海外派遣スタッフ体験談

研修を経て、フランス語圏での活動に初挑戦

吉野 美幸

ポジション
外科医
派遣国
コンゴ民主共和国
活動地域
ルチュル
派遣期間
2015年6月~2015年7月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

昨年のガザでの活動が少し早めに終了になって、日本での勤務開始予定まで余裕があったため、「今どこか外科医のポジションが空いているプロジェクトはないか」と問い合わせたところ、「ミユキはフランス語は全然話せないんだっけ?(英語ではなく)フランス語のプロジェクトならいくつかある」と言われ、悔しい思いをしていました。

「今年から少しずつフランス語も勉強しよう!!」と心に決めていたところ、MSFからパリでのフランス語研修という素晴らしい機会を頂きました。2ヵ月間の研修で基礎的なフランス語を勉強し、あとは実践!!ということで、帰国して約1週間後に出発予定のフランス語圏の活動の打診があり、喜んでお受けしました。

これまでの英語での活動経験が考慮され、フランス語が多少不自由でも外科医としての業務はなんとか務まるだろう、と、いう人事だったかもしれません。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

とにかくフランス語の練習(笑)。医学用語や病院での簡単な会話を想定して少しでも準備をしようとしていました。以前、MSFの活動で知り合ったフランスの仲間たちにも協力してもらいました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

外科業務に関しては、これまでの経験からMSFの治療方法やプロトコルをしっかり理解していたので、フランス語が完全に聞き取れなくても相手の話している内容は想像でき、何とか対応することができました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
同僚のスタッフとともに 同僚のスタッフとともに

コンゴ民主共和国のルチュルという町の総合病院での勤務でした。MSFは、外科では一般外科・整形外科と熱傷病棟、集中治療室を合わせて約100床程度を受け持っていました。

その他に産科病棟(分娩前後、帝王切開後の妊産婦の診療)、小児科病棟があり、病院内はいつも子ども連れのママたちでごった返していました。みんな、初めて見る日本人に興味津々でしたが、「ジャンボ!(※)」の一言で満面の笑顔になってくれました。子どもたちはピュアで人なつこく、手を振ってあげると数十人が集まってきて夢中でこちらに手を振り返してくれたのが印象的でした。

  • スワヒリ語で「こんにちは」の意。

海外派遣スタッフはプロジェクト・コーディネーター、外科医2人、麻酔看護師1人、内科・小児科医1人、病院看護師1人、ロジスティシャン5人程度でした。

ルチュルの病院 ルチュルの病院

コンゴ人スタッフはみんな、ルチュル出身者ではなく都市部から来ている人たちで、医療チームリーダー1人、外科医2人、ICU(集中治療室)医師1人、ほか数人が海外派遣スタッフに近い勤務形態をとっており、同じ宿舎で生活していました。

外科医は現地医師を含めて4人おり、整形と一般外科の区別なく4人がローテーションを組んで勤務していました。1日に約15~20件の手術があり、その他に緊急手術の対応をする毎日でした。5週間で100件以上の手術をしました。症例としては交通事故と熱傷が多く、傷に対する包帯交換が手術の大半を占めていました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
三線とギターでセッション 三線とギターでセッション

初日は朝7時30分からミーティング、8時頃病院に到着して病棟回診。午後は手術室勤務。2日目は朝から手術室勤務。3日目は当直(午後5時~翌朝8時)。4日目の当直明けは、ミーティング以外は休み、というスケジュールでした。決まったタイミングで休めるので、精神的・体力的にも余裕を持つことができました。

週末や当直明け休みの日はほとんど寝て過ごし、たまに宿舎の近くにお散歩にでかけたりしました。

週末は海外派遣スタッフの誰かがオーブンでパンを焼いたり、バーベキューをしたりしました。いつも通り三線を持っていったので弾き語りをし、ちょうどもう1人ギターを弾くスタッフがいたのでセッションを楽しみました。

Q現地での住居環境についておしえてください。
海外派遣スタッフの仲間と夕食 海外派遣スタッフの仲間と夕食

住居は、「森の中のキャンプ」という表現がぴったりの場所でした。バンガローのような3畳ほどの小さな部屋に蚊帳付きのベッドと机が与えられていました。ドアの下には猫が通れる位の隙間があり、いつもヤモリ(体長5~30cm位でやたらカラフル!)やゴキブリ(なぜか朝になるとひっくり返って死んでいる)が毎日お部屋を訪問しに来ていました。

トイレは洋式便座があり、バケツの水を桶で流す手動水洗タイプでした。「シャワー」と呼ばれる部屋には床に排水溝があるだけでもちろんシャワーはなく(笑)、バケツにお湯と水を混ぜて持っていき、手桶で浴びるスタイルでした。水の有難さをひしひしと感じました。

食事は現地の調理スタッフが作ってくれました。食べ物に無頓着な私はこれまでの活動でもいつもおいしく頂いています。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

<良かったこと>
フランス語での意思疎通がどれだけ出来るかかなり不安でしたが、みんなスタッフが良い人たちで、ゆっくり分かりやすく話してくれたり、分からないと説明を付け加えたりしてくれたので、ほとんど困らずに活動することができました。とにかく陽気で気さくなスタッフに囲まれ、楽しい5週間でした。

<大変だったこと>
とにかく手術件数が多く、予定手術を午後5時までに終わらせられたのはほんの数日だけでした。当直医が予定手術の残りと緊急手術をこなし、終わるのが午前2~3時ということもよくありました。

また夜間はチームが1つしかなく、帝王切開が入るとそれが終わるまで次の緊急手術ができないという状態で、状態の悪い患者さんを待たせることもあり、フラストレーションがたまりました。

宿舎でのコミュニケーションは、病院での会話と違って多種多様で、しかもほぼ全員フランス人(ネイティブスピーカー)なので話すのが早く、会話が理解できずに苦労することもありました。それでも数人は英語で話しかけてくれたり、通訳をしてくれたりしたので助かりました。

Q今後の展望は?

少し休んでから、2つ目のフランス語圏での活動として中央アフリカ共和国に行く予定です。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

ルチュルでは、陽気なスタッフたちと、かわいい子どもたちの笑顔に癒されました。現場でぜひ、体験してください。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2014年4月~2014年6月
  • 派遣国:パキスタン
  • 活動地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2013年6月~2013年10月
  • 派遣国:アフガニスタン
  • 活動地域:クンドゥーズ
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2013年4月~2013年6月
  • 派遣国:パキスタン
  • 活動地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年8月~2012年9月
  • 派遣国:パキスタン
  • 活動地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年6月~2012年7月
  • 派遣国:パキスタン
  • 活動地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年4月~2012年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • 活動地域:ポートハーコート
  • ポジション:外科医

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