定された勢力の支配地域で、けが人の搬送や援助活動を行ったことでスタッフが逮捕された。また、シリア、イエメン、アフガニスタンなどでは国軍によって病院が攻撃され、MSFのスタッフと患者が犠牲になっている。これらの病院に共通しているのは、犯罪者やテロリストとみなされる集団のメンバーが治療を受けていた点だ。

このような傾向を変えるため、MSFは2016年から国連と加盟国に対し、対テロの作戦や規制において国際人道法の優位を認めるよう呼びかけはじめた。具体的には、人道援助活動が対テロ規制・制裁の対象にならないよう、国連決議や各国の国内法に適用除外条項を導入することを求めている。

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