海外派遣スタッフ体験談
一般市民が犠牲に...紛争の続くイエメンで活動
小野 不二雄
- ポジション
- ロジスティック・マネジャー
- 派遣国
- イエメン
- 活動地域
- アデン
- 派遣期間
- 2015年5月~2015年8月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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今までも、活動に参加できる時期を考えながら日本での生活をしていましたが、2015年5月ぐらいから再度の活動参加を考えていました。当初、ネパールの地震の緊急支援の話もあったのですが、その後イエメンのアデンでの活動のオファーをもらい、決めました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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今回の活動の前は、2014年末まで南スーダンでの活動に参加しましたが、その後、家族の状況からしばらく日本で家族とともに過ごしていました。その間は自宅で家事などを行いながら、自分の趣味も兼ねて、スペイン語の教室などに通っていました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
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今までMSFの活動で学んだ、病院運営に必要な機材や医療器具などの一般的な知識は、今回の活動でも役にたちました。特に手術室での機材、消毒用の機材の設置や整備などは、前回の南スーダンでの活動経験が役にたちました。
それ以外にも、水の管理、廃棄物管理などは今まで参加した多くの活動でも行っていましたので、同じように対応することができました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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アデン病院でMSFが外傷治療を提供
今回の活動は、MSFが運営する、頭部を除く外傷患者に対する治療を提供する病院の活動です。そのなかで自分は、ロジスティック・マネジャーとして病院施設の維持管理、安全管理業務、物資調達と在庫管理、衛生管理、発電機を中心とした電気設備の管理、自動車などの運行管理、船と飛行機の運航管理支援などを行いました。
海外派遣スタッフは着任当初は8人でしたが、その後拡大して13人になっていました。現地スタッフは約150人。それ以外にも日雇いの従業員もおり、定常的に多くのスタッフが働いていました。
病院の目的が紛争地での外傷患者への医療援助ですので、多くは銃弾や砲撃による患者が主です。なかには地雷による外傷の患者などもいました。それ以外には交通事故などの患者もいました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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人材や物資は隣国ジブチから船で供給される
毎朝午前6時頃に起床し、朝食をとり、病院に出かけます。病院は24時間活動していますので、夜間に何が起きたか、設備に問題がないかなどを見て回ります。8時からアシスタントとその日の作業内容や進捗状況を確認します。
その後、セキュリィティー・ミーティングに参加し、前日から朝までにどのようなことがあったか、不安定地域の戦況や安全管理に関する情報収集をおこないます。アデンでは、プログラム責任者がミーティングを進行し、プログラム責任者がいないときにはロジスティシャンである私が進行を担いました。
ロジスティック・チームの活動管理としては、病院の保守管理、工事の進捗(しんちょく)管理、発注の管理などをおこないます。昼食は大体、1時から2時の間にとっていました。昼食後も同じような作業をしています。作業は大体、午後6~7時ぐらいまでおこない、その後、自分の作業管理のまとめなどをしていました。
週に1度は隣国ジブチから物資供給の船がくるので、その前後は安全管理の確認作業や、港まで行って新たに到着した海外派遣スタッフと物資の受け入れなどもおこないます。紛争の影響で使えなくなっていたアデン空港が、自分の活動期間の最後の3週間、使えるようになったので、MSFの飛行機がくる時にはアデン空港までいき、スタッフの送迎などもしていました。
病院は24時間動いていますので、深夜でも集団災害(マスカジュアリティー)が発生するとすべてのスタッフは対応におわれ、午前4時まで活動することもありました。また週末もまとまった休みはなく、ほぼ毎日活動していました。多少自由な時間があれば、私は読書をして過ごしていました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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住居環境は非常によく、病院の2階部分に住居のスペースがあり、クーラー、トイレ、シャワー付きの個室が与えられていました。アデンでは気温が高く、クーラーなしでは眠ることができません。業務以外、病院の外には出られませんので、エクササイズができる部屋もありました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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アデン病院の救急ゾーン
毎日多くの患者が来るのですが、7月には一般の人びとが暮らす住宅地域に砲撃があり、6~7時間の間に150人近い患者が搬送されてきました。そしてそのすべてが一般市民でした。また8月には地雷による患者が多く運ばれてきました。
このような一般市民を対象とした攻撃は、あまりに悲惨で、単なる戦争、紛争ではなく、国際人道法を侵害する重大な行為です。紛争地域での活動ではよくこのような状況が発生しますが、それをこれからもMSFとして世界に発信していくことが必要なのだと思いました。
- Q今後の展望は?
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機会があればまた活動に参加したいと思いますが、しばらくは家族の手伝いをしながら、過ごしていくことになりそうです。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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MSFの活動は、過酷な環境で行われることもあります。また、違った考え方や文化をもった多くの人たちとともに活動します。しかしどの様な環境でも、基本はコミュニケーションだと思います。相手の考え方、文化を尊重しながら、自分の意見を説明し、理解してもらうことを積み重ねながら、活動を進めていくことが重要です。そのための努力とコミュケーション力が必要だと思います。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2014年6月~2014年9月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:ピボール
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2014年2月~2014年4月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:マラカル
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2012年4月~2012年9月
- 派遣国:イエメン
- 活動地域:アッダリ州
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2011年7月~2012年1月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:ラジャ
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2011年3月~2011年6月
- 派遣国:日本
- 活動地域:宮城県
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2010年2月~2010年11月
- 派遣国:インド
- 活動地域:ビハール州ビラウル
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2009年10月~2009年11月
- 派遣国:インドネシア
- 活動地域:パダン・パリアマン
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2009年8月~2009年10月
- 派遣国:ケニア
- 活動地域:ブシア
- ポジション:ロジスティシャン