ガザ地区における国境なき医師団の活動に関する、よくある質問(FAQ)と疑問へのご回答

2026年01月21日
保育器が不足しているパレスチナ・ガザ地区北部の病院。1台を複数人で共有するしかないが、感染症のリスクが高まってしまう=2025年7月16日 © Joanne Perry/MSF
保育器が不足しているパレスチナ・ガザ地区北部の病院。1台を複数人で共有するしかないが、感染症のリスクが高まってしまう=2025年7月16日 © Joanne Perry/MSF

パレスチナ・ガザ地区において、国境なき医師団(MSF)は膨大な数の重要な医療を担っています。しかし、本来必要とされている医療を満たすにはそれでも不十分です。

現在、イスラエルは、非政府組織(NGO)の登録を認めない可能性を示すことで、ガザ地区とヨルダン川西岸地区におけるMSFや他のNGOの活動を止めようとしています。

これは、私たちや他の援助団体が両地区で活動し、現地の状況について発信してきた中で受けてきた脅し、圧力、中傷キャンペーンに、さらなる追い打ちをかけるものです。

以下では、MSFが現地で実際に続けてきた活動に関して、よくあるご質問にお答えします。

──イスラエル当局は「MSFのガザでの医療活動は重要ではない、必要ではない」と主張しています。MSFはどう答えますか。

2025年だけでも、MSFは以下の活動を実施しました。

外傷症例:10万件超の対応
病床管理:400床超を運営
手術:計約1万人の患者に対し、延べ2万2700件
外来診療:約80万件
予防接種:4万5000回
出産介助:1万件超
心のケア:個別セッション4万回超、グループセッションなどで6万人超
水の供給:7億リットル超を配水し、1億リットル近くを浄水

ガザ地区では保健医療の仕組みが破壊されているため、MSFが提供している医療の多くは、地区内の他の場所で受けることがほぼできません。

しかし、MSFの登録は2026年1月1日付で失効しており、3月1日までに現地での活動を停止するよう求められています。MSFがガザで活動できなくなると、多くの人びとが、不可欠な医療と水へのアクセスを失います。ガザにおけるMSFの重要な活動の支援対象は、約50万人もの規模に及んでいます。

現在、MSFはガザで公立病院6カ所を支援し、仮設病院2カ所を運営しています。さらに、診療所6カ所を支援し、栄養失調の人びとを対象とする入院型の治療施設も運営しています。加えて、創傷処置や一般診療を提供する新たな医療拠点を6カ所、最近になって開設しました。

MSFは1988年からパレスチナで活動しています。

──「MSFはイスラエルと協力しない」というのは本当ですか。

MSFは、ガザとヨルダン川西岸の両地区で活動を続けられるよう、いまもイスラエル当局との建設的な対話を模索しています。

しかし、イスラエルは、MSFを含むNGOが「協力していない」と非難し、援助団体に対する中傷キャンペーンを展開しています。根拠のない主張をすることで、パレスチナの人びとに不可欠なケアへのアクセスを意図的に制限しています。独立した立場で活動する組織による目撃や証言を抑え込もうとしているのです。

イスラエルによるこうした非難は、極めて困難な状況下で不可欠なケアとサービスを提供している人道援助従事者の正当性を損なうことにつながります。

MSFは、こうした非難が、イスラエル当局が長年用いてきた手法の一部とみています。つまり、物理的・行政手続き的な障壁と並行して実施してきた、ガザに援助が入ること、人びとの援助を届けることを制限するための手法です。似たような手法は、2024年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対しても使われました。

こうした申し立ては、イスラエル政府が「ガザ地区への人道援助を円滑にしている」と主張する一方で、実際には支援を妨げるような措置を取ることを正当化するために使われています。

それでもMSFは、パレスチナで医療を提供するため、あらゆる可能性を模索し続ける決意に変わりありません。

──ガザ地区とヨルダン川西岸地区で活動するためのMSFの登録は、現在どういう状況ですか。

2026年1月1日付で、ガザとヨルダン川西岸の両地区で活動できるMSFの登録は失効しました。そのため、MSFは3月1日までに活動を停止するよう求められています。

いまもMSFは、両地区で人道的な対応をするため、あらゆる道を探っています。同時に、活動を継続できるようにイスラエル当局との協議も続けています。

MSFの活動を妨害することは、住民への人道援助を妨げなく届けるよう求める国連安保理決議(2720号)の明らかな違反です。

MSFは2026年、ガザでの人道対応のために推計約180億〜220億円を拠出する予定です。

──今回の登録失効の決定は、MSFの活動にどのような影響を与えていますか。

MSFはいまも、ガザとヨルダン川西岸の両地区でこれまで通り活動しており、現地に不可欠な医療を届けています。

しかし、イスラエルにおけるMSFの登録は2025年12月31日までだったため、MSFは物資の輸入や、国際スタッフのガザへの入域を認められていません。これにより、医療チームは、必要不可欠な資材や専門的な技術を十分に得られない状況に置かれています。

MSFは、ガザとヨルダン川西岸のパレスチナの人びとへの支援を今後も続けます。そのうえで、イスラエル当局に対し、登録に関する決定を撤回し、MSFスタッフと患者の安全を保証することを含む、受け入れ可能な活動条件に調整するよう求めています。

──イスラエルは「MSFは登録ルールに従わなかった」としています。これは本当ですか。

MSFは登録の手続きに積極的に関与しており、求められた情報のほとんどはすでに提出しています。

一方で、MSFは他の多くのNGOと同様に、イスラエルが登録のために求めている一部の情報について、安全確保の観点から懸念を抱いています。

MSFはとりわけ、スタッフ名簿の提出を求められている点について、繰り返し重大な懸念を表明し、説明を求めてきました。

なぜなら、人道援助・医療従事者が日常的に嫌がらせ、拘束、直接的な攻撃にさらされている状況下で、個人情報の利用目的、管理・安全性、保護についての保証がないままスタッフリストを共有することは、重大なリスクがあるためです。これらの懸念は、雇用主としてのMSFの法的責任に直接的に関わります。

したがって、登録のためにイスラエルが求める個人情報について、利用・保管・保護のあり方に関して、MSFは特に強い懸念を有しています。MSFは代替案も示しましたが、担当のディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策省からはこれまでに回答がありません。

──イスラエルはなぜ、NGOにスタッフ名簿の提出を求めているのですか。

イスラエルは国際NGOに対し、情報機関による審査をするためとして、パレスチナ人スタッフの名簿提出を求めています。

この要求は、国際人道法上のイスラエルの義務に違反する可能性があり、人道原則の根幹を損ないかねないことから、重大な懸念を生じさせるものです。さらに、この審査の目的や想定される結果についても、依然として曖昧なままです。

MSFでは、これまでに15人のスタッフがイスラエル軍によって殺害されました。

いかなる状況であっても、入域条件としてスタッフ名簿を要求することは、過剰な介入であり、人道援助の独立性と中立性を損ないます。とりわけ、医療・人道援助従事者が脅され、恣意(しい)的に拘束され、攻撃され、大人数が殺害されてきた状況下ではなおのことです。

さらに、こうした個人情報がどのように利用され、保管され、共有されるのかがはっきりとしないため、危険性をいっそう高めています。

MSFがこれらの懸念を解消しようと対話を求めているにもかかわらず、登録手続きを所管する省庁は、面会要請を繰り返し無視してきました。そのうえで、私たちが「武装活動に関与した人物を意図的に雇用している」と、メディア上で誤った非難を続けています。

──イスラエル当局は「MSFスタッフはテロとつながりがある」と主張していますが、MSFはどのように答えていますか。

こうした主張は危険であり、ガザにおけるMSFの不可欠な活動を危険にさらしています。

MSFは、軍事活動に関与する人物を意図的に雇用することは決してありません。武装集団とつながりのある職員が存在すれば、MSFスタッフと患者の双方にとって深刻なリスクとなるからです。

このため、MSFは活動するあらゆる場所で、すべてのスタッフに対し、MSF憲章に従うことを求めています。そこには、人道原則、独立性、医療倫理の厳格な順守が含まれます。

採用手続きには、厳格な事前審査に加え、経歴や前職への照会、履歴書の確認、試用期間を設けています。さらに、この状況下で採用されるすべてのスタッフについては、通常よりも入念な確認手続きを実施しています。

MSFは、他の地域と同様に、中立・公平・独立の原則にのっとって活動し、政治的権威や所属に関わらず、ニーズのみに基づいて医療を提供しています。ガザの保健医療体制に対するMSFの支援は、純粋に人道的なものであり、いかなる意味においても思想的な目的を伴うものではありません。

──「MSFはガザでハマスと関係がある」というのは本当ですか。

MSFはガザの地元保健省と調整して活動しています。この保健省は、ハマスの民政部門の一部です。現在、イスラエル当局による援助団体への中傷キャンペーンは「MSFがテロ組織と情報を共有している」と主張しています。

しかし実際には、現地の医療当局と調整することは、MSFがあらゆる活動地で一般の実務として行っていることです。こうした中傷行為は、現地で起きている人道的な大惨事から目をそらそうとするものです。

MSFは、どの地域でも同様に、中立・公平・独立の原則に基づいて活動し、政治的権威や所属に関わらず、ニーズのみに基づいて医療を提供しています。

──「支援は必要な人に届かず、代わりにハマスに奪われている」という主張に対して、MSFはどう答えますか。

MSFの活動は、独立しており、透明性があり、厳格に管理されています。

米国際開発局(USAID)による評価では、ガザにおいてハマスが人道援助物資を大規模に横流ししていることを示す証拠は確認されませんでした。イスラエル軍の高官らも、ガザにおける人道援助で、体系的に大規模な横流しがあることを示す証拠はないと認めています。

この紛争が激化して以来、医薬品・食料・水を積んでガザに入域したトラックの数は、破壊とニーズの規模に比べて到底足りていませんでした。MSFは過去2年間、イスラエル当局によって人道援助の搬入・共有が大幅に制限され、滞ってきた実態を記録し、発信してきました。

現地では、長期化する官僚的な手続きや、「軍事転用の可能性がある物品(デュアルユース品目)」リストが設けられてきました。「デュアルユース品目」の禁止により、メスや酸素発生装置をはじめとする一部の物品が、ガザへの搬入を認められていません。

──なぜMSFはイスラエルを非難するのに、ハマスのことは非難しないのですか。

MSFは、ハマスがイスラエルで1200人を殺害したことに強い衝撃を受けており、これらの攻撃を明確に非難しています。私たちは、暴力が連鎖し、双方で悲劇が重なっていることに恐怖を感じています。

MSFの発信は、医療チームが現地で目の当たりにしていること、そして支援している医療施設での活動に基づいています。そのため、私たちはガザで進行している「ジェノサイド(集団殺害)」について声を上げてきました。

私たちは、容認できない人びとの苦しみ、医療施設への攻撃やアクセスを妨げられること、そして交戦当事者が民間人を守らない状況を目撃したとき、声を上げるのです。

── MSFのチームは人質を治療しましたか。また、MSFは人質の解放を求めましたか。

紛争が激化した2023年10月7日以降、MSFはガザにおける活動の中で、人質とされる患者に遭遇したことは一度もありません。

私たち医療者の仕事は、医療を必要とする誰に対しても医療を提供することです。患者は患者であり、医療倫理の根本原則として、あらゆる患者に対して、その最善の利益にかなう医療を提供しなければなりません。

私たちは、10月7日に人質として連れ去られた人びとが受けた苦しみ、そしてその家族や大切な人びとの苦痛に胸を痛めています。

MSFは2023年10月以前から、あらゆる文脈、あらゆる紛争状況において民間人の保護を求めています。

──「MSFは中立ではない」という批判にはどう答えますか。

MSFのチームは、一つの同じ憲章の下に結束しています。外国人派遣スタッフと現地スタッフの両者が採用され、数十の国籍からなる医療専門職、ロジスティシャン(物資調達、施設・機材・車両管理など幅広い業務を担当)、事務スタッフで構成されています。MSFは影響を受けた地域のニーズを評価したうえで、医療倫理と人道行動の原則に従って支援を届けています。

公平性は、MSFの使命の中核です。MSFは差別なく援助をして、最も差し迫ったリスクにさらされている人びとを優先します。MSFは中立の精神にのっとって活動しており、武力紛争においていずれかの側に立つことはありません。

ただし、私たちの人道活動への妨げや国際法違反がある場合は、公に指摘し、批判することがあります。

紛争状況下において、MSFは被害者、とりわけ民間人の苦しみを目撃して証言します。その意味において、MSFは率直に発言しているのです。

私たちのチームは、ガザとヨルダン川西岸の両地区で目の当たりにしたこと、そして自らが体験したことを報告しています。多くの専門家、法律家、人権団体、そして複数の国連報告書も、ガザ地区が全面的に破壊されていると言及しています。

そこには、イスラエルによるガザ地区の包囲、保健医療体制の解体、民間人と民間インフラの軽視、そして人為的に引き起こされた飢饉(ききん)が含まれます。

これらはすべて「ジェノサイド」に当たる取り組みの一部なのです。

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