病院がない、物資がない…紛争地で求められる医療 日本人外科医も活動

2019年06月14日掲載

イエメンのアル・サラカナ病院で患者の治療にあたるMSFの医療スタッフ。左は日本から派遣した滝上隆一外科医イエメンのアル・サラカナ病院で患者の治療にあたるMSFの医療スタッフ。左は日本から派遣した滝上隆一外科医

すでに4年も紛争が続いている中東イエメン。今も戦闘や空爆が起きているホデイダのアル・サラカナ病院で、国境なき医師団(MSF)は紛争による負傷者や交通事故の被害者、緊急手術が必要な妊婦などを受け入れ、治療をしている。 

停戦合意後も続く戦闘

ホデイダからサナアへと続く道路で、車に乗り合わせる市民 © Agnes Varraine-Leca/MSFホデイダからサナアへと続く道路で、車に乗り合わせる市民 © Agnes Varraine-Leca/MSF

今から1年前の2018年6月13日、ホデイダでは暫定政権の支持派と反政府勢力「アンサール・アッラー」の戦闘が起こり、約3ヵ月にわたる攻防が続いた。2018年8月、MSFはモカに外科病院を開設し、ホデイダとタイズの前線で負傷した人びとや、合併症で緊急手術が必要な妊婦を受け入れ、治療を開始。9月には、ホデイダの北東にあるアル・サラカナ病院でも活動をはじめ、救急処置室と手術室を整備して患者受け入れの体制を整えた。 

ホデイダの町の入り口はコンテナで封鎖されている © Agnes Varraine-Leca/MSFホデイダの町の入り口はコンテナで封鎖されている © Agnes Varraine-Leca/MSF

2018年12月半ばには停戦が合意され、ホデイダ周辺は武装解除されてアンサール・アッラーも引き上げた。停戦前と比べれば空爆も激減しているものの、合意以降も、特に夜間には戦闘が起こっており、MSFチームは対応を続けている。 

ホデイダ市の北東にあるアル・サラカナ病院 © Agnes Varraine-Leca/MSFホデイダ市の北東にあるアル・サラカナ病院 © Agnes Varraine-Leca/MSF

足りない医療

骨髄炎の患者の手術をする滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF骨髄炎の患者の手術をする滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF

ホデイダ市内で機能している公立病院は3つしかない。アル・サラカナ病院はその1つで、MSFは重症例の患者を中心に治療をしている。自宅の屋根から落ちて負傷した子どもや、交通事故の患者、紛争の爆撃や空爆で負傷した患者など、症例はさまざまだ。 

回診で患者の様子を見る滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF回診で患者の様子を見る滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF

18歳のモハメドさんは、道端に座っていたところ、流れ弾に当たって負傷した。銃弾はモハメドさんのお尻から入り腹部にまで達していた。手術を担当した滝上隆一医師は、「病院に運ばれてきたとき、彼は必死に笑顔を作っていましたが、状態はよくありませんでした」と語る。「弾丸は背中側から入って、下大静脈を一部損傷して、脊椎のすぐ側にきていました。慎重に弾丸を取り出し、幸いにも脊椎自体に大きな損傷はありませんでした。術後はリハビリに熱心に取り組んで、1週間ほどで元気に退院できました」 

モハメドさんの手術に臨む滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSFモハメドさんの手術に臨む滝上外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF

「ホデイダの状況は悪化してきており、市外で起きていた戦闘が、市内でも起こっています。夜間には銃撃の音が聞こえ、モハメドさんのような負傷者も出ています」

イエメンの状況とMSFの活動はこちら⇒イエメン:紛争で壊滅した医療体制 コレラの流行なども深刻【情報まとめ】
 

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