ロヒンギャ

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ロヒンギャとは?

ロヒンギャとは誰か

主にミャンマー西部ラカイン州に暮らしてきた、イスラム系少数民族。数世紀にわたり仏教徒が多数派を占めるミャンマーに居住してきましたが、ミャンマー当局はこの事実を否定し、「ロヒンギャは20世紀にミャンマーに移住したベンガル人移民」であると主張しています。
 
ビルマ政府による1982年の国籍法改正に伴いロヒンギャは国籍をはく奪され「無国籍者」となりました。ロヒンギャの人びとは長い間、隔離・迫害され、教育や医療を受けること、就労、移動の自由なども認められていません。国連は2013年、ロヒンギャを世界で最も迫害されている少数民族の一つと認めています。
 
暴力と迫害により、ロヒンギャの人びとは何世代にもわたり恐怖の中で生きています。陸や海を超え、バングラデシュやマレーシアへと渡る危険な旅を試みる人も後を絶ちません。
バングラデシュの難民キャンプで暮らす一家=2022年6月<br> Ⓒ Saikat Mojumder/MSF
バングラデシュの難民キャンプで暮らす一家=2022年6月
Ⓒ Saikat Mojumder/MSF

ロヒンギャの置かれた状況とは

川を越え避難先へ向かうロヒンギャの人びと=2017年9月<br> Ⓒ Antonio Faccilongo
川を越え避難先へ向かうロヒンギャの人びと=2017年9月
Ⓒ Antonio Faccilongo
ミャンマーでは
2017年8月、ミャンマー西部ラカイン州で国軍によるロヒンギャに対する掃討作戦が発生。村は焼き打ちに遭い、多くの人が殺害されました。およそ77万人のロヒンギャが国境を越え、隣国バングラデシュのコックスバザールに避難しました。
 
ミャンマーにとどまるロヒンギャも、避難民キャンプでの過酷な暮らしを余儀なくされています。2021年の軍事政権発足後も人びとの置かれた状況は改善せず、ラカイン州では2023年11月に再燃した戦闘の影響も深刻です。
バングラデシュでは
コックスバザールにある世界最大の難民キャンプでは、100万人以上のロヒンギャの人びとが国籍も法的地位もないまま、先の見えない避難生活を送っています。過密状態が続くキャンプでは、水・電気などの生活インフラの不足や、治安の悪化、人びとのメンタルヘルスへの影響も懸念されています。

2023年11月以降は、ミャンマー、ラカイン州での紛争激化に伴い、戦闘を逃れ新たにたどり着く人も増えています。一方で国際援助は減少しており支援の拡充が急務です。
キャンプ内の給水所で水をくむロヒンギャ女性=2022年7月<br> Ⓒ Elizabeth Costa/MSF
キャンプ内の給水所で水をくむロヒンギャ女性=2022年7月
Ⓒ Elizabeth Costa/MSF
マレーシアでは
30年以上にわたり、ロヒンギャはアンダマン海を越える危険な船旅でマレーシアにたどり着いています。しかし、マレーシアでは難民や庇護希望者、無国籍者は「不法移民」とされ、医療や教育、就労へのアクセスがありません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民登録を受けた人びとでさえ、雇用や教育の権利を保障されていないのが現状です。

ロヒンギャの人びとはマレーシアで、常に逮捕や拘束の危険にさらされており、医療や保護を受ける際にも多くの障壁に直面しています。
診察を待つロヒンギャの親子=2024年10月 Ⓒ Steven Ooi
診察を待つロヒンギャの親子=2024年10月 Ⓒ Steven Ooi

国境なき医師団(MSF)の対応は

人びとのニーズに合わせた医療を提供

国境なき医師団(MSF)は、ミャンマー、バングラデシュ、マレーシアで、ロヒンギャの人びとに対する包括的な医療・人道援助活動を行っています。

ミャンマーでは、ラカイン州のキャンプなどに住むロヒンギャに対し、基礎医療や性別およびジェンダーに基づく暴力(SGBV)の治療、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)、心のケアなどを提供。しかし2024年には、紛争の激化や無差別な暴力の横行、人道援助活動への深刻な制約により、ラカイン州北部での医療活動は停止を余儀なくされています。
ラカイン州の移動診療に訪れたロヒンギャ女性たち=2023年10月<br> Ⓒ Zoe Bennell/MSF
ラカイン州の移動診療に訪れたロヒンギャ女性たち=2023年10月
Ⓒ Zoe Bennell/MSF
バングラデシュのキャンプではC型肝炎の治療対策も強化<br> =2025年4月 Ⓒ Tania Sultana/MSF
バングラデシュのキャンプではC型肝炎の治療対策も強化
=2025年4月 Ⓒ Tania Sultana/MSF
バングラデシュのコックスバザールでは、一般診療、糖尿病や高血圧などの慢性疾患の治療、外傷患者への対応、女性の健康や心のケアなどに取り組んでいます。さらに、過密状態のキャンプ内の衛生環境改善にも注力しています。マレーシアのペナンでは、診療所や移動診療、移民収容センターでの活動を通じて、ロヒンギャの人びとへ基礎医療や心のケアを提供。また、二次・三次医療への紹介や、人身売買の被害に遭った人びとを含む性暴力の被害者へのサポートも強化しています。

MSFは、地域ごとに異なるニーズに応じて、ロヒンギャの人びとの命と尊厳を守る活動を続けています。

Ⓒ Ro Yassin Abdumonab

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