ガザ:食べ物もおむつも服さえない──劣悪な環境と深刻な物資不足で、命の危機にさらされる子どもたち
2024年12月06日MSFの小児科医で、ガザ南部ハンユニスのナセル病院に勤務するムハンマド・アブ・タイエム医師は次のように話す。
「私たちは感染症、呼吸器疾患、皮膚疾患の乳幼児を治療しています。もちろん、紛争前からこのようなことはありましたが、今では以前よりはるかに多く、その数は増え続けています」
この病院には毎日300人以上の小児患者が、治療を求め訪れている。
急性肺炎の子どもたちを含め、病院は過密状態です。
MSFの小児科医 ムハンマド・アブ・タイエム医師
同じ期間に、生後1カ月未満の新生児168人と1歳から5歳までの子ども1万800人以上が上気道感染症で、また、1歳から5歳までの子ども約1294人が下気道感染症で入院した。肺炎の症例は約459件に上った。
破壊された医療体制とアクセス
その間に子どもは爆撃の危険にさらされ、合併症のリスクも高まる。治療を受けることができたとしても、元の劣悪な生活環境に戻れば、健康状態は再び悪化し治癒能力も低下する。
寒さがもたらす新たな脅威
人びとは密集したテントやビニールシート、継ぎはぎの布の下で暮らしており、清潔な水や衛生設備、石けんなどの衛生用品をはじめとする生活必需品も手に入らない。
さらに、冬が近づき気温が下がるにつれて状況は悪化しており、特に新生児や子どもの間で皮膚や呼吸器の感染症、疥癬(かいせん、皮膚の感染症)、急性の下痢、ウイルス感染症などへのリスクも高まっている。
加えて、ガザ地区への援助が激減したことで物価が上昇し、人びとは栄養価の高い食べ物を手に入れることが困難になっている。以前から食べ物の量は不十分であるうえに、そのような状況に陥っているため、特に乳幼児や子どもたちに栄養失調が起きている。
ガザ地区への制限を受けない人道援助は、そこに閉じ込められている人びとの苦しみを軽減するための重要な解決策だ。援助を届けることで、新生児や子ども、母親を含むコミュニティ全体にとって不可欠な医療品および生活物資の不足を改善することができる。
「息子のおむつがありません」と、ナセル病院で治療を受けている男の子の母親ヤスミンさんは言う。
「この子に着せる服さえありません。仕方なくビニール袋を着せていますが、そのせいで皮膚の感染症や発疹に悩まされています」
このテントでの生活は、子どもたちを極限状態に追い込んでいます。まともなベッドもないまま寝かせるしかないのです。
治療を受けている男の子の母親 ヤスミンさん
栄養価の高い食べ物や必須栄養素が不足しているため、新生児や子どもたちの健康状態と免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなっているのです。
MSFの小児科医 ムハンマド・アブ・タイエム医師
医者は、咳を防ぐには、息子を火から遠ざけなければならないと言います。でも、そんなことができるでしょうか? 料理をするにはいつだって、火が必要なのに──。