プレスリリース
チャドに逃れたスーダン難民の状況が深刻化──栄養失調でも食料や水は不足
2025年06月04日
内戦が続くスーダンから隣国チャドに逃れてきた難民の人道状況が深刻だ。スーダン・北ダルフール州における攻撃と暴力の激化を受け、4月末から推定4万人の人びとが国境を越えてチャド東部のワジ・フィラ州ティネに逃れたが、現地では40度近い気温のもと、栄養失調に陥った人びとが水も食料も足りない過密状態のキャンプで過ごしている。
国境なき医師団(MSF)は、ティネの一時滞在キャンプと近隣の難民キャンプで、新たに到着したスーダン難民への援助を拡大している。MSFは、生活環境のさらなる悪化が懸念される雨期を前に、国際社会へ援助の拡大を求める。
国境なき医師団(MSF)は、ティネの一時滞在キャンプと近隣の難民キャンプで、新たに到着したスーダン難民への援助を拡大している。MSFは、生活環境のさらなる悪化が懸念される雨期を前に、国際社会へ援助の拡大を求める。
飢きん状態が続く地域からの難民
逃れてきた人びとの中には、栄養失調に陥っている人や、北ダルフールや避難の道中で受けた暴力で心の傷を負った人が少なくない。
難民の多くは、北ダルフール州の州都エル・ファシールとザムザム・キャンプから逃れた女性と子どもだ。これらの地域は準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」に包囲され、人びとは飢餓に直面している。IPC飢きん評価委員会によると、ザムザム・キャンプでは昨年から飢きん状態が続いているという。
20歳の難民の女性はこう語る。
難民の多くは、北ダルフール州の州都エル・ファシールとザムザム・キャンプから逃れた女性と子どもだ。これらの地域は準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」に包囲され、人びとは飢餓に直面している。IPC飢きん評価委員会によると、ザムザム・キャンプでは昨年から飢きん状態が続いているという。
20歳の難民の女性はこう語る。
ここまで長い道のりを歩いてきました。暴力や爆撃から逃れるために、いくつもの村を通ってティネに着きました。ここに来て何日か経ちますが、食料と水を見つけることすら難しく、服は何日も着替えていません。
ティネの一時滞在キャンプには現在1万8000人を超える人びとが過ごしている。多くの人は40度の暑さの中、敷物もなく地べたで寝泊まりしている。受け入れ地域からの支えがあるものの、避難所はなく、水や食料もごくわずかしかない。

予防接種や栄養支援、給水を実施
MSFは、より多くの人が基礎医療を受けられるよう、一時滞在キャンプと国境での医療・人道援助活動を拡大している。
国境での栄養スクリーニング検査や予防接種に加え、この数週間、一時滞在キャンプの簡易診療所で週900件超の診療を行った。簡易診療所では5歳未満の子どもの栄養失調の割合が29%にも上り、9%が重度の栄養失調に陥っている。MSFは簡易診療所で、妊娠中の女性と性暴力の被害者のケアも行っている。
はしかの症例が確認されたため、キャンプでは定期予防接種を引き続き優先事項とするとともに、集団予防接種も進行中だ。
MSFはまた、重症患者を病院へ搬送する体制を整備し、さらに50基の緊急トイレを建設する予定だ。栄養治療食や生活必需品のさらなる配布も準備している。現在MSFは1日あたり6万リットルの給水活動も行っているが、これは必要とされている量の半分にすぎない。
ティネの一時滞在キャンプから難民が移動するイリディミ・キャンプでも活動を開始した。すでに受け入れ能力を超えているキャンプの状況を改善すべく、基礎医療の継続、予防接種などに取り組んでいる。他にもビラクなどスーダンとの国境沿いの地域や、スーダン・ダルフールのクルブスでも移動診療を行っている。
国境での栄養スクリーニング検査や予防接種に加え、この数週間、一時滞在キャンプの簡易診療所で週900件超の診療を行った。簡易診療所では5歳未満の子どもの栄養失調の割合が29%にも上り、9%が重度の栄養失調に陥っている。MSFは簡易診療所で、妊娠中の女性と性暴力の被害者のケアも行っている。
はしかの症例が確認されたため、キャンプでは定期予防接種を引き続き優先事項とするとともに、集団予防接種も進行中だ。
MSFはまた、重症患者を病院へ搬送する体制を整備し、さらに50基の緊急トイレを建設する予定だ。栄養治療食や生活必需品のさらなる配布も準備している。現在MSFは1日あたり6万リットルの給水活動も行っているが、これは必要とされている量の半分にすぎない。
ティネの一時滞在キャンプから難民が移動するイリディミ・キャンプでも活動を開始した。すでに受け入れ能力を超えているキャンプの状況を改善すべく、基礎医療の継続、予防接種などに取り組んでいる。他にもビラクなどスーダンとの国境沿いの地域や、スーダン・ダルフールのクルブスでも移動診療を行っている。
国際社会は援助の拡大を
MSFのスーダン緊急対応コーディネーター、クレア・サン・フィリポはこう訴える。
「スーダン難民は疲れ果て、すぐに助けが必要な状態でたどり着いています。彼らの多くが栄養失調です。私たちは、資金拠出機関や援助国、国連、人道援助団体に対し、食料や避難所、衛生設備、そして心のケアを含めた医療における、援助の拡充を求めます。現在の対応はニーズに追いついていません」
「スーダン難民は疲れ果て、すぐに助けが必要な状態でたどり着いています。彼らの多くが栄養失調です。私たちは、資金拠出機関や援助国、国連、人道援助団体に対し、食料や避難所、衛生設備、そして心のケアを含めた医療における、援助の拡充を求めます。現在の対応はニーズに追いついていません」
間近に迫る雨期に入れば生活環境はますます悪くなり、病気が広がるリスクが高まり、食料難と衛生環境の悪さに拍車がかかると予想されます。
MSFスーダン緊急対応コーディネーター クレア・サン・フィリポ
ティネ一時滞在キャンプやワジ・フィラにある他の難民キャンプでは、膨大なニーズが存在している。地元の人びとや草の根団体が難民に連帯して対応しているが、援助はごく限られている。人道セクター全体に影響を及ぼしている財政危機は、チャド東部にもはっきりと表れている。スーダンでは紛争が続いており、より多くの人びとがチャドへの避難を望んでいる。
チャドは、2年余り前にスーダンで内戦が始まってから逃れてきた80万人超のスーダン人をはじめ、既に100万人を超える難民を受け入れている。今年4月以降新たに7万人を超える難民がチャドに到着し、チャドとスーダンの国境における人道状況は再び限界に達している。援助の拡大が急務だ。