ガザ地区における国境なき医師団の活動に関する、よくある質問(FAQ)と疑問へのご回答

2026年02月02日
保育器が不足しているパレスチナ・ガザ地区北部の病院。1台を複数人で共有するしかないが、感染症のリスクが高まってしまう=2025年7月16日 © Joanne Perry/MSF
保育器が不足しているパレスチナ・ガザ地区北部の病院。1台を複数人で共有するしかないが、感染症のリスクが高まってしまう=2025年7月16日 © Joanne Perry/MSF

パレスチナ・ガザ地区において、国境なき医師団(MSF)は膨大な数の重要な医療を担っています。しかし、本来必要とされている医療を満たすにはそれでも不十分です。

現在、イスラエルは非政府組織の登録を認めない可能性を示すことで、ガザ地区とヨルダン川西岸地区における、MSFを含む37のNGOの活動を止めようとしています。

これは、私たちや他の援助団体が両地区で活動し、現地の状況について発信してきた中で、イスラエル当局から受けてきた脅し、圧力、中傷キャンペーンに、さらなる追い打ちをかけるものです。

以下では、MSFが現地で実施している活動内容と、パレスチナで活動を続けるための登録手続きに関する私たちの見立てについて、よくあるご質問にお答えします。

※事態の進展に合わせ、本文の内容を更新しました(2026年2月2日)

──イスラエル当局は「MSFのガザでの医療活動は重要ではない、必要ではない」と主張しています。MSFはどう答えますか。

2025年だけでも、MSFは以下の活動を実施しました。

・外傷症例:10万件超の対応
・病床管理:400床超を運営
・手術:計約1万人の患者に対し、延べ2万2700件
・外来診療:約80万件
・予防接種:4万5000回
・出産介助:1万件超
・心のケア:個別セッション4万回超、グループセッションなどで6万人超
・水の供給:7億リットル超を配水し、1億リットル近くを浄水

ガザ地区では保健医療の仕組みが破壊されているため、MSFが提供している医療の多くは、地区内の他の医療機関ではほとんど受けられません。

しかし、MSFの登録は2026年1月1日付で失効しており、3月1日までに現地での活動を停止するよう求められています。MSFがガザで活動できなくなると、何十万人もの人びとが、医療を受けられず、水を得ることができなくなります。MSFの重要な活動は、ガザにおける約50万もの人びとの医療や水へのアクセスを支えているのです。

現在MSFは、ガザで公立病院6カ所を支援し、仮設病院2カ所を運営しています。さらに、診療所7カ所を支援し、栄養失調の人びとを対象とする入院型の治療施設も運営しています。加えて、創傷処置や一般診療を提供する新たな医療拠点を6カ所、最近になって開設しました。

MSFは1988年からパレスチナで活動しています。

──「MSFはイスラエルと協力していない」というのは本当ですか。

MSFは数カ月にわたり、パレスチナで活動するための登録更新について、イスラエル当局との対話を求めてきましたが、いまだに実現していません。

ガザとヨルダン川西岸の両地区で重要な活動を続け、切迫した状況にある人びとの命を守る医療を届けるため、当局との対話の可能性は引き続き開かれています。

同時に、MSFのスタッフの安全を確保することを最優先にしています。次の解決策を検討する際は、これまで通りパレスチナ人のスタッフと協議します。

しかし、イスラエルは、MSFを含むNGOが「協力していない」と非難し、援助団体に対する中傷キャンペーンを展開しています。根拠のない主張をすることで、パレスチナの人びとに不可欠なケアへのアクセスを恣意(しい)的に制限しています。独立した立場で活動する組織による目撃や証言を抑え込もうとしているのです。

イスラエルによるこうした非難は、極めて困難な状況下で不可欠なケアとサービスを提供している人道援助従事者の正当性を損なうことにつながります。

MSFは、こうした非難が、イスラエル当局が長年用いてきた手法の一部とみています。つまり、物理的・行政手続き的な障壁と並行して実施してきた、ガザに援助が入ること、人びとの援助を届けることを制限するための手法です。似たような手法は、2024年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対しても使われました。

こうした申し立ては、イスラエル政府が「ガザ地区への人道援助を円滑にしている」と主張する一方で、実際には支援を妨げるような措置を取ることを正当化するために使われています。

──ガザ地区とヨルダン川西岸地区で活動するためのMSFの登録は、現在どういう状況ですか。

2026年1月1日付で、MSFの登録は失効しました。そのため、MSFは3月1日までに活動を停止するよう求められています。

いまもMSFは、両地区で人道的な対応をするため、あらゆる道を探っています。同時に、活動を継続できるようにイスラエル当局との協議も続けています。

MSFの活動を妨害することは、住民への人道援助を妨げなく届けるよう求める国連安保理決議(2720号)の明らかな違反です。

MSFは2026年、ガザでの人道対応のために推計1億~1億2000万ユーロ(約180億〜220億円)を拠出する予定です。

──今回の登録失効の決定は、MSFの活動にどのような影響を与えていますか。

MSFはいまも、ガザとヨルダン川西岸の両地区でこれまで通り活動しており、現地に不可欠な医療を届けています。

しかし、イスラエルにおけるMSFの登録は2025年12月31日までだったため、MSFは物資の輸入や、国際スタッフのガザへの入域を認められていません。これにより、医療チームは、必要不可欠な資材や専門的な技術を十分に得られない状況に置かれています。

MSFは、両地区のパレスチナの人びとへの支援を今後も続けます。そのうえで、イスラエル当局に対し、登録に関する決定を撤回し、MSFスタッフと患者の安全を保証することを含む、受け入れ可能な活動条件に調整するよう求めています。

──MSFがイスラエルに「一部のスタッフの名簿を提供する」ことを検討したのは本当ですか。

MSFは重要な医療を続けるため、限られたものであったとしても、可能な選択肢をすべて検討しました。その中で、私たちは1月23日、明確な条件の下で例外的措置として、パレスチナ人スタッフと国際スタッフの氏名を一定の範囲に絞ったうえで、その名簿を共有しうるとイスラエル当局に伝えました。

判断で最優先されるのは、あくまでもスタッフの安全です。この立場は、パレスチナ人スタッフとの協議を踏まえたもので、本人の明確な同意なしに、いかなるスタッフの情報も共有しないことを大前提としていました。

しかし、繰り返し働きかけたにもかかわらず、必要な保証について、イスラエル当局から具体的な確約を得られないことが明らかになりました。私たちが求めていた保証の一部を、以下に挙げます。

・スタッフ情報は、説明された行政目的に限って用いられ、スタッフを危険にさらさないこと
・人事に関するすべての判断と、医療・人道援助物資の管理について、MSFが全面的な権限を維持できること
・ MSFを中傷し、スタッフの安全を損なうあらゆる発信が停止されること

その結果、こうした明確な保証を得られない現在の状況下では、MSFはスタッフ情報を共有しないとの判断に至りました。

同時に、MSFは、ガザとヨルダン川西岸で重要な医療活動を維持し、切迫した状況にある人びとの命を守る医療を届け続けるため、イスラエル当局との対話を続ける姿勢を引き続き残しています。

──MSFはこれまでに、登録手続きの一環として、イスラエルにスタッフ名簿を渡したことはありますか。

いいえ。登録手続きの一環として、MSFはこれまで一度も、現地スタッフ、国際スタッフの名簿をイスラエル当局に提出していません。

──なぜMSFは、限られた範囲であっても、スタッフ名簿の共有を検討したのですか。

MSFを含む多くの人道援助団体が活動できなくなれば、何十万人もの人びとが不可欠な医療を受けられなくなります。MSFは、現地で進行中のジェノサイドを目の当たりにし、声を上げることのできる数少ない国際組織の一つであり、もし撤退を強いられれば、この役割も果たせなくなるためです。

イスラエル当局は、MSFを含む人道援助団体に対し、受け入れられない選択を迫っています。

すなわち、スタッフ情報を共有するか、あるいは極めて膨大な人道ニーズがあり、医療従事者への深刻な暴力が続く状況下で、不可欠な医療を中断するか、という選択です。

プロジェクトの閉鎖が目前に迫る中、MSFは両地区で医療を続けるために、可能な手段をすべて検討しました。そこで、極めて特別な状況下における例外的措置として、スタッフの安全を最優先とする明確な条件が満たされるのであれば、スタッフ名簿の一部の提供を検討し得ることを、イスラエル当局に書面で伝えたのです。

ただし、私たちはスタッフの個人情報を一切共有していません。

度重なる働きかけにもかかわらず、必要な保証について具体的な確約を得るため、イスラエル当局との協議を構築することができなかったからです。

その結果、こうした明確な保証が得られない現状では、MSFはスタッフ情報を共有しないという結論に至りました。

──スタッフ名簿の要求について、MSFはパレスチナ人スタッフとどのように協議しましたか。

このプロセスでは、チーム全体で対話を重ね、とりわけパレスチナ人スタッフと丁寧に話し合いました。個人の安全や、MSFが撤退を余儀なくされた場合に起こりうる影響も含め、当事者の見方と懸念を考慮しました。

私たちは一貫して、当事者の同意なしに情報は共有しないこと、そして両地区で活動を続けるかどうかに関わる判断について、誰にも圧力がかからないことを強調しました。参加しないことが、雇用に影響しないことも明確にしました。

スタッフの意見は、少人数での意見交換、1対1の面談、アンケート、タウンホール形式の話し合いなど、複数の手段で集めました。

協議では、安全上のリスク、人道原則への影響に関する不安など、幅広い懸念が示されました。個人情報を提供した場合の報復の懸念もあれば、要請に応じても登録につながらず、さらなる要求が出てくるのではないかという疑問の声もありました。

──この環境下で、スタッフはどうやって同意を示せるのですか。

イスラエル当局に強制される環境下では、パレスチナ人スタッフが、十分な説明を受けた上での適切な同意を示すことが難しいという状況を、MSFは認識しています。

イスラエルは、MSFとパレスチナ人スタッフに対して、受け入れがたい2択をあえて突きつけています。つまり、スタッフに関する情報を提供するか、または不可欠な医療を必要とする何十万人ものパレスチナの人びとを見捨てざるを得ないか、という選択です。

さらに、イスラエル当局から保証が得られないため、仮に氏名を提供したとしても、その情報がどう扱われるか、スタッフ自身が判断できません。

パレスチナ人スタッフとの話し合い抜きに判断することはできませんし、許されません。私たちが実施したのは協議であって、組織としての責任を個人に押し付けるものではありません。スタッフに耐えがたい決断の重みを背負わせるのではなく、彼らの安全と活動に関わる問題について、意見をしっかりと聴くことが目的でした。

──イスラエル軍により殺害されたMSFスタッフの遺族に、補償を支払っていますか。

はい。イスラエル軍により殺害されたMSFスタッフのご遺族全員に対し、MSFは金銭的に支援しています。

私たちはすべてのご遺族と連絡を取り、法的支援や金銭的支援、扶養家族の医療保障などを含めて支援しており、今後も続けていきます。

──イスラエル当局は「MSFスタッフはテロとつながりがある」と主張していますが、MSFはどのように答えていますか。

私たちはこうした申し立てを深刻に受け止めています。

MSFは、軍事活動に関与する人物を意図的に雇用することは決してありません。武装集団とつながりのある職員が存在すれば、MSFスタッフと患者の双方にとって深刻なリスクとなるからです。

このため、MSFは活動するあらゆる場所で、すべてのスタッフに対し、MSF憲章に従うことを求めています。そこには、人道原則、独立性、医療倫理の厳格な順守が含まれます。

採用手続きには、厳格な事前審査に加え、経歴や前職への照会、履歴書の確認、試用期間を設けています。さらに、この状況下で採用されるすべてのスタッフについては、通常よりも入念な確認手続きを実施しています。

MSFは、他の地域と同様に、中立・公平・独立の原則にのっとって活動し、政治的権威や所属に関わらず、ニーズのみに基づいて医療を提供しています。ガザの保健医療体制に対するMSFの支援は、純粋に人道的なものであり、いかなる意味においても思想的な目的を伴うものではありません。

──「MSFはガザでハマスと関係がある」というのは本当ですか。

MSFはガザの地元保健省と調整して活動しています。この保健省は、ハマスの民政部門の一部です。現在、イスラエル当局による援助団体への中傷キャンペーンは「MSFがテロ組織と情報を共有している」と主張しています。

しかし実際には、現地の医療当局と調整することは、MSFがあらゆる活動地で一般の実務として行っていることです。こうした中傷行為は、現地で起きている人道的な大惨事から目をそらそうとするものです。

MSFは、どの地域でも同様に、中立・公平・独立の原則に基づいて活動し、政治的権威や所属に関わらず、ニーズのみに基づいて医療を提供しています。

──「支援は必要な人に届かず、代わりにハマスに奪われている」という主張に対して、MSFはどう答えますか。

MSFの活動は、独立しており、透明性があり、厳格に管理されています。

米国際開発局(USAID)による評価では、ガザにおいてハマスが人道援助物資を大規模に横流ししていることを示す証拠は確認されませんでした。イスラエル軍の高官らも、ガザにおける人道援助で、体系的に大規模な横流しがあることを示す証拠はないと認めています。

この紛争が激化して以来、医薬品・食料・水を積んでガザに入域したトラックの数は、破壊とニーズの規模に比べて到底足りていませんでした。MSFは過去2年間、イスラエル当局によって人道援助の搬入・供給が大幅に制限され、滞ってきた実態を記録し、発信してきました。

現地では、長期化する官僚的な手続きや、「軍事転用の可能性がある物品(デュアルユース品目)」リストが設けられてきました。「デュアルユース品目」の禁止により、メスや酸素発生装置をはじめとする一部の物品が、ガザへの搬入を認められていません。

──なぜMSFはイスラエルを非難するのに、ハマスのことは非難しないのですか。

MSFは、ハマスがイスラエルで1200人を殺害したことに強い衝撃を受けており、これらの攻撃を明確に非難しています。私たちは、暴力が連鎖し、双方で悲劇が重なっていることに恐怖を感じています。

MSFの発信は、医療チームが現地で目の当たりにしていること、そして支援している医療施設での活動に基づいています。そのため、私たちはガザで進行している「ジェノサイド(集団殺害)」について声を上げてきました。

私たちは、容認できない人びとの苦しみ、医療施設への攻撃やアクセスを妨げられること、そして交戦当事者が民間人を守らない状況を目撃したとき、声を上げるのです。

── MSFのチームは人質を治療しましたか。また、MSFは人質の解放を求めましたか。

紛争が激化した2023年10月7日以降、MSFはガザにおける活動の中で、人質とされる患者に遭遇したことは一度もありません。

私たち医療者の仕事は、医療を必要とする誰に対しても医療を提供することです。患者は患者であり、医療倫理の根本原則として、あらゆる患者に対して、その最善の利益にかなう医療を提供しなければなりません。

私たちは、10月7日に人質として連れ去られた人びとが受けた苦しみ、そしてその家族や大切な人びとの苦痛に胸を痛めています。

MSFは2023年10月以前から、あらゆる文脈、あらゆる紛争状況において民間人の保護を求めています。

──「MSFは中立ではない」という批判にはどう答えますか。

MSFのチームは、一つの同じ憲章の下に結束しています。外国人派遣スタッフと現地スタッフの両者が採用され、数十の国籍からなる医療専門職、ロジスティシャン(物資調達、施設・機材・車両管理など幅広い業務を担当)、事務スタッフで構成されています。MSFは影響を受けた地域のニーズを評価したうえで、医療倫理と人道行動の原則に従って支援を届けています。

公平性は、MSFの使命の中核です。MSFは差別なく援助をして、最も差し迫ったリスクにさらされている人びとを優先します。MSFは中立の精神にのっとって活動しており、武力紛争においていずれかの側に立つことはありません。

ただし、私たちの人道活動への妨げや国際法違反がある場合は、公に指摘し、批判することがあります。

紛争状況下において、MSFは被害者、とりわけ民間人の苦しみを目撃して証言します。その意味において、MSFは率直に発言しているのです。

私たちのチームは、ガザとヨルダン川西岸の両地区で目の当たりにしたこと、そして自らが体験したことを報告しています。多くの専門家、法律家、人権団体、そして複数の国連報告書も、ガザ地区が全面的に破壊されていると言及しています。

そこには、イスラエルによるガザ地区の包囲、保健医療体制の解体、民間人と民間インフラの軽視、そして人為的に引き起こされた飢饉(ききん)が含まれます。

これらはすべて「ジェノサイド」に当たる取り組みの一部なのです。

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