海外派遣スタッフ体験談
整形外科、産婦人科の知識も実践
吉野美幸
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- パキスタン
- 活動地域
- ハングー
- 派遣期間
- 2012年6月~2012年7月

- Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
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前回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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前回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。
初回派遣から帰国し、約2週間の休暇の後に今回のミッションに出発しました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?
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手術の様子
ハングーでの救急/外科プログラムでした。パキスタンや近隣国のアフガニスタンからの救急患者をERで受け入れており、その中で外科治療を必要とする人びと(毎日4~5人程度)の対応をしました。MSFやその他の病院から2時間以上かけて搬送されてくる人もいました。
入院ベッド数は約20床でしたが、患者が多い時期はしばしば満床となり、男女ベッドを入れ替えたり誰かを退院させたりしないといけない状況が続きました。
外国人スタッフは、外科医は1人のみで、麻酔科医1人、ERドクター1人、プロジェクト・コーディネーター1人でスタートしました。途中から助産師1人、医療チームリーダー1人が加わりました。毎週のようにメンバーの誰かが入れ替わっていました。全員が2棟の共同宿舎に生活していました。
月曜~日曜日まで毎朝の病棟回診後に、手術室でナースと共に4~5件/日の手術を行いました。手術の合間に手術後の患者の外来フォローを行う必要があり、手術室と処置外来を往復する毎日でした。またその途中でERからの外科症例のコンサルトを受けることもしばしばありました。
手術が終わって病棟を回診し、帰宅するのは19~21時頃でした。日曜日は予定手術をできるだけ入れないようにしていましたが、実際は土・日曜日に救急患者が多数来院するため、各週末とも多忙を極めていました。
症例としては整形外科が6~7割(創外固定、骨折の整復、デブリードマン<壊死した部分の切除>、四肢の切断など)、他に胸腹部外傷(銃創、刺創など)、帝王切開・子宮全摘術(双胎、前置胎盤、分娩停止、胎盤剥離など)、熱傷・爆風による負傷など、合計73例の手術を行いました。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
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チームメイトとランチタイム
1ヵ月の短期派遣だったため、休日はなく、土・日曜日の空いた時間を休憩にあてる予定でした。しかし実際は週末の方が忙しく、朝から晩まで働いていることがほとんどでした。手術が深夜に及んだ日は、他のスタッフが食事を手術室まで運んでくれたりしました。
夕食はできるだけチームメイトと一緒にとり、日曜日の夕食は交代で料理を作りました。日本から持参した味噌で作った「ミソスープ」は思いのほか好評でした(笑)。
手術の合間に手術室チームでおしゃべりをしたりする事と、共同住宅に住んでいたアヒルの赤ちゃんを眺めて過ごす事が、良いストレス解消となりました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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共同のExpat Houseに5~10人程度が生活していました。
それぞれに立派な個室と蚊帳のついたベッド、机・椅子、クローゼットが供与されました。
シャワー付、トイレ(和式タイプ、辛うじて少量の水が流れる)付の部屋もいくつかありました。シャワーは3日に1回くらいお湯が出ることがありました。掃除・洗濯は清掃員が毎日してくれていましたが、途中から来なくなったため、自分たちで洗濯をしました。料理人の作るスパイシーな料理は、私は美味しく頂いていました。
ヤモリ・アリ・ゴキブリなどを住居内でしばしばみかけましたが、やっぱり見なかったことにしておきました。。。
- Q良かったこと・辛かったこと
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三線の腕前を披露
<良かったこと>
手術室チームは皆いい人たちばかりで、常に良い雰囲気で手術を行うことができました。
また海外派遣スタッフも同世代のメンバーが多く、まるで姉妹のように仲良く過ごせました。ミッション全体として、最高のチームだと感じました。前回の派遣で勉強した整形外科の技術・知識を実践することができました。また外科や産婦人科領域も含め、新たな経験をたくさんすることができました。今回は外科医1人という厳しい状況でしたが、良いメンバーに恵まれ充実した日々を送ることができました。
初回派遣と比較すると、環境に適応するのが早くなったと感じました。英語での生活も少しずつ慣れてきて(初回派遣国と比較すると、パキスタン人の英語の発音の方が私には聞き取りやすかった)、コミュニケーションもそれほど困らなくなりました。
<つらかったこと>
整形外科や産婦人科領域も含めたすべての手術・外科手技のマネージメント、さらに病棟管理も合わせて1人で行うというミッションは、自分にとってはかなり大きなチャレンジでした。
現場のスタッフに支えられ、時には悩みながらも、何とか最後までやり通すことができました。自分自身としては大変有意義な経験となり、1歩成長できたと感じています。
胸腹部外傷に関して、時には救えなかった命もあり、自分の無力さや未熟さを痛感するとともに、さらなる修錬・勉強が必要であると感じました。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
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約3週間の休息をとり、次のミッションに参加予定です。(偶然にも今回と同じパキスタンのミッションに行くことになりました。I LOVE HANGU!)
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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(ア)ヒトは適応する生き物です。
(イ)ヒトは成長する生き物です。
(ウ)ヒトは感動する生き物です。
…Why don't you join us?
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2012年4月~2012年5月
- 派遣国:ナイジェリア
- プログラム地域:ポートハーコート
- ポジション:一般外科医