止まらない戦闘、終わらない避難、崩れゆく医療──スーダンの現実に私たちは何ができるのか

2026年04月15日
スーダン・南ダルフール州にある国内避難民キャンプ。何千人もの人びとが、木や布、ビニール、草などで作った仮設住居で暮らしている=2026年2月10日 © Julie Melichar/MSF
スーダン・南ダルフール州にある国内避難民キャンプ。何千人もの人びとが、木や布、ビニール、草などで作った仮設住居で暮らしている=2026年2月10日 © Julie Melichar/MSF

2023年4月15日、スーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の武力衝突が始まり内戦に陥ったスーダン。それから3年、戦闘は各地で続き、スーダンの内戦はいまや世界最大規模の人道危機の一つとなっています。その影響は国境を越え、近隣諸国にも広がっています。

アフリカ北東部に位置するスーダン © MSF
アフリカ北東部に位置するスーダン © MSF
国境なき医師団(MSF)は、スーダン国内および近隣国で医療・人道援助活動を続けてきました。医療体制の崩壊、感染症の流行、避難を強いられる人びと──現場では、今この瞬間も深刻な人道ニーズが積み重なっています。

スーダンの人びとは何を失い、何に直面しているのか。そして、国際社会は何をすべきなのか。内戦から3年となったいま、スーダンの現実に改めて目を向けてみませんか。

スーダンでいま、何が起きているのか

世界最大規模の人道危機

スーダンの内戦は、世界最大規模の人道危機を引き起こしています。この3年間、人びとは生活のあらゆる側面を破壊する極度の暴力に耐え続けてきました。

戦闘によってインフラは破壊され、地域社会は非難を余儀なくされ、援助物資の搬入も阻まれています。その結果、何百万人もの人びとが、深刻な食料不安、繰り返される感染症の流行、さらには深い心理的なトラウマに直面しています。

日の出とともに国境を超え、隣国チャドへと避難したスーダンの人びと。爆弾の脅威からは逃れたが、生き延びるための苦難は続く=2025年6月16日 © Julie David de Lossy/MSF
日の出とともに国境を超え、隣国チャドへと避難したスーダンの人びと。爆弾の脅威からは逃れたが、生き延びるための苦難は続く=2025年6月16日 © Julie David de Lossy/MSF

医療制度の崩壊と失われた進歩

紛争がもたらした医療への影響は壊滅的で、スーダンの保健医療制度は数十年も後戻りしてしまったといわれています。定期的な予防接種は機能不全に陥り、感染症の流行は増加、栄養失調も深刻化しています。さらに、妊産婦と子どもの死亡率は、長年かけて積み重ねてきた成果を覆すかたちとなっています。

大規模な援助の拡充が求められていますが、紛争開始から3年がたった今も実現していません。

はしかと重度の栄養失調を患う赤ちゃん。紛争が続く中、医療や食料へのアクセスは極めて限られており、子どもたちはとりわけ深刻な危険にさらされている=2025年12月14日 © Natalia Romero Peñuela/MSF
はしかと重度の栄養失調を患う赤ちゃん。紛争が続く中、医療や食料へのアクセスは極めて限られており、子どもたちはとりわけ深刻な危険にさらされている=2025年12月14日 © Natalia Romero Peñuela/MSF

国際人道法を無視した暴力

紛争当事者および同盟関係にある武装勢力は、国際人道法を公然と無視し、民間人を攻撃・殺害することで、人びとに甚大な苦しみを与えているます。こうした行為は、直ちに止めなければなりません。

責任ある立場にある者は、苦しみを終わらせ、民間人を保護し、現在も続く違反行為について説明責任を果たすため、今すぐ具体的な行動を取るべきです。

戦闘に巻き込まれて父親を亡くし、自身も左手を失った11歳の男の子。深い心理的トラウマを抱えながら、MSFの病院で治療を受けている=2025年6月11日 © Julie David de Lossy/MSF
戦闘に巻き込まれて父親を亡くし、自身も左手を失った11歳の男の子。深い心理的トラウマを抱えながら、MSFの病院で治療を受けている=2025年6月11日 © Julie David de Lossy/MSF

妨げられる人道援助と医療

SAFとRSFはいずれも、人道援助や医療活動を標的として攻撃してきました。医療従事者や医療施設、人道援助に対するいかなる攻撃や妨害も、人びとの命を危険にさらし、地域社会が必要とする医療へのアクセスを断ち切るものです。

今すぐ人道援助への妨げのないアクセスを確保し、医療を求める人びとの安全な移動を保証しなければなりません。

戦闘に巻き込まれ、足にけがを負った17歳の少年。家族とともにチャドの難民キャンプへ逃れ、そこでMSFの治療を受けた=2025年6月13日 © Julie David de Lossy/MSF
戦闘に巻き込まれ、足にけがを負った17歳の少年。家族とともにチャドの難民キャンプへ逃れ、そこでMSFの治療を受けた=2025年6月13日 © Julie David de Lossy/MSF

手をこまねいたままの国際社会

スーダンで続く苦難は、単なる人道危機にとどまらず、国際社会全体の政治的失敗でもあります。人道援助は深刻な資金不足に陥り、優先順位は下げられ、国際社会およびスーダン国内の双方の問題解決に向けた政治的意思の欠如によって停滞しています。

関係国は、スーダンの紛争当事者に資金や武器を提供したり、政治的支援を行ったりしている者に対し、早急に影響力を行使して外交的圧力をかけるべきです。また、関係するすべての当事者が国際人道法上の義務を確実に履行するよう、求める必要があります。

仮設住居が立ち並ぶスーダン・南ダルフール州の国内避難民キャンプ=2026年2月10日 © Julie Melichar/MSF
仮設住居が立ち並ぶスーダン・南ダルフール州の国内避難民キャンプ=2026年2月10日 © Julie Melichar/MSF

拡大する避難、劣悪な生活環境

スーダンでは2023年4月以降、約1400万人が避難を強制されており、世界でも最大規模の数の人びとが、自宅を追われるという危機に直面しています。このうち910万人は国内避難民、約450万人は主にチャド南スーダンなどの近隣国へ逃れています。

国内避難民の約5分の1は、劣悪な環境のキャンプでの生活を強いられており、全体の55%は18歳未満の子どもです。また、難民となった人びとは、保護上の課題のほか、基本的なサービスへのアクセス不足や深刻な経済的困難にも苦しんでいます。

スーダンでの戦闘から逃れ、チャドの難民キャンプで暮らす家族。母親は避難の最中に8人目の子どもを出産した。夫とは途中ではぐれてしまい、今も行方が分からない=2025年6月12日 © Julie David de Lossy/MSF
スーダンでの戦闘から逃れ、チャドの難民キャンプで暮らす家族。母親は避難の最中に8人目の子どもを出産した。夫とは途中ではぐれてしまい、今も行方が分からない=2025年6月12日 © Julie David de Lossy/MSF

深刻な医療へのアクセス制限

スーダンの保健医療体制は極めて弱体化しており、医療従事者や物資が著しく不足し、多くの病院が被害を受けて機能停止や閉鎖に追い込まれています。コレラはしかなどの感染症の流行が、もともとぜい弱な医療サービスにさらなる負担をかけています。

人びとは、母子保健や外傷治療、感染症や栄養失調の治療、安全な水と衛生設備、心のケア性暴力の被害者へのケアといった、極めて切迫したニーズに直面しています。しかし、治安の悪化に加え、官僚的な障壁や資金不足により、こうしたサービスへのアクセスには大きな制約があります。

スーダンから逃れた人びとが暮らすチャドの難民キャンプで、水たまりから水をくむ女性。キャンプでは安全な水が圧倒的に不足している=2025年6月15日 © Julie David de Lossy/MSF
スーダンから逃れた人びとが暮らすチャドの難民キャンプで、水たまりから水をくむ女性。キャンプでは安全な水が圧倒的に不足している=2025年6月15日 © Julie David de Lossy/MSF

スーダンでの国境なき医師団の活動

MSFは現在、スーダンの9州において、国際スタッフ255名、現地スタッフ1753名が活動しています(2026年3月時点)。

外科・救急医療、創傷ケア、理学療法、妊産婦ケア、栄養・小児ケア、基礎医療、予防接種、心のケアなどを提供しています。また、国内避難民キャンプでは、井戸やトイレの建設、食料や水の配布も行っています。

患者をボートで搬送しながら、点滴治療を行うMSFスタッフ=2026年3月12日 © Isaac Buay/MSF
患者をボートで搬送しながら、点滴治療を行うMSFスタッフ=2026年3月12日 © Isaac Buay/MSF
北ダルフール州タウィラの病院で、子どもを診察するMSFの医師=2026年3月8日 © Cindy Gonzalez/MSF
北ダルフール州タウィラの病院で、子どもを診察するMSFの医師=2026年3月8日 © Cindy Gonzalez/MSF

2025年の国境なき医師団の主な活動実績

外来受診件数 84万6216件以上
予防接種の実施件数 23万6494件以上
入院治療栄養センターの受け入れ件数 1万5066件以上
分娩介助件数 2万8990件以上
心のケアの相談件数 2万3397件以上
性暴力に関する相談件数 4216件以上

(※2025年1月~12月の活動実績)

スーダン・北ダルフール州の避難民キャンプでMSFが開いた性暴力に関するセッションの様子=2026年2月14日 © Cindy Gonzalez/MSF
スーダン・北ダルフール州の避難民キャンプでMSFが開いた性暴力に関するセッションの様子=2026年2月14日 © Cindy Gonzalez/MSF
MSFと地元保健省が連携して行ったはしかの予防接種に集まったスーダンの子どもたち=2026年1月30日 © Cindy Gonzalez/MSF
MSFと地元保健省が連携して行ったはしかの予防接種に集まったスーダンの子どもたち=2026年1月30日 © Cindy Gonzalez/MSF

国境なき医師団が訴えること

国際人道法を無視した暴力を今すぐ止めよ

MSFは、紛争当事者および同盟関係にある武装勢力が国際人道法を公然と無視し、民間人を攻撃・殺害することで甚大な苦しみを与えていることに、強い懸念を表します。民間人を標的にした暴力は決して許されず、今すぐ停止されなければなりません。

人びとの苦しみを終わらせ、民間人を確実に保護するとともに、現在も続く国際人道法違反について説明責任を果たすため、直ちに具体的かつ実効性のある行動を取るよう強く求めます。

人道援助と医療の保護を

MSFは、紛争当事者および同盟関係にある武装勢力による、人道援助や医療活動を標的とした攻撃を強く非難します。医療従事者や医療施設、人道援助に対するいかなる攻撃や妨害も、人びとの命を危険にさらし、不可欠な医療や支援へのアクセスを断ち切るものです。

人道援助へのアクセスを直ちに確保し、医療を求める民間人の安全な通行を保証するよう、強く求めます。

国際社会は今すぐ行動を

スーダンで続く人びとの苦難は、単なる人道危機ではなく、国際社会全体の政治的失敗です。人道援助は深刻な資金不足と政治的意思の欠如により、国内外で停滞しています。

MSFは国際社会に対し、紛争当事者を資金面、軍事面、政治面で支えている者への外交的圧力を直ちに強めるとともに、すべての関係者が国際人道法上の義務を確実に履行するよう、責任ある行動を取ることを求めます。

スーダンの最新情報──国境なき医師団の現場から

ドローン攻撃に揺れる国境の町──激化するスーダン内戦、チャド東部で457人を治療(2026年4月10日)

スーダン:内戦開始から3年 断ち切られた命綱──民間人保護のために行動を(2026年4月10日)

性暴力が戦争の「武器」に──スーダン・ダルフールで何が起きているか、MSF報告書(2026年4月2日)

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