街の食堂にドローンが突然…急増する女性と子どもの被害──「多い日には5、6回も」スーダン・チャド国境、1カ月で負傷者116人を治療

2026年06月09日
国境なき医師団(MSF)がチャド東部ティネの一時滞在キャンプで実施した大規模なワクチン接種=2026年3月 © MSF
国境なき医師団(MSF)がチャド東部ティネの一時滞在キャンプで実施した大規模なワクチン接種=2026年3月 © MSF

内戦が続くスーダンにおいて5月以降、隣国チャドとの国境に近い北ダルフール州・ティナ周辺で無人航空機(ドローン)攻撃が激しくなり、チャド側にあるティネ病院に負傷者が相次いで搬送されている。

ここ数週間、スーダン政府軍と交戦する準軍事組織「即応支援部隊」によるものとみられる攻撃がほぼ毎日のように起き、地元住民からは「多い日には5、6回に上る」との報告が寄せられている。

国境なき医師団(MSF)はティネ病院を医療支援しているほか、チャド東部で活動を順次拡大。女性や子どもを含む民間人の被害も広がっており、住民の保護と、安全かつ速やかに医療を届けられる環境を求めている。

1日で35人搬送、死者は複数人

2026年5月24日、スーダン西部の国境の街ティナの市場にある食堂は、いつものように利用客で込み合っていた。

「ブーン、ブーン」

その上空に突如として飛来したのは、ドローン。人びとは攻撃を受け、1日で35人の負傷者が、国境を越えてチャド東部ワジ・フィラ州のティネ病院に運び込まれた。

このうち3人は到着時に死亡が確認され、ほかにも複数の人が現場で死亡したとされる。死傷者のなかには、女性や子どもが含まれていた。

ドローン攻撃で負傷してティネ病院に運ばれた人は、5月に入って計116人に上る。5月17〜26日の10日間だけでも計69人が搬送された。 

情勢の悪化を受け、MSFとチャド保健省が移転したティネの新しい病院=2026年2月22日 © MSF
情勢の悪化を受け、MSFとチャド保健省が移転したティネの新しい病院=2026年2月22日 © MSF


チャドのMSF活動責任者、イシアカ・アブドゥは患者の状況をこう説明する。

患者さんたちは何時間もかけて搬送され、非常に重篤な状態で到着することが少なくありません。私たちが治療しているけがは深刻で、重いやけど、爆発による外傷、体の複数箇所に及ぶ大けがなどさまざまです。最近も、顔、腕、脚に重度のやけどを負った子どもを治療しました。搬送が遅れるほど、重症患者さんの生存率は低くなっていきます。

チャドのMSF活動責任者 イシアカ・アブドゥ

内戦で左手を失ったスーダン難民の少年(中央)。チャド東部ティネにあるMSFの病院で医師の診察を受けた=2025年6月11日 © Julie David de Lossy/MSF
内戦で左手を失ったスーダン難民の少年(中央)。チャド東部ティネにあるMSFの病院で医師の診察を受けた=2025年6月11日 © Julie David de Lossy/MSF


また、運び込まれる患者の傾向にも変化が出ている。

ここ数日、女性や子どもの負傷者がますます多くなっています。5月26日には、ドローン攻撃の後に搬送された患者は全員が民間人でした。この国境地帯で暮らす人びとがどれほど暴力にさらされているかを示しています。

チャドのMSF活動責任者 イシアカ・アブドゥ

スーダン西部でドローン攻撃に遭い、目に重傷を負った9歳の男の子の検査写真。チャド東部ティネにある、MSFが支援する病院に運び込まれた=2026年2月 © MSF
スーダン西部でドローン攻撃に遭い、目に重傷を負った9歳の男の子の検査写真。チャド東部ティネにある、MSFが支援する病院に運び込まれた=2026年2月 © MSF

90万人超が越境、国境地帯の危機に拍車

2023年4月にスーダンで内戦が始まって以降、計90万人を超えるスーダン難民がチャド東部に逃れた。国境地帯では、医療を含む基本的な生活環境がすでに深刻な状態にある。

そこに相次ぐ攻撃が重なって、危機的な人道状況がいっそう悪化している。

MSFは、スーダン難民とチャドの受け入れ地域の住民の両者に医療を届けるため、緊急医療に取り組み、医療施設を支援している。

ティネ病院では患者の治療に加え、必要に応じて重症患者をアベシェなど他の医療施設へ搬送している。さらに、この危機に対応するためチャド東部のワジ・フィラ州、シラ州、ワダイ州で活動を拡大してきた。

情勢の悪化を受け、MSFとチャド保健省が移転したティネの新しい病院=2026年3月30日 © MSF
情勢の悪化を受け、MSFとチャド保健省が移転したティネの新しい病院=2026年3月30日 © MSF


ティネのMSFプロジェクト・コーディネーター、シセ・ブカリ・ハマドゥムはこう強調する。

この地域の医療施設は、厳しい環境のなかで運営されています。ニーズは大きい一方で、使える資源は限られています。こうした制約でも、MSFはチャドの保健当局と連携しながら、緊急医療を提供し、次々と運び込まれる負傷者に対応し続けています。

ティネのMSFプロジェクト・コーディネーター シセ・ブカリ・ハマドゥム

民間人は紛争の犠牲になってはならない。住民が保護され、負傷した人びとが迅速かつ安全に医療を受けられることが不可欠だと、MSFはあらためて訴える。

スーダンとの国境からわずか数百メートルの場所にあり、2026年2月に閉鎖されたチャドのマブルーカ病院。戦闘に巻き込まれ、左手を失ったスーダン難民の少年(中央)が治療を受けていた=2025年6月14日 © Julie David de Lossy/MSF
スーダンとの国境からわずか数百メートルの場所にあり、2026年2月に閉鎖されたチャドのマブルーカ病院。戦闘に巻き込まれ、左手を失ったスーダン難民の少年(中央)が治療を受けていた=2025年6月14日 © Julie David de Lossy/MSF

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