子どもの死が当たり前の世界で──スーダン東部、援助の空白が広がる難民キャンプのいま
2026年07月09日
「ほかに頼れるところはない」──ひっ迫する医療体制
スーダン東部ゲダレフ州にあるウム・ラクバ難民キャンプは、まだ国際的に大きな注目を集めるほどの危機的状況には至っていない。しかし、危機の兆候はすでに至るところに現れている。
キャンプ内の病院で最もよく耳にするのは、新生児の泣き声だ。生まれたばかりの赤ちゃんや、マラリア、栄養失調、その他の緊急疾患の治療を受ける赤ちゃんたちの鳴き声が、あたりに響いている。その声は、ほかのあらゆる音をかき消すほどだ。
ウム・ラクバ難民キャンプは、エチオピア北部ティグレ州で紛争が勃発した2020年以降、エチオピアから避難してきた人びとを受け入れてきた。現在、約1万7000人が暮らしており、その多くを女性と子どもが占めている。
「私たちの地域では3つも4つも病院が閉鎖されてしまい、ここへ来るしかありませんでした」
おばと我が子の診察のために、キャンプ内の病院を訪れたスーダン人女性のマナサクさんは話す。
ほかに頼れる場所はありません。スーダン人の地域住民だけでなく、難民の人びとのためにも、もっと多くの支援が必要です。
マナサクさん キャンプ内の病院を訪れたスーダン人女性
相次ぐNGOの撤退
エチオピア難民への支援が最も活発だった2021年頃、ウム・ラクバ難民キャンプとその周辺では約35の国内外の援助団体が活動していた。しかし現在、その数は10にも満たない。
その影響は、あらゆる分野に及んでいる。MSFスタッフは地域の代表者たちから、基礎医療をはじめ保護サービス、水・衛生環境、食料支援、教育などへのアクセスが悪化しているとの声を繰り返し耳にしている。
「MSFの健康啓発チームは、基本的なサービスの縮小に関する人びとの不安の声を絶えず聞いています」と、キャンプ内のMSF病院でプロジェクト・コーディネーターを務めるゼリー・アンティエは言う。
女性や子どもを支援する現地の団体も、増え続けるニーズに応えるための資金や人員が十分ではありません。
ゼリー・アンティエ MSFプロジェクト・コーディネーター
水・衛生サービスの不足も、地域社会と病院の双方に負担をもたらしている。また、難民の人びとからは食料支援が縮小されたとの声が上がっている。さらに、基礎医療施設での治療が中断されていることで、患者がMSFの施設にたどり着くころには、より深刻な合併症を伴っているケースも増えている。
人道援助団体の撤退が相次ぐなか、増大するニーズに対して、地域住民や難民の人びとが頼れる支援の選択肢はますます限られている。
資源をめぐる争い
2024年にハルツーム州やセンナール州、ジャジーラ州など戦闘の激しい地域から100万人以上が避難してきたことで、もともと限られていた公共サービスはさらにひっ迫した。そこへコレラの流行も重なり、地域の医療体制は限界に近い状況に追い込まれた。
多くの人びとにとって、この危機は今や「資源をめぐる争い」となっている。
1年ほど前にゲダレフ州を訪れたMSFの小児科医ターニャ・ハッジ・ハサンは、病院へ向かう途中、車窓の外に広がる緑豊かな農地を目にしたことを今も覚えている。
「スーダンはかつて、この地域の『食料庫』と呼ばれていました。それにもかかわらず、私たちは毎日のように重度の急性栄養失調に苦しむ子どもたちを治療していました」
私の医師人生で、これほどまでの絶望を目の当たりにしたことはありませんでした。
ターニャ・ハッジ・ハサン MSFの小児科医
これは、スーダンで、子どもの死がいかに悲劇的なまでに当たり前になっているかを物語っています。
ターニャ・ハッジ・ハサン MSFの小児科医
必要なのは、より大きな支援の輪
食料支援は依然として不十分だ。現在、配給される小麦は1人当たり月約4キログラムで、月によっては約2.5キログラムにまで減ることもある。これは、スーダンで戦闘が始まる直前の2023年初頭に配給されていた約14キログラムと比べると、大幅な減少だ。
さらに、トイレが不足しており、住環境も劣悪なままだ。難民の保護をめぐる懸念も高まり続けている。資金削減の影響は今なお深刻で、水・衛生サービスや住居支援、保護活動に加え、基礎医療の提供にも大きな支障を及ぼしている。
このキャンプで二次医療と、性的・ジェンダーに基づく暴力の被害者に対する包括的な支援を提供しているのはMSFだけだ。また、HIVや結核、顧みられない熱帯病の診療を受けられる機会は依然として著しく限られている。さらに、コレラやはしか、マラリア、髄膜炎の流行が繰り返し発生し、弱い立場に置かれた人びとの命と健康を脅かし続けている。
現地でMSFの活動責任者を務めるムハンマド・アフマドは言う。
医療や保護支援だけでなく、水や衛生、食料、教育に至るまで、あらゆる分野で人びとは『見捨てられていると感じる』と訴えています。
ムハンマド・アフマド MSF活動責任者
難民の人びとが置かれた状況を、スーダン危機という大きな問題の陰に埋もれさせてはなりません。
ムハンマド・アフマド MSF活動責任者




