ドローン攻撃に揺れる国境の町──激化するスーダン内戦、チャド東部で457人を治療
2026年04月10日
隣国・チャドの町ティネでは2月以降、国境なき医師団(MSF)とチャド保健省が連携し、ドローン攻撃で負傷した457人を治療してきた。
治安の悪化に加え、医療支援をするのに必要な物資も不足するなか、MSFは「戦闘に巻き込まれた人びとが深刻な被害を受けている」と警鐘を鳴らす。
一日で19人が犠牲に
「昼夜を問わず対応にあたってきました」
こう話すのは、ティネでMSFの医療プロジェクト・コーディネーターを務めるリタ・マガノ。多数の死傷者が出た13件の攻撃事案に対応したチームの一員だ。
病院ではこれまでに計38人が死亡した。このうち19人は、国境地帯が攻撃を受けた3月16日のわずか一日だけで亡くなった人びとだった。
この2カ月の間に、私たちはチャド保健当局と連携して457人を治療しました。負傷者の中には子どもも6人いました。けがのおよそ半数は腕や脚に集中しており、開放骨折も少なくありません。これほど多くの重傷患者が一度に運ばれるとは予想していませんでしたが、私たちはできる限り患者の容体を安定させ、傷の手当てをして、命を守るための手術をしました。
ティネのMSF医療プロジェクト・コーディネーター リタ・マガノ
2月末、RSFはスーダン西部・北ダルフール州の町ティナを制圧したと主張した。ここは、チャド東部の町ティネと国境を隔てて隣り合う場所だ。
スーダン・ダルフール地方では非アラブ系の住民が狙われ、攻撃や爆撃、大規模な処刑といった凄惨(せいさん)な暴力にさらされてきた。
こうした攻撃はいまも続いており、すでに危機的だった人道状況をさらに悪化させている。
病院移転を迫る攻撃
MSFはティネで、暴力から逃れてきた人びとに医療・人道援助を提供している。つい最近までは、国境からわずか数百メートルの場所にあるマブルーカ病院を支援していた。
しかし、2月21日に病院近くで銃撃や砲撃が発生し、安全を確保できなくなった。MSFは数時間のうちに病院を閉鎖し、患者と機材を新しい医療施設へと移した。
現在は、ティネに新設された国境から離れた場所にある病院で、11人のMSFスタッフが活動している。その一人で、ロジスティク・マネジャーのジャン・イポリットはこう説明する。
ある日は、123人もの患者が一度に運び込まれ、手術に欠かせない薬が不足しかけました。新しい病院では水や電気も止まり、緊急対応は非常に難しいものになっています。
ティネのMSFロジスティック・マネジャー ジャン・イポリット
さらに、チャド国内での攻撃は、人道援助に携わるスタッフだけでなく、スーダンの内戦から逃れてきた難民を含む民間人の命も危険にさらしている。
チャド当局によると、3月18日には、ティネで葬儀に参列していた17人がドローン攻撃によって死亡した。MSFは24人を治療したが、その多くは重体だった。
私たちは状況に応じて活動内容を見直し、場所も移しながら対応しています。治安上の理由から、チームが一時的に活動を止めざるを得なかったことも何度かありました。いまのような情勢では、チャドで保護を求める人びとに対し、MSFが最低限の医療支援を続けることすら難しくなっています。
ティネのMSFロジスティック・マネジャー ジャン・イポリット
厳しい治安下でも続く支援
こうした厳しい状況にあっても、MSFはスーダン難民を支えるため、ティネの一時滞在キャンプでも活動を続けている。外来診療、栄養状態の確認、予防接種、性暴力被害者への支援にあたるとともに、移動診療の開始に向けた準備を進めている。
また、ティネではチャドのほかの地域と同じようにはしか(麻疹)が流行しており、MSFは3月25、26日の2日間で計710人の子どもにワクチンを接種した。
さらに、現地ではほかの団体が資金や物資の不足で撤退。現在はMSFが給水できる唯一の組織で、安全な水を確保するためにも支援が欠かせない状況となっている。
命を守る緊急援助を
チャドとスーダンの国境地帯にいる民間人には、速やかな保護が必要だ。
北ダルフールの状況はいまも悪化している。そこに世界的な人道援助資金の削減や、避難を強いられた家族に対する深刻な暴力、生活最低限の水準にさえ満たない困窮が重なり、人道ニーズは膨れ上がっている。
いま求められているのは、命を守るための緊急援助だ。




