新年のごあいさつを申し上げます
2026年01月01日
旧年中は、国境なき医師団(MSF)の活動に温かいご支援を賜り、誠にありがとうございました。
2025年は、世界で多くの人道危機が同時に、そして長期化する形で続きました。
パレスチナ・ガザ地区やウクライナでは、いまなお終わりが見えない紛争が人びとの生活と医療を破壊し続けています。スーダンでは内戦の暴力がさらに激化し、多くの市民が医療に安全にアクセスできない状況に追い込まれました。複数の危機が重なり合うことで支援が追いつかず、救えたはずの命が失われる現実が各地で起きています。
ガザ地区では10月、紛争の激化から2年を迎えました。
MSFは9月から世界各地で、「#医師にジェノサイドは止められない #止められるのは世界の指導者だけだ」というスローガンを掲げ、イスラエル軍によるジェノサイド(集団殺害)を止めるよう各国政府に訴えました。
医療の現場では、命を救うことはできても、暴力そのものを止めることはできません。だからこそ、政治的な決断と国際社会の責任が強く問われています。
現地では10月から停戦の第一段階が続いていますが、人びとの暮らしと医療体制はいまも深刻な影響を受けています。MSF日本では、ガザからの医療搬送の拡大を求めるオンライン署名活動に取り組み、皆さまから3万2704筆の声を寄せていただきました。
MSF日本会長の中嶋優子は9月、ヨルダンの首都アンマンにあるMSF再建外科病院を訪れ、ガザから搬送された患者さんたちが置かれている厳しい現実を目の当たりにしました。停戦合意があってもなお、命を守るための支援を切実に必要としているガザの状況を痛感しました。
一方、表面的に「戦闘の終結」が語られるようになっても、苦しみは終わっていない国・地域があります。
シリアでは内戦の終結から1年が経過しましたが、多くの人びとがいまも医療や生活の基盤を失ったまま取り残されています。
MSF日本事務局長の村田慎二郎が8月、いまだに復興が始まらない現地を訪れて人びとの声に耳を傾けました。戦闘が終わった後も、人道援助が必要とされる現実がそこにはありました。
こうした人道危機に追い打ちをかけているのが、国際援助の削減です。
2025年は前年に引き続き、米国政府による国際援助資金の大幅な削減をきっかけとして、世界のグローバルヘルスと人道援助を支えてきた枠組みが揺らぐ年となりました。さらに欧州諸国でも援助削減の動きが相次ぎ、支援の体制そのものが弱体化しています。
MSFは米国政府から資金提供を受けていないので直接の影響は受けていません。しかし、現場では他の援助機関の撤退・縮小による支援の空白が広がり、ニーズが最も高い場所ほど援助が届きにくくなるという深刻な矛盾が生じています。
このような厳しい状況でも、MSFが活動を続けられるのは皆さまのご支援があるからにほかなりません。日本の皆さま一人一人の行動とご意志が、現場で人びとの命をつなぐ力になっています。
2026年も、MSFは医療と人道援助を必要とする人びとのそばに立ち続けます。本年も、MSF日本の活動へのご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。
国境なき医師団日本
会長 中嶋優子
事務局長 村田慎二郎




