性暴力が戦争の「武器」に──スーダン・ダルフールで何が起きているか、MSF報告書
2026年04月02日
いま、ダルフールで何が起きているのか。
内戦が続き「世界最大の人道危機」といわれるスーダン。そのなかでも、とりわけ過酷な状況にあるのが、同国西部のダルフール地方だ。
国境なき医師団(MSF)はこのたび、そのダルフールにおける性暴力の実態について、報告書にまとめて発表した。報告書「伝えたいことがあるーダルフールでの性暴力を生き延びる」(英文)によると、現地における性暴力は、戦闘の前線付近から市民生活の中に至るまで、避難民キャンプから公道など場所を選ばずに起きている。
ダルフール全域で続く性暴力
今回のMSF報告書は、スーダン内戦における性暴力について詳細に記録したものだ。サバイバーの証言やMSFデータを元に、現地の性暴力がいかに広範囲で組織的なものであるかを指摘している。
2024年1月から2025年11月にかけて、ダルフール各地のMSF支援施設において、少なくとも3396人の性暴力サバイバーが治療を受けた。その97%は女性と少女である。
この3396人という数値も、実態の一部に過ぎない。サバイバーの多くは、医療機関に安全にたどり着くこと自体が不可能な状況にあるのだ。
MSFで緊急対応医療マネジャーを務めるルース・カウフマンが、次のように語る。
「スーダン内戦の特徴は、性暴力が猛威を振るっている点です。戦闘の前線付近だけではなく、コミュニティ全体にまで広がっています。この内戦は、女性と少女の身体をターゲットにした内戦でもあるのです」
現地の人びとは避難を強いられ、地域社会のネットワークが崩壊しています。医療も満足に受けられない。根深い女性差別の土壌もある。そうした状況のなか、スーダン全土で性暴力が吹き荒れているのです。
MSF緊急対応医療マネジャー ルース・カウフマン
武装集団による組織的な犯行
サバイバーの証言や、MSFの医療データからも明らかなのは、こうした性暴力の大半は、スーダン軍と戦闘を続ける準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の兵士や、その協力組織の民兵たちによるものということだ。
RSFは2025年10月26日、北ダルフールの州都エル・ファシールを制圧した。その翌月、MSFは、同市の西に位置するタウィラに逃れてきた性暴力サバイバー140人以上を治療している。彼らの94%は武装集団に襲われたものであり、戦闘から逃れる最中に被害を受けた。
性暴力は至るところで起きたようだ。家族の目の前で、複数の男たちによって暴行を受けたケースも多かったという。非アラブ系の住民をターゲットにしたものも多い。彼らに屈辱と恐怖を与える手段として、性暴力が使われているのだ。RSFは、過去にもザムザム・キャンプの破壊など残虐行為を行ってきた。
MSFは2025年12月から2026年1月にかけて、タウィラ周辺の避難民キャンプで、さらに732人もの性暴力サバイバーを確認している。戦闘から逃れる道中だけでなく、避難民キャンプ内で被害を受けたケースも多い。
キャンプは人口過密であり、治安が悪化している。一方で、水をもらうにも長く歩かなければならない。浴場も安全が確保されていない。トイレの数も限られている。こうした劣悪な環境が、女性をさらに危険な状況へと追い詰める。
サバイバーは戦闘中だけでなく、、暴力から逃れるための道路、作物を作る田畑、市場、避難民キャンプまで、性暴力が日常の至るところに広がっていると証言する。
日常に潜む暴力
戦闘の前線から数百キロ離れた南ダルフール州でも、性暴力の被害は絶えない。サバイバーの34%は、農作業中あるいは農地に向かう途中で襲われている。また、22%は、まき、水、食料などを調達する中で被害に遭っている。ここでも同じように、暴力が日常の中に入り込んでいるのだ。
子どもの被害も多い。南ダルフールにおける性暴力の被害者数を見ると、5人に1人が18歳未満である。そのなかには、5歳未満の子どもが41人も含まれている。
MSFのデータによれば、こうした暴力の大半は武装した男たちによるものだ。北ダルフールでは95%以上、南ダルフールでは60%近くのケースが、複数の加害者によるものだった。
自宅から逃げる際に性暴力を受けた女性は、次のように証言する。
「連中は、私たちを空き地に連れていきました。1人目は2回、2人目は1回、3人目は4回ほど、私をレイプしました。連中は、棒で殴りつけ、私の頭に銃口まで突きつけました」
南ダルフールに住む40歳の女性は「市場でも農地でも、毎日のようにレイプが起きています」と語る。この地では、暴力は日常の一部となってしまっている。
スーダンにおける性暴力の即時停止を
こうした性暴力のサバイバーには、当然ながら早急なケアが必要だ。しかし、そこにはさまざまな障壁がある。劣悪な治安、社会的な偏見、保護する仕組みの不備などだ。
MSFは以下の点を指摘する。
性暴力そのものが、
・内戦を遂行する上での「武器」となっている
・また、軍事組織が民間人を従属させるための手段と化している
これらは、国際人道法を踏みにじる行為である。
MSFは、現地においてグループインタビューを実施した。地域の指導層、助産師、社会活動家、性暴力サバイバーが参加してくれた。その全ての人びとが、スーダン全土における性暴力の即時停止を訴えている。さらには、加害者を法の下に裁き、被害者への支援と保護、医療の提供、尊厳の回復を図るよう求める。
MSFは、RSFおよびその支持勢力を含む全ての紛争当事者に対して、性暴力を即時停止し、再発を防止し、加害者たちの法的責任を問うよう求める。
また、国連、援助国、人道援助団体に対しても、ダルフールを含むスーダン全土において医療・保護サービスを速やかに拡充するよう求める。




