ガザでスタッフら10人死傷も捜査せず「終結」…国境なき医師団、イスラエル軍の決定を強く非難

2026年08月21日
© Frederic Seguin/MSF
© Frederic Seguin/MSF

パレスチナ・ガザ地区で国境なき医師団(MSF)スタッフら計10人が死傷した攻撃を巡り、MSFは、イスラエル軍法務総監(MAG)が刑事捜査せずに事案を打ち切ったことを強く非難する。

対象となったのは、2023年11月にガザ市でMSFの車列が繰り返し攻撃されて2人が死亡した事案と、2024年2月に南部ハンユニスにあるMSFの避難施設が攻撃され、2人が死亡、6人が負傷した事案だ。いずれも、MSFがイスラエル側に調査を求めて申し立てていた。

2年の沈黙の末、刑事捜査もせず「終結」

残念ながら、これは驚くべきことではない。イスラエル側は申し立てから2年近くたった後、刑事捜査に着手しないことを決めた。MSFはその間、正式な要請に一切回答しないMAGの不作為を争うため、イスラエル最高裁判所に申し立てをしていた。

今回示されたのは、正義ではない。2年の沈黙の末、新たな疑問を生む形で事案が打ち切られたことは承服できない。

しかし、軍が自らの行為を調べる現在の仕組みでは、こうした結果になることは予想できた。ガザでは、戦争犯罪に当たる可能性のある行為がいくつも報告されている。これらに対し、イスラエル軍は対応する意思を示していない。

死亡したのはMSFのスタッフとその家族だ。氏名は知られており、誰がどこにいるかはイスラエル軍側にも共有されていた。車両もMSFのものだと識別できる状態だった。これらの攻撃で人命が失われた責任が明確にイスラエル軍にあることを示す、あらゆる要素がそろっていると、MSFは一貫して主張してきた。

しかし、彼らの死に責任を負うべきイスラエル軍自身が、刑事捜査をしないと決めたのである。

ガザで続く殺害、問われない責任

MAGはこの決定によって、MSFスタッフの殺害について、イスラエルの法制度の中で責任が問われる見込みはないことを明白に示した。イスラエルがパレスチナ人に対して続けているジェノサイド(集団殺害)について、誰も責任を問われていないのと同じ構図だ。

紛争が激化した2023年10月以降、ガザではMSFスタッフ15人がイスラエル軍に殺害された。同じ期間に殺害された医療従事者は1700人に上り、MSFスタッフの犠牲はその一部にすぎない。MAGの今回の決定は、イスラエル軍が今も処罰されることなく市民を殺害し続けている現実を、改めて浮き彫りにしている。

また、今回の「終結」決定は、ガザ全体で起きていることと切り離して考えられない。

ガザでは数万人のパレスチナ人が殺害され、医療施設が破壊され、人道援助の車列も攻撃されてきた。ジャーナリスト、医療従事者、国連職員、人道援助スタッフも、近年の紛争では例を見ない規模で命を奪われている。そうした状況の中で、今回の事案も「終結」となったのだ。

命を奪われた人びとへ

この暴力が始まって以来、MSFは繰り返し訴えてきた。これほど多くの民間人の犠牲を正当化できる軍事目標は、存在しない。そして、軍の内部調査は、真に独立かつ公平な形での責任追及の代わりにはなり得ない。

MSFは、スタッフらが死傷した事案を公正な調査機関が改めて検証するよう求める。

命を奪われた仲間たちへ。そして、ガザで亡くなった数え切れないほどの民間人と人道援助スタッフへ。
 
私たちは、あなたたちの死が、単なる手続き上の帰結として片づけられてしまうことを許さない。
 
あなたたちは守られるべき存在だった。あなたたちに正義を。

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