「パレスチナ最大の保健医療課題は、イスラエルによる占領」──国境なき医師団インターナショナル会長
2026年07月27日
ガザでのジェノサイドが1000日を超え、イスラエルによる停戦違反が続く中、アブデルモネイムは、イスラエルによるジェノサイドの継続を許容してきた世界の指導者たちの責任について問いかけるとともに、抜本的な政策転換を呼びかける。
パレスチナの保健医療課題に関する訴え全文
MSFインターナショナル会長 ジャビド・アブデルモネイム
損なわれる尊厳ある暮らし
2023年10月7日以降、イスラエルがパレスチナの人びとに及ぼしてきた影響は、パレスチナ全域で明らかになっています。
人びとが尊厳を持って健康に暮らすための条件は大きく損なわれてきました。こうした現実を、私たちははっきりと認識しなければなりません。
ガザ地区で行われている政策と、ヨルダン川西岸地区で進行している状況は、占領を通じてパレスチナの植民地化を進めるという、イスラエルのより大きな計画の存在を示しています。
イスラエルによるガザでのジェノサイドが始まってから、すでに1000日以上が経過しました。パレスチナの人びとに対する集団的懲罰は、今も続いています。
「停戦」と呼ばれる状況下にあっても、テントの中で、病院で、そして路上で——。パレスチナの人びとが日々傷つけられ、命を奪われる現実を、世界はいつしか当たり前のものとして受け入れてしまっています。
名ばかりの「停戦」
「停戦」という言葉は、もはやその意味を失っています。私がこの文章を書いている今も犠牲者の数は増え続けており、ガザ地区の壊滅的な状況に対する無関心もまた広がっています。それは、この数十年において世界が犯した最も深刻な政治的失敗の一つと言えるでしょう。
停戦以降の死傷者数
イスラエルが設ける「イエローライン」は、ガザをパレスチナ側とイスラエル支配地域に分断する境界線です。イスラエル支配地域は絶えず拡大しており、避難先へ戻ろうとする人やまきを集める人、食料を探す人などは、ただ近づいただけで銃撃される危険にさらされています。
過密化と広がる感染症
その影響は、MSFの診療所でも見られます。清潔な水や衛生設備の不足、そして非人道的な生活環境によって、呼吸器感染症や皮膚疾患、下痢性疾患が広がっています。
ヨルダン川西岸地区——もう一つの危機
ヨルダン川西岸地区もまた、2023年10月7日以降、暴力の影響を受け大きく姿を変えています。イスラエル政府や軍、政府の支援を受けた入植者によって、民族浄化や土地の収奪、領土の分断、経済的な締め付けが加速し、パレスチナの人びとの暮らしと地域社会のつながりはさらに脅かされています。
パレスチナ人は、自宅や学校、そして自らの土地で狙われ、命を脅かされ続ける一方、加害者は責任を問われることなく行動しています。
ナブルスやヘブロンで、私たちは暴力の激化や移動制限によって心的外傷やうつ症状に苦しむ患者を診療しています。こうした移動制限は、病院へのアクセスを含め、人びとの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしています。
医療への攻撃
イスラエルはヨルダン川西岸地区で医療へのアクセスを組織的に妨害し続ける一方、ガザ地区では保健医療システムを意図的に破壊してきました。
医療従事者や患者、救急車、病院までもが攻撃の対象となってきました。
ムハンマド・オベイド医師の拘束
オベイド医師は正当な理由もないまま拘束され、今もイスラエルの刑務所に収監されています。MSFは、同医師の即時かつ無条件の釈放を求め続けています。MSFは、同医師の即時かつ無条件の釈放を求め続けています。
1700人の医療従事者が殺害
2023年10月以降、少なくとも1700人の医療従事者が殺害されました。そのなかには、MSFのスタッフ15人も含まれており、多くが何十年にもわたって懸命に活動してきた人びとでした。
ガザに安全な場所はありません。
妨げられる人道援助
イスラエルは、MSFを含む人道援助団体によるガザ地区やヨルダン川西岸地区への国際スタッフの派遣や、不可欠な医療資材・援助物資の搬入を妨げています。ガザには一部の援助物資が搬入されているものの、必要な量には遠く及びません。
こうした一方的な制限は、イスラエルが長年にわたり実施してきた懲罰的な政策の一環です。
課題の核心にあるもの
直接的な暴力、保健医療システムの破壊、人道援助の妨害、飢餓の引き起こし、水の武器化、早産や乳児死亡、流産の増加、そして必要な医療の剥奪——。
そのどれを見ても、私の目には明らかです。
パレスチナの健康と医療における最大の課題は、イスラエルによる占領です。
求められる抜本的な政策転換
この状況は、もはや耐え難いというだけではありません。すでに固定化され、深く根付いてしまっています。ガザ地区ではジェノサイドが続き、ヨルダン川西岸地区では民族浄化が加速しています。
今、緊急に求められているのは、政策の抜本的な転換です。
パレスチナの人びとの尊厳を最優先し、民間人を保護すること。さらに、人道援助への妨げのないアクセスを確保し、すべての政府が責任ある行動を取ることが不可欠です。
そのような転換がなければ、次の1000日が転機となることはなく、同じ破壊的な現実が続くだけでしょう。




