プレスリリース

パレスチナ:国境なき医師団、イスラエル当局にスタッフ名簿を提出しない方針を決定──医療援助活動の中止は甚大な影響をもたらす

2026年02月02日
ガザ地区で医療援助にあたる国境なき医師団のスタッフ=2025年7月10日  © Nour Alsaqqa/MSF
ガザ地区で医療援助にあたる国境なき医師団のスタッフ=2025年7月10日  © Nour Alsaqqa/MSF

国境なき医師団(MSF)は、数カ月にわたるイスラエル当局との対話が実を結ばず、またスタッフの安全や、独立した活動に関する保証が得られないことから、現状ではパレスチナ人および国際スタッフの名簿をイスラエル当局に提出しない方針を決定した。

イスラエル当局は2025年3月、パレスチナで活動するための登録を希望する団体に対し、スタッフの個人情報の提出を求めると発表した。MSFは、医療・人道援助従事者が脅迫され、恣意的に拘束され、攻撃されてきた状況を踏まえ、当初よりこの要求に深刻な懸念を示してきた。2023年10月以降、1700人の医療スタッフが殺害され、MSFのスタッフも15人が犠牲となっている。

そしてイスラエル当局は2025年12月30日、MSFの登録は失効し、60日以内に活動を停止しなければならないと発表した。

スタッフの安全が保証されず

限られた可能性の中でも医療援助を続ける道を探るため、MSFは1月23日、例外的な措置として、スタッフの安全を最優先に据えたうえで、パレスチナ人スタッフと国際スタッフの氏名の限定的なリストを共有する用意があることをイスラエル当局に通知した。この方針はパレスチナ人スタッフとの協議に基づき、本人の明確な同意がない限り情報を提供しないという理解のもとで策定された。

しかし、繰り返しの働きかけにもかかわらず、必要な具体的保証についてイスラエル当局と合意形成することは不可能であると、この数日で明らかになった。MSFは、提出する情報を定められた管理目的以外に使用しないこと、スタッフを危険にさらさないこと、人材と医療・人道物資の管理はMSFが全面的に権限を保持すること、MSFを中傷しスタッフの安全を脅かす発信を止めることを保証するよう求めていた。

これらについて明確な保証が得られない状況を受け、MSFは現状ではスタッフ情報を共有しないという結論に達した。この過程において、いかなるスタッフ情報もイスラエル当局に提供していない。

不可能な選択を迫るイスラエル当局

ガザにおける人道的な大惨事と、医療スタッフへの激しい暴力が続く中で、イスラエル当局は援助団体に不可能な選択を迫っている。スタッフの情報を提供するか、重要な医療援助を中断するかという二者択一だ。

もしMSFがガザ地区とヨルダン川西岸地区から追放される事態となれば、破壊された家屋と緊急の人道ニーズの中で過酷な冬に直面しているパレスチナの人びとは、壊滅的な打撃を受けることとなる。人道状況は依然として極限状態にあり、ガザでは昨年10月の停戦合意以降に殺害された人は約500人に上る。食料、水、シェルター、医療、燃料、生計手段といった基礎的サービスの多くが破壊されている。医療体制はほとんど機能せず、やけどの治療といった専門医療の多くが利用できない状況にある。

このような中、MSFは2025年に80万件の診療を行い、母親3人に1人の分娩を介助し、病床の5分の1を支えた。こうした活動は容易に代替できるものではない。

MSFは、極度の困難に直面している人びとの命を守る医療援助をガザ地区とヨルダン川西岸地区で継続できるよう、イスラエル当局との対話を続けていく姿勢だ。

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