特集
ガザ、紛争激化から2年──戦禍の子どもたち
2025.09.30

パレスチナ・ガザ地区で紛争が激化した2023年10月7日から、今年で2年。攻撃はわずかな停戦を挟んで激しさを増し、死者は6万4000人を超えた。そのうちの約2万人は子どもだ(ガザ保健省)。
ガザで活動した国境なき医師団のスタッフは口にする。
「どうして、何の罪もない子どもたちが命を失わなければならないのか」「被害を受けているのは、弱い立場に置かれた子どもたちや女性」 「子どもたちは憐みの犠牲者ではなく、希望であるべき──」
栄養失調、攻撃による負傷、心の傷、そして、劣悪な生活環境。この2年、ガザの子どもたちは死と隣り合わせの日々を生きてきた。この特集ではガザの子どもたちの姿と、彼らを取り巻く環境について伝える。
- ※スタッフのコメントの詳細は「ガザで活動した海外派遣スタッフの声」(目次参照)へ。
【海外派遣スタッフ・インタビュー】「泣くのは紛争が終わったとき」──極限のガザで見た人びとの静かな強さ
【写真で見るガザ2年】レンズがとらえた子どもたちの日常
もっとも弱い立場に置かれている子どもたちは日々、過酷な「日常」に直面している。この記事では、ガザの子どもたちの栄養失調、心の傷、攻撃による負傷、生活環境について、国境なき医師団が現地で撮影した写真とともに伝える。
ガザで活動した海外派遣スタッフの声
どうして、何の罪もない子どもたちが命を失わなければならないのでしょう。
中嶋優子(なかじま・ゆうこ)
救急医・麻酔科医/MSF日本会長
派遣期間:2023年11月から約3週間
写真:ガザ南部のナセル病院で医療活動を行った中嶋(右)。避難生活を送る子どもたちと。
被害を受けているのは、弱い立場に置かれた子どもたちや女性です。
子どもは憐みの犠牲者ではなく、希望であるべき──。

ガザでの国境なき医師団の活動
国境なき医師団(MSF)では2025年8月20日現在、1078人の現地スタッフと40人の国際スタッフがガザ地区で活動しています。
外科治療や創傷ケア、理学療法、妊産婦と小児のケア、基礎医療、予防接種、心のケアなどの医療を提供するともに、給水活動も行っています。
MSFはまた、暴力の激化が深刻なヨルダン川西岸地区でも活動し、医療の提供や人材の育成などを行っています。
外科治療や創傷ケア、理学療法、妊産婦と小児のケア、基礎医療、予防接種、心のケアなどの医療を提供するともに、給水活動も行っています。
MSFはまた、暴力の激化が深刻なヨルダン川西岸地区でも活動し、医療の提供や人材の育成などを行っています。
外来診療の件数
115万8908件以上

産前ケア
6万6758件以上

心のケアの診療件数
6万5303件以上

※2023年10月~2025年8月の活動実績


現地からの報告
国境なき医師団が訴えること
国境なき医師団は、次のように訴えます。
●ガザでのジェノサイド(集団殺害)の停止
●民族浄化と強制移動の停止
●即時かつ持続的な停戦の実現
●ガザ封鎖の解除と独立した人道援助の大規模な実施
●医療施設への攻撃の停止
●飢餓を紛争の手段として使うことの禁止
●「ガザ人道財団(GHF)」の解体
●ガザで治療を受けられない患者の緊急医療搬送(ただし人びとの「帰還の権利」を尊重し、ガザの医療体制の再建を前提とする)
●各国に対し、民間人や患者を危険にさらすイスラエルへの武器輸出の停止
イスラエル当局は、ガザにおけるパレスチナ人へのジェノサイドをやめなければなりません。また、日本政府を含む国際社会は、物資搬入や人道原則に則った援助の提供、緊急を要する患者の医療搬送の拡大を直ちに実現させる必要があります。
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●イスラエルはジェノサイドをやめよ──パレスチナ・ガザ地区で広がる死と破壊 国境なき医師団日本・会長の訴え
ガザで起きているジェノサイドとは何か。
MSF日本の会長で、2023年11月から12月にかけてガザ南部で医療援助活動に入った救急医・麻酔科医の中嶋優子が伝える。
●ガザ:医師にジェノサイドは止められない、止められるのは世界の指導者だけだ──国境なき医師団が求める八つの行動
いま、パレスチナ・ガザ地区で起きているのは単なる人道的危機ではない。組織的に民族を破壊する行為だ。国境なき医師団は明言する。
「イスラエルがガザでパレスチナ人に行っているのは、ジェノサイド(集団殺害)だ」
命を救う活動を、どうぞご支援ください。
寄付をするイスラエルとパレスチナにおける衝突で生じた人道危機への緊急援助には「緊急チーム」募金の一部を充当します。「支援対象」の欄で「緊急チーム」募金をご選択ください。

トップ写真:ガザ市でがれきの中を歩く親子 © MSF