感染した子ども10人中1人に死の危険──髄膜炎とはしかが同時流行:チャド東部
2026年05月14日
チャド東部に隣国スーダンの内戦から逃れてくる難民が増え続ける中、はしか(麻疹)と髄膜炎の同時流行が起きている。感染はスーダンからの難民、地元の住民いずれにも広がっており、国境なき医師団(MSF)がチャド保健省と連携し、対応に当たっている。髄膜炎の子どもは10人に1人が死亡しており、状況は極めて深刻だ。
状況が急速に悪化
スーダン国境に近いチャド東部アドレにMSFが開設している隔離施設では2026年1月以降、1500人以上の患者が入院した。アドレでは髄膜炎の症例が急増しており、3月から4月にかけてMSFの施設に入院した髄膜炎の子ども212人のうち25人が死亡した。致死率は約12%に達している。
アドレの状況は、わずか数週間で急速に悪化している。はしかは、1月は16例だったが、3月には371例と急増。4月初旬の2週間だけですでに161例が確認されている。髄膜炎も同様の傾向を示し、1月に18例、3月は109例、4月最初の2週間では101例に達している。
「重症のはしかの子どもが毎日運び込まれてきます。多くは肺炎を併発しており、緊急の入院が必要です」と、アドレで活動するMSF医療活動マネジャーのイザベル・カビラは語る。
「同時に髄膜炎患者の病床使用率もほぼ100%に達し、受け入れ能力は限界に近い状態です。他の疾患への対応にも影響が出ています」
「髄膜炎にかかった子どもの大多数は重症です」と、アドレのMSFコーディネーター、レア・ルドリュは語る。
重症の子どもたちを次から次へと治療するため、私たちのチームは隔離施設から隔離施設へと絶えず移動せざるを得ない状況にあります。
レア・ルドリュ アドレのMSFコーディネーター
病床を3倍に
患者の増加に対応するため、MSFはアドレでの小児隔離体制を3倍に広げ、はしか用のベッドを5床から15床に増設した。また、髄膜炎患者専用の30床のテント病棟を設置した。3週間にわたり、保健省はMSFの支援のもと緊急の予防接種を実施し、最も影響を受けた地域で、はしかワクチンを9万5500人以上、髄膜炎ワクチンを33万7800人以上に接種した。
4月7日から13日にかけて、スーダン難民と受け入れ地域住民を含む約5万人が暮らす砂漠地帯のアブテンゲ・キャンプで、さらに6万2500人が髄膜炎ワクチンの接種を受けた。さらに、4月15日以降はメチェで集団予防接種を行い、キャンプで暮らす人びとと周辺住民を対象に、これまでに髄膜炎ワクチンを1万6600人以上、はしかワクチンを9400人以上に接種した。
しかし、こうした対応には継続的な課題がある。適切な低温を維持してワクチンを運搬、保管するコールドチェーンの混乱や、定期予防接種の不足により、多くの人びとが感染リスクにさらされたままなのだ。基礎医療レベルでの定期予防接種の強化が不可欠で、特に周辺地域に移動診療チームを展開することが重要となる。こうした持続的な対策がなければ、緊急対応だけでは不十分だ。
アドレの南に位置するシラ州では、1月初旬に確認されたはしかの流行が、最初の発生地だった金の採掘現場から地域全体へと急速に広がり、15歳未満の子どもへの影響が拡大している。保健省はMSFの支援のもと、3月下旬から4月初旬までの15日間で、生後9カ月から14歳までの子ども11万3000人以上に予防接種を実施した。
この危機は、はしかと髄膜炎の流行が続くスーダンからの難民の流入によって、さらに深刻化している。キャンプでは過密状態、水や医療へのアクセス不足、栄養不良が重なり、感染の急速な拡大と重篤な合併症のリスクを高めている。特に5歳未満の子どもでその影響が大きい。
2026年4月時点で、ワダイ州、シラ州、ワジ・フィラ州、東エネディ州には約92万6000人のスーダン難民が確認されており、もともと弱い医療体制にさらなる負荷をかけている。




