ガザ:負傷した国境なき医師団のスタッフが死亡──イスラエル軍の攻撃による犠牲者は15人目に
2025年10月06日
国境なき医師団(MSF)は、パレスチナ ・ガザ地区での私たちの同僚、アブドルハミド・カラダヤの死を深い悲しみと強い憤りとともに公表する。彼は10月2日に発生したイスラエル軍の攻撃により重傷を負い、医療チームの懸命の治療にもかかわらず、10月5日にその傷がもとで亡くなった。2日の攻撃では、MSFで作業療法士を務めていたオマル・ハイクも命を落とし、ほかに複数名が負傷している。
「安全地帯」とされていた場所での攻撃
43歳のアブドルハミドは、2023年10月7日以降にガザで殺害された15人目のMSFのスタッフとなり、また過去20日間で命を奪われた3人目の同僚でもある。
彼と、2日に命を落としたオマルは、イスラエル軍による激しい攻撃と退避要求を受けてガザ市を離れた。しかし、同じイスラエル軍によって「安全地帯」とされていた場所で命を奪われている。ガザに安全な場所は存在しない。
即時停戦と流血の終結を
MSFは、アブドルハミドの妻と二人の子どもに深い哀悼の意を表する。彼の死は、家族や友人にとって計り知れない喪失であると同時に、MSFおよびガザの医療体制にも深刻な影響を及ぼすだろう。
18年間にわたり、アブドルハミドはガザにおけるMSFの理学療法部門の中心的存在だった。彼は理学療法と作業療法の両分野において卓越した専門性を持つかけがえのない人材で、患者の身体的な回復のみならず、人びとが希望と尊厳を取り戻すことができるよう、力を尽くしていた。

アブドルハミドは、イスラエルによる封鎖で物資が不足するなど、極めて困難な状況の中でも、献身的に活動を続けていた。彼は、やけど患者に装着する特注の圧迫スーツを仕立てるために、仕立て職人やロジスティシャンと協力し、道具の工夫と改良を重ねてきた。また、負傷や四肢切断を経験した患者一人一人のニーズに合わせて歩行器を調整するなど、柔軟な対応にも取り組んでいた。患者のケアに新しい技術を導入することにも尽力し、ガザでの3D理学療法部門の立ち上げも主導した 。
アブドルハミドは、常に前向きで深い思いやりを持つ人物として、私たちの記憶に残り続けるだろう。彼は真の友人として、人びとを支え、励まし、勇気づける存在であり続けた。

MSFは、即時停戦と流血の終結を強く求める。同僚の死に私たちは深い悲しみと強い憤りを抱いている。今回の犠牲は、ガザで民間人の命と人間の尊厳が軽視され続けている現実を、改めて突きつけるものだ。