海外派遣スタッフ体験談

4度目のパキスタンで確実な成長を感じる

吉野 美幸

ポジション
外科医
派遣国
パキスタン
活動地域
ハングー
派遣期間
2014年4月~2014年6月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

今年度も4月~9月の半年間、MSFと一緒に働くことを希望していました。当初はイエメンに派遣予定でしたがキャンセルとなり、今回で4回目のパキスタン、ハングーへの派遣となりました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

日本にいる半年間は消化器外科医として総合病院で勤務しています。その間に外科のスキルアップをし、また派遣が近くなるとインターネットで英会話のレッスンを受けたりしていました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

どの派遣も毎回、必ず新しい経験があります。その一つひとつが今回の派遣に生かされていました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
現場ではさまざまな症例に対応する 現場ではさまざまな症例に対応する

パキスタン北部ハングーでの救急・外科プログラムでした。24時間対応の救急外来と約20床の入院病棟があり、また隣接する母子保健センターからの緊急帝王切開を受け入れていました。

海外派遣スタッフは、外科医1人、麻酔科医1人、医療チームリーダー1人、ER(救急専門医)1人、助産師2人、プログラム責任者1人でした。(途中から日本人のロジスティシャンと助産師が加わり、4人の日本人が同じ活動地にいるという珍しい経験をしました!)

症例としては、4~5月は比較的治安が落ち着いていたせいか暴力・紛争による負傷者は少なく、熱傷や感染した傷の処置が主な仕事でした。6月に入ってやや銃撃や地雷爆発などの事件が増え、緊急手術の件数が増えました。

手術症例の内訳は整形・形成外科が5割(骨折の整復、腱の修復、四肢の切断、熱傷処置、植皮など)、産婦人科が2割(帝王切開、子宮破裂による子宮全摘術、産後出血の処置、経管膣裂傷縫合など)、胸腹部一般外科が1割(交通事故・銃創・刺創、消化管穿孔など)、その他2割(気管切開、心臓・肺・血管の修復など)といった内容でした。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

毎朝、病棟回診後に手術室へ入り、看護師と共に2ヵ月で約200件の手術を行いました。手術の合間に手術後の患者の外来フォローを行い、またその途中でERに呼ばれる毎日でした。日曜日はできるだけ予定手術を組まないようにしましたが、いつも救急患者さんが運び込まれるので完全な休日を作るのは無理でした。

今回は2ヵ月という、外科医としてはやや長い派遣期間だったので、疲弊し過ぎてしまわないように気をつけていました。空いた時間を見つけては身体を休めたりリラックスしたりするように努めました。

また、途中で4日間の休暇を首都で過ごしたのもよい気分転換となりました。近くのホテルのプールで泳いだり、ギターを練習したりして過ごしました。

Q現地での住居環境についておしえてください。
同僚のスタッフとともに 同僚のスタッフとともに

宿舎に6~10人程度が共同生活をしていました。それぞれに個室と蚊帳のついたベッド、机、椅子、クローゼットが供与されました。シャワーとトイレは共用もしくは部屋に付いていました。

4月下旬のハングーはまだ涼しく、温水シャワーが出ない日は「滝に打たれる修行」の気分で水シャワーを使いました(笑)。6月は猛暑で気温が45℃以上になることもしばしばでしたが、そんな時に限ってエアコンが壊れたので、凍らせたペットボトルを抱いて何とか暑さをしのいでいました(汗)。

掃除・洗濯・料理は地元スタッフが行ってくれていました。いつものことですが、ネズミ、カエル、ヤモリなどを住居内でしばしば見かけましたが、今回も仲間に頼んで追い出してもらいました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
活動の終わりにお別れ会を開いてくれた 活動の終わりにお別れ会を開いてくれた

今回で4回目のパキスタン派遣となり、スタッフも「もうミユキは40%くらいパキスタン人になってるよね」と笑っていました。数年前は警備員だったスタッフが去年はドライバーになり、今年は看護師として勤務しているなど、それぞれのスタッフの成長が見られたのも喜ばしいことでした。

自分自身としても、戦地の限られた設備の中で手術を行うことに少しずつ慣れてきて、2年前の自分だったらきっと戸惑っていた難しい症例でも、「このままでは助からないのなら、救命できる確率は低いと思うけどやってみよう」と、ためらわず手術の判断をできるようになったという点では成長を感じました。

今回は心臓・肺や大きな血管を損傷していた患者さんが数名おり、長時間の手術もありました。チームの協力で何とか乗り越え、手足の切断を免れたり命を取り留めたりした患者さんが退院していく時は、こちらも胸が熱くなりました。

Q今後の展望は?

約1ヵ月の休暇をとり、その後また派遣の予定です。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

Be brave ! 数年後の成長した貴方が、今の貴方を振り返ったら、きっと励ましてくれているはずです。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2013年6月~2013年10月
  • 派遣国:アフガニスタン
  • プログラム地域:クンドゥーズ
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2013年4月~2013年6月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年8月~2012年9月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年6月~2012年7月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年4月~2012年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ポートハーコート
  • ポジション:外科医

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