海外派遣スタッフ体験談
初めての手術手技も貴重な体験
吉野 美幸
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- アフガニスタン
- 活動地域
- クンドゥーズ
- 派遣期間
- 2013年7月~2013年9月

- Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
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初回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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初回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。
これまでMSFの医療援助活動としてナイジェリアへ1回、パキスタンに3回派遣されました。
現場での経験がいつも次の活動に生かされており、自分自身を成長させてくれていると感じました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?
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銃創患者の手術(右が筆者)。
アフガニスタン北部、クンドゥーズ地区の外傷センターでの勤務でした。ベッドはICU(集中治療室)4床を含む約70床の大きな病院でしたが、それでも毎日多数の患者が運び込まれるためベッドは常に満床の状態でした。
現地の整形外科医6名、外科医3名のスーパーバイザー役として、3名の海外派遣スタッフ(整形外科医1~2名、外科医1名)が派遣されていました。現地の外科医たちは、経験年数は豊富なのですが専門的な教育を受ける機会が少なかったそうで、腹部外科手術の基本や頭部外傷の手術などを伝えているところでした。
私が現地で実感したのは、MSFの一般外科医はすべての外科処置をカバーしなければいけないいうことでした。このプログラムでは腹部外傷のほかにも、頭部外傷、顔面外傷、泌尿器科、心臓血管外科、気管・肺などの呼吸器外科、形成外科など、骨以外ほぼすべての分野の診療を一般外科医が行うことになっていました。私自身初めて経験する症例や、初めての手術手技を1人でしなければならないことも多くあり、非常に難しいけれどやりがいのあるプログラムではありました。また交通事故や銃創・刺創、爆破による外傷などが多発しており、1週間ほぼ毎日のように夜間に緊急手術をしていることもまれではありません。
3ヵ月で合計122件(整形外科は含まず)の手術を行いました。内容は腹部外傷5割、開胸手術1割、心臓血管外科1割、頭部外傷(開頭血腫除去など)1割、その他2割でした。大変忙しく、充実した3ヵ月でした。
現地の外科医の教育にも携わりました。どこの国でも外科医は「ちょっと変わった頑固者」が多く(私もきっとその1人ですが。。。)、皆をまとめるのに苦労しました。また病院全体のシステムをより良いものに変えようとした際も、現地看護師の看護教育レベルやスタッフの労働時間など大きな問題と直面し、今までの短期派遣活動で自分の仕事だけをしていた時には気付かなかった病院運営の難しさを垣間見ることができ、貴重な経験であったと感じています。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
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今回は初めての3ヵ月(外科医としては長期)の活動参加でした。3~4日間の首都での休暇が与えられているのですが、とりあえず身体を休めたかった私は首都には行かず現地の宿舎で2日間の休暇をとりました。(それでもPHSの電源を切ったときの解放感はなかなか爽快でした!)仲間の特製デザートをゆっくり食べ、ひたすら眠り、読書や運動をして過ごしました。
その2日間以外は完全にフル稼働でした。忙しかったのと、初めての場所で緊張していたせいか最初の1~2ヵ月はあっという間に過ぎてしまい、むしろやり残したことや今後の経過を見たい事項も多く、3ヵ月後に現場を去る時は後ろ髪を引かれる思いでした。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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スタッフとテーブルを囲んだひと時。
海外派遣スタッフは約20人、多い時は30人近い大所帯で大きな宿舎に住んでいました。それぞれに個室とベッド、机、クローゼットが供与されました。トイレとシャワーは共同でしたが、ほぼ毎日温水が使え、非常に清潔で快適な環境でした。(今回は宿舎内でゴキブリを見たのはたったの1回でした!!!)宿舎の庭で犬を飼っており、いつも皆に癒やしを与えてくれていました。
- Q良かったこと・辛かったこと
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<良かったこと>
また新しい経験が増えたこと。これまでのトレーニングが実践で生かせた場面が多く、自分の自信にもつながった。同時にまだまだ未熟だと感じる部分も多く、今後さらに修練を積んでスキルアップしていきたい。<辛かったこと>
1週間近く連続で夜間の緊急手術をしてほとんど眠れず、自分が風邪を引いたとき。でも「今の私の風邪より、この人の外傷の方が間違いなく重症だ」と自分を奮い立たせて頑張った。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
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日本で元の病院に戻って6ヵ月間は消化器外科医として勤務する予定です。その後の6ヵ月間はまたMSFと一緒に働きたいと考えています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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現地での生活は、部活動の合宿に似た雰囲気だと思います。老若男女、皆で朝から晩まで一緒に過ごし、同じ食事を食べ、星空の下で語り合い。。。一緒の目標に向かって打ち込める仲間は、その後も大切な財産となります。
貴方の力を待っている人が世界にはまだたくさんいます。そして、インターナショナルな合宿生活、参加してみませんか?
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2013年4月~2013年6月
- 派遣国:パキスタン
- プログラム地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年8月~2012年9月
- 派遣国:パキスタン
- プログラム地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年6月~2012年7月
- 派遣国:パキスタン
- プログラム地域:ハングー
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2012年4月~2012年5月
- 派遣国:ナイジェリア
- プログラム地域:ポートハーコート
- ポジション:外科医