【写真で見るガザ2年】レンズがとらえた子どもたちの日常:攻撃による負傷・生活環境編

2025年10月02日
テントの外に洗濯物を干す11歳の少女。水をくみに行き、家族の衣服を手洗いするのが彼女の日課だ=2024年11月7日 © Ibrahim Nofal
テントの外に洗濯物を干す11歳の少女。水をくみに行き、家族の衣服を手洗いするのが彼女の日課だ=2024年11月7日 © Ibrahim Nofal

パレスチナ・ガザ地区の子どもたちが直面する現実を伝える【写真で見るガザ2年】レンズがとらえた子どもたちの日常

第2回は、攻撃による負傷と生活環境に焦点を当て、紛争が子どもたちにもたらした苦難を考える。

第1回「栄養失調・心の傷」はこちら

攻撃による負傷:暴力に巻き込まれる子どもたち

2023年10月7日にガザ地区での紛争が激化して以来、イスラエル軍の攻撃による負傷者は15万6000人を超えている(ガザ保健省、2025年8月現在)。

国境なき医師団(MSF)がガザ地区の医療施設6カ所で収集した診察データによると、外傷の83%が爆弾や手榴弾など爆発性兵器によるものだった。

そして外傷診療のうち、29.6%は15歳未満の子ども、32%は女性だ。弱い立場に置かれた子どもたちと女性が保護されていないことは明らかと言える。

犠牲者の約半数は子ども

2025年6月28日 © Nour Alsaqqa/MSF
2025年6月28日 © Nour Alsaqqa/MSF

ガザ地区北部の自宅で空爆に遭い、負傷した8歳の男の子。MSFの医師でもある父親が、そばで見守っている。

近くの病院では医療物資の不足から治療が受けられず、同じく負傷した4歳の妹と一緒に、南部の病院へと搬送された。

MSFがガザ地区で働く現地スタッフとその家族を対象に行った調査では、紛争激化前と比べて5歳未満の子どもの死亡率は10倍に増加。また、爆撃による死者の48%は子どもで、そのうち40%は10歳未満だった。

MSFの緊急対応副責任者は言う。

子どもの命がないがしろにされています。イスラエルの同盟国は、私たちの目の前で起こっているジェノサイドを終わらせるために全力を尽くさなければなりません。

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心をもむしばむ身体の傷

2024年8月27日 © Moises Saman/Magnum Photos
2024年8月27日 © Moises Saman/Magnum Photos

イスラエル軍の空爆でガザ中部の自宅が全壊し、重傷を負った17歳の少年が、ヨルダンのアンマンにあるMSF病院で治療を受けている。

体のあちこちにけがややけどを負った少年は、形成外科手術を受けた後、理学療法を続けながら回復を目指している。

MSFの医師は、思春期の若者には傷ついた体の治療だけでなく、長期的な心理療法も不可欠だと語る。

「若者が自分の手足を切断されたり、顔にやけどを負ったりすると、自立する意思を奪われていく。自尊心を失い、アイデンティティが脅かされて傷ついていきます」

自己肯定感や自尊心を再構築するためのサポートが必要です。

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食料を求めて撃たれる子どもたち

2025年7月10日 © Nour Alsaqqa/MSF
2025年7月10日 © Nour Alsaqqa/MSF

ガザ南部の診療所で、MSFの救急チームが2人の少年を手当てする。少年たちは米国とイスラエルが運営する「ガザ人道財団(GHF)」の食料配給所付近で銃撃を受けて負傷した。

2025年6月7日から7週間で、配給所近くのMSF診療所には、28人の死者を含む1380人が搬送された。その中には、銃弾が腹部を貫通した12歳の少年をはじめ、71人の子どもが含まれている。

家族の中で唯一動ける男性として、10代の少年たちが食料を得るために危険な場所に送り出されている状況が浮かび上がる。

「MSFの54年近くの活動の中で、無防備な民間人に対するこのような組織的な暴力は、ほとんど見たことがありません」とMSF事務局長は話す。

GHF の「援助」を装った配給所は、残虐行為の実験場と化しています。この状況は今すぐ止めなければなりません。

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生活環境:命を脅かす攻撃と封鎖

イスラエルによる度重なる攻撃と封鎖によって、ガザでは深刻な物資不足が続いている。食料、水、医薬品、衛生用品、燃料──生きるために欠かせないものすら手に入らない。

劣悪な環境の中で、多くの子どもたちは学校に通うことも、安心して眠ることもできず、「普通の日常」を送ることすら困難になっている。さらに、栄養失調や感染症など、命に関わる病気のリスクにも日々さらされている。

MSFの緊急対応コーディネーターは警告する。

イスラエルは、パレスチナ人の生活基盤を組織的に解体しようとしているのです。

水不足という拷問

2025年8月14日 © MSF
2025年8月14日 © MSF

水の入ったポリタンクを手に、避難先のテントへと戻る男の子。現地から届く写真には、このように水を運ぶ小さな子どもたちの姿が数多く映し出されている。

イスラエル当局の制限により、ガザは極めて深刻な水不足に陥っている。人びとはMSFなど援助団体の給水車に頼るしかない状態だが、その活動もイスラエル軍によって妨害され、給水に不可欠な機器の搬入も阻止されている。MSFは今年、少なくとも137カ所での給水を停止せざるを得なかった。

人びとはポリタンクを抱えて長距離を歩き、給水所へ向かう。そして、水が入り重くなったタンクを手に、再び歩いて戻る。退避要求や空爆によって給水所の移動を余儀なくされたり、甚大な被害によって周囲が認識できなくなったりして、迷子になる子どももいる。

「水を手に入れるのはとても難しいのです。そして、水を持って少し歩くだけでも大変です」と給水を待つ女性は言う。

何と言ったらいいのか──これは拷問です。

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物資不足で広がる感染症

2024年11月7日 © Ibrahim Nofal
2024年11月7日 © Ibrahim Nofal

「息子のおむつがありません」──重い呼吸器疾患を抱える生後7カ月の男の子の母親は言う。

「着せる服さえありません。仕方なくビニール袋を着せていますが、そのせいで皮膚の感染症や発疹に悩まされています」

冬が近づき、気温が下がると状況はさらに悪化する。特に新生児や子どもたちは、皮膚や呼吸器の感染症、疥癬(かいせん:皮膚の感染症)、急性の下痢、ウイルス感染症などのリスクが高まる。

さらに調理用のガスボンベが手に入らないため、食事を作るにはプラスチックを燃やして火をたきつけ、鍋をかけるしかない。 

このテントでの生活は、子どもたちを極限状態に追い込んでいます。

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困難を極める避難生活

2025年3月11日 © Nour Alsaqqa/MSF
2025年3月11日 © Nour Alsaqqa/MSF

食用の野草「ウスベニアオイ」を探す母娘。伝統的な食材の野草が、紛争とイスラエル軍の封鎖による食料不足の中で再び重要な栄養源となっている。

ガザでは人口の約9割が避難を余儀なくされている。彼女たちもまた、イスラエル軍の攻撃で自宅を失い、ガザ北部のテントで避難生活を送っている。

娘たちは言う。

「水くみが一番大変です。水の入った容器はすごく重いし、給水所はいつも長い行列です」

「まさか自分が生き残るなんて……大好きな妹を失い、私の心は壊れました。夜、眠るのが本当に怖いです」

そして、彼女たちの祖母は訴える。

世界中の人たちはこの状況を知っているはずです。皆さんはこんな暮らしに耐えられますか。

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