海外派遣スタッフ体験談
一人の命を救うためにチームが一丸となった瞬間
吉野 美幸
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- 中央アフリカ共和国
- 活動地域
- バンギ
- 派遣期間
- 2016年8月~2016年9月

- QMSFの海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
-
前回の活動から帰国し、約2週間の休暇を取ってから今回の活動に参加しました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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7月末に専門医試験が控えていたので、その勉強をしていました。またその間に、ラジオに出演してMSFの活動経験について話したり、私が2013年に派遣されたアフガニスタン北部のクンドゥーズの病院が米軍に爆撃された事件についてMSFが行った記者会見に出席したりしたのであっという間に2週間が過ぎてしまいました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
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これまでの活動で経験した症例が、診断や治療のヒントとなることが良くあります。全ての経験が財産となっています。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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中央アフリカ共和国の首都バンギのMSFが運営する総合病院で、一般外科医として8週間活動してきました。この病院は、中央アフリカ共和国の中で最も高度な外科治療を提供している病院だったため、MSFの他のプロジェクトや、国際赤十字、その他のNGOからの患者も受け入れており、基幹病院として機能していました。
外国人派遣スタッフの一般外科医1人と整形外科医1人の計2人の外科医がおり、2つの手術室に分かれて手術を行います。私はこの8週間で約230件の手術を執刀しました。
症例としては銃やナイフによる外傷、交通事故、やけどなどが多くみられました。またアフリカでよく見られるブルリ潰瘍などの特殊な感染症などの外科治療もしました。
外国人派遣スタッフは一般外科医1人、整形外科医1人、麻酔科・集中治療室の医師2人、麻酔看護師1~2人、プログラム責任者1人、医療チームリーダー1人、病院医師リーダー1人、看護師長1人、理学療法士1人、ロジスティシャン数人、アドミニストレーター数人が常に入れ替わりながら働いていました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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午前7時半から集中治療室の回診、その後2部屋に分かれて予定手術を行いました。また水曜日は7時からミーティングがあり、また土日も7時半に病棟回診が始まるので、朝寝坊できるのは1日たりともありませんでした。毎週金曜日は予定手術を少なめにして、病棟全体の回診をしました。
日曜日は予定手術を入れないようにしていました。そのため、回診後はのんびりブランチの時間をとり、その後は疲れをとるためにひたすら寝ていることが多かったです。週末には皆で外食したりして、気分転換をしていました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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スタッフと夕食前のひと時
病院の2階の一部を外国人派遣スタッフの宿舎として使用していました。最初の2週間は相部屋でしたがその後は個室がもらえました。2.5畳程度の個室に蚊帳付きのベッドと棚が与えられていました。
シャワーとトイレは共用でしたが、2015年には無かった温水シャワーが出来ていたことに感激しました!!!もう水シャワーで「滝に打たれる修行」の気分を味わわずに済みました(笑)。
病院内なので衛生環境はよく、キッチンに小さなゴキブリが出る程度でした。食事は現地の調理スタッフが作ってくれました。夕食メニューのバラエティは乏しく、ベジタリアンの友人は米飯しか食べるものがなくケチャップをかけて食べていることもありました。毎日のように鶏肉料理でメニューがほとんど同じなので、飽きている人が多かったと思います。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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矢を抜く手術を手伝ってくれた
ギニア人の整形外科医中央アフリカ共和国内のブリアという地域のプロジェクトから、「胸に矢が刺さっている患者が来た」という連絡が来たことがありました。
その地域では他のNGOの外科医がいたのですが、対応が困難という理由で、私たちのバンギ総合病院に患者を転送したいという依頼でした。ブリアの診療所のスタッフは、ほぼ全員がこの患者の救命は無理だろうと考えていました。バンギのスタッフにも「うちの病院だって手に負えない!」と反対する人もいました。
それでも、「うちの病院がこの国の最後の砦なんだから、救命できる可能性は低いかもしれないけど、出来るだけのことはしよう」と仲間を説得し、患者を引き受けました。かなり危険な状態で運ばれてきましたが、チーム一丸となって協力して治療にあたり、幸運にもその患者は元気に退院していきました。
矢が刺さっているという状況もかなり衝撃的でしたが、「何とかこの患者を助けたい」という気持ちでチーム一丸となって手術に臨み、よい結果を得られたことで、チームの団結力が強まった瞬間でした。
<良かったこと>
開胸手術を必要とする症例が多かったので、活動地ならではの工夫やコツなど、新しい経験を積むことができた事です。フランス語が少し上達し、2015年に一緒に働いた整形外科医、に「Miyuki!フランス語上達したねー!!」と言ってもらえてうれしかったです。
<苦労したこと>
チーム内で相性の悪いメンバー同士がいがみ合い、そのことが原因で皆がストレスを抱えていました。もっと早めに解決した方が良かったのではと後で反省しました。
- Q今後の展望は?
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6ヵ月間は日本の病院に戻って勤務します。また2017年4月以降はMSFで働く予定です。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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MSFの活動地での生活も、慣れればなかなか楽しいものです。アフリカの陽気な仲間たちが、ダンスをしながら皆さんを迎えてくれるはずです。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2016年6月~2016年7月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- 活動地域:ルチュル
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2016年4月~2015年5月
- 派遣国:イエメン
- 活動地域:アデン
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2015年8月~2015年9月
- 派遣国:中央アフリカ共和国
- 活動地域:バンギ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2015年6月~2015年7月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- 活動地域:ルチュル
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2014年7月~2014年8月
- 派遣国:パレスチナ
- 活動地域:ガザ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2014年4月~2014年6月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2013年6月~2013年10月
- 派遣国:アフガニスタン
- 活動地域:クンドゥーズ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2013年4月~2013年6月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年8月~2012年9月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年6月~2012年7月
- 派遣国:パキスタン
- 活動地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年4月~2012年5月
- 派遣国:ナイジェリア
- 活動地域:ポートハーコート
- ポジション:外科医