「命は助かっても、視力は戻らなかった」 雨期目前に支援縮小…スーダン青ナイル州で栄養失調、感染症リスクが深刻化
2026年06月22日
内戦が続くスーダンで、南東部・青ナイル州の人道状況が悪化している。
ただでさえ不安定だった医療体制、度重なる感染症の流行、避難生活、深刻な栄養失調に対し、近年の国際援助の削減と戦闘の再燃が追い打ちをかけているためだ。
さらに、雨期が近づくなか人びとが医療を受けることは一段と難しくなり、水系感染症のリスクも高まっている。
国境なき医師団(MSF)は「人道対応が大幅に拡充されなければ、今後数カ月で状況はさらに悪化する恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
ただでさえ不安定だった医療体制、度重なる感染症の流行、避難生活、深刻な栄養失調に対し、近年の国際援助の削減と戦闘の再燃が追い打ちをかけているためだ。
さらに、雨期が近づくなか人びとが医療を受けることは一段と難しくなり、水系感染症のリスクも高まっている。
国境なき医師団(MSF)は「人道対応が大幅に拡充されなければ、今後数カ月で状況はさらに悪化する恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
数字だけでは見えない、医療体制のもろさ
「最近、ある子どもが私たちの施設に運び込まれました」
活動中の出来事をそう振り返るのは、スーダンのMSF活動責任者のアリーヌ・セラン。セランは続ける。
活動中の出来事をそう振り返るのは、スーダンのMSF活動責任者のアリーヌ・セラン。セランは続ける。
到着時には命の危険が迫っている状態でしたが、なんとか一命を取り留めました。しかし、悲しいことに視力を失ってしまいました。こうした事例から、栄養失調が、障害や発達の遅れなど長期的な影響を子どもたちに与え得ることは明らかです。子どもがそのような代償を払わされるべきではありません。
スーダンのMSF活動責任者 アリーヌ・セラン
青ナイル州では、数十年にわたる戦闘によって、医療をはじめとする生活に不可欠な支援が徐々に損なわれてきた。
州内では約200カ所の医療施設が「機能している」と報告されているが、この数字だけでは実態は見えない。多くの施設は老朽化した建物や損傷を受けた建物で運営されており、不定期にしか運営できない施設や、ごく限られた治療しか提供できない施設も少なくない。病院や診療所ではなく、小規模な設備にとどまる場所も多い。
その一方で、医療ニーズは高まるばかりだ。マラリアや栄養失調が広がり、コレラなどの感染症も流行するなか、医療費を払う余裕のない貧しい人びとが、限られた医療に頼らざるを得ない状況に置かれている。
10万人超が暮らすダマジン郊外
青ナイル州の州都ダマジン郊外、特にカラマス地区では、国内避難民や帰還民を含む10万人以上が避難居住地で暮らしている。こうした地域の生活環境は、緊急時の人道支援基準を大きく下回っている。
2026年1~3月、MSFがダマジン教育病院で実施する栄養失調治療プログラムには、750人を超える子どもが入院した。これは、2022年の同時期比で2倍にあたり、現地のニーズの大きさを示している。
MSFは病院での治療に加え、ダマジン周辺のカラマス地区で移動診療も支援している。1~3月の診療件数は2万2000件以上に上り、地域の人びとが人道援助による医療に頼っている実態を物語っている。診療で最も多かった病気はマラリアだった。
2026年1~3月、MSFがダマジン教育病院で実施する栄養失調治療プログラムには、750人を超える子どもが入院した。これは、2022年の同時期比で2倍にあたり、現地のニーズの大きさを示している。
MSFは病院での治療に加え、ダマジン周辺のカラマス地区で移動診療も支援している。1~3月の診療件数は2万2000件以上に上り、地域の人びとが人道援助による医療に頼っている実態を物語っている。診療で最も多かった病気はマラリアだった。
活動をしていると、赤ちゃんの容体が悪くなっていくのを見守るしかなかった保護者とよく出会う。医療施設にたどり着くための交通費を払えなかったためだという。
MSFは無償で医療を提供しているが、必ずしも近隣にこうした場所があるわけではない。医療にたどり着くまでの距離や費用は依然として大きな課題となっている。
薬が足りず、患者が薬局で薬を買うよう求められることもある。ようやく医療施設に到着した時には、すでに重症だったり、病状が進みすぎていたりすることも少なくない。
避難の波、重なる援助削減
相次ぐ人びとの流入も、医療体制への圧力をさらに強めている。
2023~2024年にかけて、ダマジンとその周辺地域には、首都ハルツーム、ジャジーラ州、センナール州、青ナイル州内における戦闘の影響地域から多くの国内避難民が逃れてきた。
2025年には状況がさらに悪化した。主要ドナー、特に米国による資金削減と支援が突然停止。南スーダンに逃れていたスーダン難民が、受け入れ態勢も整わないまま帰国を余儀なくされたためだ。
そのうえ今年1月以降、青ナイル州の南部・西部で戦闘が再燃し、さらに多くの人びとがダマジンや市周辺のキャンプ、カラマス地区へと避難している。戦闘によって孤立した地域や、支援団体が入れない地域では、医療はほぼ存在していない。
こうした2026年の新たな避難の波は、国際援助が大幅に縮小するなかで起きている。主要ドナーによる支援表明が公には発表されているものの、その実態は必ずしも前向きなものではない。新たな資金が上積みされているというより、すでに決まっていた支援を別の項目に移し替えただけの場合があるためだ。
水、衛生、食料…暮らしの支援も不足
さらに、衛生環境は明らかに不十分だ。
塩素消毒された清潔な水を安定して得ることは難しく、トイレの数も足りていない。多くの家族は適切な住まいを確保できておらず、石けんや水を入れる容器といった生活必需品も不足しているため、井戸がある場所でさえ水を安全に使えない。
塩素消毒された清潔な水を安定して得ることは難しく、トイレの数も足りていない。多くの家族は適切な住まいを確保できておらず、石けんや水を入れる容器といった生活必需品も不足しているため、井戸がある場所でさえ水を安全に使えない。
また、雨期が近づくにつれ、新たなリスクも生じている。マラリアやデング熱といった蚊などを媒介とする感染症の危険性が高まる一方で、蚊帳の配布や、媒介する生き物の駆除の対策は必要な水準にまったく届いていない。
加えて、食料事情も悪化している。避難地域の人口密度が高まるなか、人びとは畑を耕せる土地をほとんど、世帯によってはまったく確保できていないからだ。
人道援助団体は連携を強めているが、支援の規模はニーズに追いついていない。すでに一部の保健・栄養分野の支援団体は青ナイル州からの撤退を発表しており、活動の縮小を余儀なくされている団体もある。
セランは危機感を募らせる。
6月下旬に現在の資金サイクルが終わることは、最悪のタイミングと重なります。ちょうど雨期が始まり、人びとや物資の移動が大きく制限され、人道ニーズが急増する時期だからです。人道的な対応を大幅に拡充しなければ、その影響は人びとが最も支援を必要とするタイミングで表れることになってしまいます。
スーダンのMSF活動責任者 アリーヌ・セラン




