海外派遣スタッフ体験談

MSFの体験を通じ医師として成長

吉野 美幸

ポジション
外科医
派遣国
パキスタン
活動地域
ハングー
派遣期間
2013年4月~2013年6月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

初回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。

Q今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

初回派遣<ナイジェリアポートハーコート>の項目を参照してください。

これまでMSFの医療援助活動として、ナイジェリアへ1回、パキスタンに2回派遣されました。

3回の派遣後に、ドイツでの外科トレーニング(費用はMSF負担)に参加させて頂きました。そこで学んだ形成外科・血管外科・脳外科・整形外科などの知識や技術は、今回の活動でも大いに役立ちました。

MSF全体が、医療援助活動やトレーニングを通して私を外科医として成長させてくれ、それを一緒に喜んでくれる仲間が世界各国にいることは、とても素敵なことだと思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?
MSFの外科は、整形外科や産科外科も担う。 MSFの外科は、整形外科や産科外科も担う。

ハングーでの救急・外科プログラムでした。入院病棟20床のほか、救急患者を24時間体制で受け入れており、その中での外科疾患の対応をしました。

海外派遣スタッフは、外科医が1人、麻酔科医1人、医療チームリーダー1人、ER(救急専門医)1人、助産師2人(今回から増えました!)、看護師長1人、プログラム責任者1人、ロジスティシャン1人、アドミニストレーター1人でした。毎週のようにメンバーの誰かが入れ替わったり、休暇に出かけたり、首都から訪問があったりしてにぎやかでした。

毎朝、病棟回診後に手術室へ入り、看護師と共に6週間で合計120件の手術を行いました。手術の合間に手術後の患者の外来フォローを行い、またその途中でERに呼ばれる毎日でした。

症例としては、整形・形成外科が4割(創外固定、骨折の整復、腱の修復、デブリードマン、四肢の切断、熱傷処置、植皮など)、産婦人科が3割(帝王切開、子宮全摘術、産後出血の処置、経管膣裂傷縫合など)、腹部一般外科が1割(交通事故・銃創・刺創、腸チフスによる腸管穿孔など)、その他2割といった内容でした。

  • 壊死した部分の切除

今回の派遣期間中、パキスタンでは選挙が行われており、暴動や自爆テロによる多重負傷者事故の多い時期と予想されていました。実際に私が滞在していた6週間の間にも大きな事件がありました。現地入りした翌週に3件の爆破事件が発生し、非常に緊迫した治安環境の中で数十人の患者の処置を行う激務となりました。海外派遣チームや現地スタッフは非常に良く訓練されており、数十人の負傷者にも迅速かつ適切に対応していたのが印象的でした。

最も近いものでは病院から1キロ程度の場所でも爆発が起こり、ものすごい爆音に心臓が縮む思いでした。また病院内は悲惨な外傷を受けた重症患者であふれかえっており、スタッフのなかにはかなりの精神的ショックを受けている人もいました。この事件から約1週間後、MSFの臨床心理士が現地訪問にきてカウンセリングを行ったり、「心的外傷後ストレスへの対応法について」などのワークショップを開いたりなど、スタッフへの精神的ケアも充実していたことには感心しました。

Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?

6週間の短期派遣活動だったため、休暇はありませんでした。

スタッフに外科のトレーニングを行う筆者(左から2人目) スタッフに外科のトレーニングを行う筆者(左から2人目)

多重負傷者事故に備えて病棟のベッドを用意するなどの対応をしましたが、1週間ほど大きな手術がほとんど無い時期もありました。とはいえ、1分後には大規模な事故が起こるかもしれないという状況だったので、精神的にゆっくり休むのは難しかったです。チームメイトと一緒におしゃべりしたり、映画を見たりするのが癒しの時間でした。(初回派遣の頃は言葉や文化の異なる人びととの共同生活や会話にプレッシャーや疲れを感じることもしばしばでしたが、今回はむしろ、くだらないおしゃべりなどを楽しむ余裕ができて、以前よりもチームメイトとの連帯感は深まったと感じられました。)

Q現地での住居環境についておしえてください。

共同の宿舎に8~12人程度が生活していました。それぞれに個室と蚊帳のついたベッド、机、椅子、クローゼットが供与されました。シャワーとトイレは共用でしたが、今回はトイレが洋式タイプに改築されており快適でした。

掃除・洗濯・料理は地元スタッフが行ってくれていました。ネズミ、カエル、ゴキブリなどを住居内でしばしばみかけましたが、今回は仲間に頼んで追い出してもらいました。「もう大丈夫、さっきのゴキブリとはよく話し合って、部屋に勝手に入らないように頼んでおいたから(by 隣の部屋にいたE君より)」

Q良かったこと・辛かったこと

<良かったこと>
現地スタッフ皆が私を覚えていてくれ「おかえりMiyuki!!」と呼びかけてくれた。海外派遣スタッフが皆本当にいい人たちで、共に喜び、共に闘い、たくさんの感動を共有できた。

<辛かったこと>
爆発の大きな音にびっくりしたので、その後数日よく眠れず、ドアのバタンと閉まる音にも過敏になってしまった。周りのスタッフも「夢で宇宙人が攻めて来てさらわれそうになった!」「患者がどんどん押し寄せて来てパニックになっている夢だった!」など、皆同じような精神状態なのだと知り、お互いに不安を吐き出したり共感したりすることで安心できた。

Q派遣期間を終えて帰国後は?

約3週間の休養を取り、アフガニスタンの援助活動に出発するスケジュールを組みました。

この間、普段日本で勤務している病院を長期間離れるのが不安だったので、自分の技術のギャップを少しでも埋めようと週3回程度の病院勤務をしていました。(皆に日本人は働きすぎだよ!!と言われました。。。)

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

MSFと共に歩き始めてまだ2年。医療援助活動に参加する度に新たな発見があったり、今後の目標ができたりしていきます。ここはゴールではなくスタートだったのだと再認識している今日この頃。迷っている貴方、私たちと一緒に成長する旅に出かけませんか?

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2012年8月~2012年9月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年6月~2012年7月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年4月~2012年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ポートハーコート
  • ポジション:外科医

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