なぜ子どもが命を失わなければならない? ガザで幼い命を守るために必要なこと 【MSF Club:国境なき医師団スタッフの体験ストーリー】
2025年04月24日
- ※ガザ保健省の発表によると、この紛争でガザにおける死者数は5万人を超えました(2025年4月現在)。
中嶋優子先生のプロフィール

パレスチナ・ガザ地区での体験ストーリー
2023年11月から約3週間、パレスチナのガザ地区に派遣された中嶋先生。
紛争が続く中、中嶋先生はどんな活動をしたのかな?
絶対に行く──強い気持ちでガザへ


ナセル病院には産科や小児科といった、妊産婦(にんさんぷ)や赤ちゃんをケアする施設もあるんだ。でも、攻撃を受けたことで、MSFは医療の提供を停止しなければいけないこともあったんだよ。詳しいことは動画を見てね👇
電気がない! 携帯電話のライトをたよりに手術
ガザは水や電気がほとんどない状況(じょうきょう)でした。手術中に停電したときは、携帯(けいたい)電話のライトで照らしながら手術を続けました。

紛争で亡くなった人の中には、子どももたくさんいるんだ。
その中で、特に印象に残っている女の子について、中嶋先生に聞いたよ。
家族全員を亡くした10歳の女の子
手術をしないと命が危ないので、家族の同意なしでも特例で手術をしようと、医療チームで相談して決めました。でも、あまりに手術が必要な患者さんが多く、手術の順番を待っている間に彼女の感染が進み、数日後に亡くなってしまいました。

自身も危険を感じながら、毎日たくさんの患者さんと向き合った中嶋先生。精神的な助けになってくれたのは、子どもたちだったんだ!
子どもの明るさが活動の支えに

なぜなら、このガザで見た破壊が、これまで見てきたものとは全く違う規模だったからです。手術で1人の命を助けている間に、何人もが新たな攻撃で命を落としている現実がありました。
毎日たくさんの患者さんが病院にやって来る。でも、命を落としてしまう人もいるし、そもそも病院にたどり着けない人もいる。この状況を変えるには、「紛争そのものを止めなければ」と中嶋先生は強く感じたそうなんだ。
紛争そのものを止めないといけない


この活動で強く感じたのは、命を守るためには、紛争そのものを止めなければならないということです。ガザへの医療・人道援助を強化することは重要ですが、それ以前に、次々と負傷者や犠牲者が生まれ続ける状況そのものを止める必要があるのです。
2025年1月19日、紛争はいったん停戦となったけれど、また攻撃が再開してしまったんだ(2025年4月現在)。ガザのほとんどの家は住むことが難しいほど破壊されてしまって、多くの人ががれきの中やテントで暮らしている状況だよ。これから私たちにできることは? 中嶋先生に聞いてみたよ。
声を上げることが、社会を変える第一歩


皆さんは幸運にも日本に生まれ育っていますが、ガザにも皆さんと同じくらいの歳(とし)の子どもがたくさんいます。そのことをぜひ自分事としてとらえて、どうやったら力になれるか考えてみてほしいと思います。
日本は昔、太平洋戦争でたくさんの犠牲者が出ました。世界で唯一の被爆(ひばく)国として「戦争は絶対にダメだ」と日本人が伝えることは、世界中の人びとに対して説得力があるはずです。
みんなで戦争を止めるよう、声を上げ続けましょう。戦争はどんな理由であっても、絶対に避(さ)けなければいけない、ということを訴え続けましょう。みんなで一丸となれば、社会が変わるかもしれない──そのことを信じようと、皆さんに伝えたいです。
パレスチナのガザ地区。ニュースでもよく耳にする地名だね。2023年10月7日に、この地域でパレスチナとイスラエルの紛争(ふんそう)が激(はげ)しくなったんだ。ガザの市民が巻き込まれて、たくさんの人が亡くなったり、負傷(ふしょう)したりしたよ(※)。その中には子どもも大勢いたんだ。今回はこのガザで医師として活動した、中嶋優子さんの体験ストーリーを紹介するよ。