プレスリリース
南スーダン:医療体制の限界と援助の削減──危機の中で取り残される人びと
2025年12月18日
南スーダンでは人道状況が極めて悪化しているが、国際的な関心と援助は低下し続けている──。国境なき医師団(MSF)は南スーダンの人びとが置かれた状況を伝える報告書『危機の中で取り残される:南スーダンにおける暴力の激化と医療の崩壊』(英文:Left behind in crisis: Escalating violence and healthcare collapse in South Sudan)を発表し、国際社会は医療・人道援助への責務を確実に果たす必要があると訴える。
暴力の激化と医療への攻撃
この報告書は、MSFが活動する地域の患者、世話人、地域住民、医療スタッフからの証言と日々の医療データをもとに、医療と人道対応の停滞がもたらす影響を伝えている。
南スーダンで現地活動責任者を務める医師のシグリッド・ランバーグはこう話す。
「南スーダンの医療体制は限界に達しています。私たちはあらゆる場所で、医療サービスが著しく不足している現状を目の当たりにしました。多くの医療施設が機能しておらず、機能していても人材や医薬品の深刻な不足に陥っているのです。その結果、予防や治療可能な病気で多くの命が奪われています」
今年4月から10月まで南スーダンで副活動責任者を務めた落合厚彦はこう付け加える。
「実際、MSFが支援していた北西部のアウェイルでは、保健省の診療所で働くスタッフの給与が長い間払われておらず、また医療用手袋がなかったり医薬品も在庫切れを起こしたり、有効に患者を診ることができなくなっていました」
南スーダンでは今年、政府軍と反政府勢力、非国家武装集団の間の戦闘が激化。2018年の和平合意以来、最も緊張が高まっている。暴力の激化や医療施設への攻撃などにより、医療と人道援助が必要な人びとに届いていない。国連によると、1月以降32万人以上が避難を余儀なくされ、殺害された人は2000人に上る。上ナイル州の州都マラカルでは、今年4月から11月にかけて、MSFは女性や子どもを含む141人の外傷患者を治療した。
今年は、あらゆる紛争当事者による医療施設への攻撃が急増した。これは、国際人道法に明確に違反する行為だ。MSFだけでも、中央エクアトリア州、ジョングレイ州、上ナイル州で、医療施設とスタッフに対する8件の標的型攻撃を受け、上ナイル州ウランとジョングレイ州オールド・ファンガクの2つの病院の閉鎖を余儀なくされた。ジョングレイ州では12月3日、ピエリでMSFの施設が空爆を受け、同じくMSFが医療施設を運営するランキエンでも空爆が目撃された。
南スーダンで現地活動責任者を務める医師のシグリッド・ランバーグはこう話す。
「南スーダンの医療体制は限界に達しています。私たちはあらゆる場所で、医療サービスが著しく不足している現状を目の当たりにしました。多くの医療施設が機能しておらず、機能していても人材や医薬品の深刻な不足に陥っているのです。その結果、予防や治療可能な病気で多くの命が奪われています」
今年4月から10月まで南スーダンで副活動責任者を務めた落合厚彦はこう付け加える。
「実際、MSFが支援していた北西部のアウェイルでは、保健省の診療所で働くスタッフの給与が長い間払われておらず、また医療用手袋がなかったり医薬品も在庫切れを起こしたり、有効に患者を診ることができなくなっていました」
南スーダンでは今年、政府軍と反政府勢力、非国家武装集団の間の戦闘が激化。2018年の和平合意以来、最も緊張が高まっている。暴力の激化や医療施設への攻撃などにより、医療と人道援助が必要な人びとに届いていない。国連によると、1月以降32万人以上が避難を余儀なくされ、殺害された人は2000人に上る。上ナイル州の州都マラカルでは、今年4月から11月にかけて、MSFは女性や子どもを含む141人の外傷患者を治療した。
今年は、あらゆる紛争当事者による医療施設への攻撃が急増した。これは、国際人道法に明確に違反する行為だ。MSFだけでも、中央エクアトリア州、ジョングレイ州、上ナイル州で、医療施設とスタッフに対する8件の標的型攻撃を受け、上ナイル州ウランとジョングレイ州オールド・ファンガクの2つの病院の閉鎖を余儀なくされた。ジョングレイ州では12月3日、ピエリでMSFの施設が空爆を受け、同じくMSFが医療施設を運営するランキエンでも空爆が目撃された。
国際援助の減少が深刻化
南スーダンの人びとは、紛争、大規模な避難、洪水、栄養失調、感染症の流行など、複数の危機が重なり合う状況に直面している。人びとの生活状況が悪化し、生きるために必要なサービスをますます受けづらくなっているにもかかわらず、国際援助は2025年も減少を続けた。
南スーダンでは、政府が世界保健機関(WHO)やユニセフなどとともに進める「保健セクター変革プロジェクト(HSTP)」が医療提供の大きな面を担っている。2024年7月に始まったこのプロジェクトは、当初10の州と3つの行政区域で1158の医療施設を支援することを目指していたが、資金面の制約から、現在支援しているのは816施設にとどまっている。支援を受けている施設も、依然として医薬品やスタッフの不足に直面している状況だ。
病気になった子どもの世話にあたっていた女性はMSFにこう語った。
「1時間かけてケルデンからトチに来ました。ケルデンには小さな医療施設がありますが、すべての薬が揃っているわけではなく、すぐになくなってしまうこともります。私は子どもを診療所に連れて行きましたが、薬はありませんでした」
マラリアは特に深刻な課題で、南スーダンでは女性と子どもの主な死因の一つだ。その状況にもかかわらず、2025年は前年に続き、マラリアが最も流行する時期に治療薬が全国的に品切れとなった。マラリアは迅速に治療ができなければ、死につながるリスクがある。2025年1月から9月の間に、MSFは入院が必要な重度のマラリア患者6680人を治療した。
南スーダンでは、政府が世界保健機関(WHO)やユニセフなどとともに進める「保健セクター変革プロジェクト(HSTP)」が医療提供の大きな面を担っている。2024年7月に始まったこのプロジェクトは、当初10の州と3つの行政区域で1158の医療施設を支援することを目指していたが、資金面の制約から、現在支援しているのは816施設にとどまっている。支援を受けている施設も、依然として医薬品やスタッフの不足に直面している状況だ。
病気になった子どもの世話にあたっていた女性はMSFにこう語った。
「1時間かけてケルデンからトチに来ました。ケルデンには小さな医療施設がありますが、すべての薬が揃っているわけではなく、すぐになくなってしまうこともります。私は子どもを診療所に連れて行きましたが、薬はありませんでした」
マラリアは特に深刻な課題で、南スーダンでは女性と子どもの主な死因の一つだ。その状況にもかかわらず、2025年は前年に続き、マラリアが最も流行する時期に治療薬が全国的に品切れとなった。マラリアは迅速に治療ができなければ、死につながるリスクがある。2025年1月から9月の間に、MSFは入院が必要な重度のマラリア患者6680人を治療した。
国際社会は今すぐ行動を
南スーダンは、長年にわたって世界で最も深刻な医療・人道ニーズに直面してきた国の一つだ。現在の状況は著しく悪化しており、緊急の行動が求められている。国際社会は医療・人道援助への責務を確実に果たすとともに、既存プログラムの課題を速やかに是正しなければならない。
中でも最低限必要なのは、必要不可欠な医薬品、物資、医療従事者の給与を迅速かつ確実に届けることだ。また、暴力が激化する中、人道アクセス、市民の保護、医療施設の尊重が保証されなければならない。
南スーダンでは現在、国家予算の1.3%しか保健医療に割り当てられていない。 MSFは南スーダン政府に対し、保健分野に15%を割り当てるというアブジャ宣言の公約に沿って、国家の保健予算を引き上げるよう要請する。
ランバーグはこう訴える。
南スーダンの状況は壊滅的です。国際社会には、協調した行動、新たなコミットメント、そして真の国際連帯が求められています。世界はこれ以上目を背け続けてはなりません。今こそ行動を起こす時です。




