学ぶことは、だれかを助ける力になる! 国境なき医師団の学校「MSFアカデミー」のひみつ【MSF Club:世界の課題や現状を知ろう!「医療教育」編】
2026年03月04日
それでも、そこで働く国境なき医師団(MSF)の現地スタッフ(※)は、「人びとの命を守りたい!」という強い気持ちを持って、いそがしい中でも学ぶ時間を見つけ、勉強を続けています。MSFはそんな現地スタッフが成長できるように、学びの場「MSFアカデミー」を提供してサポートしています。
- ※現地スタッフ:MSFがその国で雇(やと)っているスタッフのこと。MSFでは、海外派遣スタッフ(日本をはじめ、ほかの国から派遣【はけん】されて来るスタッフ)と、現地スタッフ(その土地に住んでいる人をMSFが雇うスタッフ)が協力して活動しています。
学び続けることは、専門的な知識を深めるだけでなく、患者さんにより良いケアを届けるために、とても大事なことなんだ! でも、普段の病院での仕事もいそがしいのに、どうしてもっとがんばることができるのかな? MSFアカデミーで学んだスタッフ3人に話を聞いてみたよ!
MSFアカデミーに参加したスタッフの体験談
MSFアカデミー:スタッフ体験談①
キンベレ・キスバ(医師/コンゴ民主共和国)
自分の責任を果たしたい
プログラムを受けていた当時、私が暮らすコンゴ民主共和国の北キブ州マシシは治安がとても不安定でした。戦闘(せんとう)から逃れるために、病院に避難(ひなん)しなければならない日もあったほどです。それでも、私は決してあきらめませんでした。
私を支えていたのは「責任感」でした。自分の仕事をしっかり果たしたいという思いがあったのです。
参加できなかった授業は資料をダウンロードして家で学習し、MSFアカデミーの静かな学習スペースもできる限り活用しました。外で銃声(じゅうせい)がしていても集中を保とうと努めました。同じ状況(じょうきょう)に置かれた仲間たちとの連帯感が、学び続ける私の大きな力となってくれたのです。
仲間からのはげましが前進する力に
この出来事をグループで共有し、仲間たちからはげましの言葉をもらえたことで、なんとか前に進むことができました。
残念ですが、このような状況はめずらしいことではありません。これが私たちの日常なのです。
先生方はいつでも相談に乗ってくれ、必要に応じてセッションの予定を調整しながら、ていねいに教えてくれました。こうした支援と前向きに学べる環境のおかげで、私は無事にプログラムを修了することができました。
私がほかのスタッフに伝えたいのは、あきらめないこと、明確な目標を持つこと、そして自分を支えてくれる環境を整えることの大切さです。
- ※薬剤耐性:ばい菌(きん)が薬にたえて強くなり、薬が効きにくくなること。ふつうならすぐ治る病気が治りにくくなり、もっと強い薬が必要になることがあります。
MSFアカデミー:スタッフ体験談②
マリア・ローラ・チャコン・ロルダン(副医療コーディネーター/メキシコ)
医療を必要とする人びとにきちんと応えたい
私はMSFアカデミーの「医療人道リーダーシップ・大学院ディプロマ」プログラムに参加しました。
組織の中で新しい役割を任され、責任が大きくなるにつれて、私は「もっと良い仕事をしたい」と強く思うようになりました。このプログラムはとても実践的(じっせんてき)で、学んだことをすぐに現場で使えるところが良かったです。
専門的な技術はもちろん大切です。でも、私たちの仕事は、ケアを受ける人の人生に直接関わります。
だからこそ、人びとが本来受けるべき質の高いケアを届けられるように、そして、私たちを必要としている人びとにきちんと応えられるように、「正しい知識」を身につけたいと思ったのです。
このプログラムを受けている間、私はずっと「支えられている」と感じていました。私のチューター(勉強を助けてくれる先生役のスタッフ)は、たくさんの経験を持っていて、研修の内容だけでなく、仕事に関する質問にも親身に答えてくれました。
また、世界のさまざまな厳(きび)しい現場で働く参加者同士がつながり、学ぶ中でおたがいをはげまし合えたことも、大きな力になりました。
仕事がとてもいそがしく、さらに妊娠中(にんしんちゅう)で、赤ちゃんの世話もあって大変でしたが、それでも私を支えてくれたのは、「本当に多くのことを学べている」という実感でした。
私はずっと自分に言い聞かせていました。「大丈夫、私はできる」と。
大切なのは成績よりも、しっかり理解すること
私にとって大事だったのは、成績そのものではありません。内容をしっかり理解し、毎回の課題により良く取り組めるようになることでした。
祖母はよくこう言ってくれます。
「あなたは医師の勉強を始める前から、MSFで働きたいと思っていたでしょう。必要としてくれる人がいる場所に行きたいと願っていたのよ」と。
ふり返ってみると、MSFでの活動を通じて私が受け取ったものは、私が与えたものよりもはるかに大きかったと感じています。
MSFアカデミー:スタッフ体験談③
モハマド・ハジ・ヤコブ(医師・医療活動マネジャー/シリア )
母国の問題を解決したい
私はMSFアカデミーの「薬剤耐性学習プログラム」に参加しました。
2024年、このプログラムを受けている最中に、シリアで再び戦闘(せんとう)が起きました。飛行機や爆撃(ばくげき)の音を聞くたびに、これまでの内戦の記憶がよみがえり、勉強に集中するのはとても難しい状況でした。そのうえ、病院での仕事量も大きく増えていました。
それでも私は学び続けたいと思いました。薬剤耐性はシリアで大きな問題となっており、現場では専門知識がとても必要とされているからです。
夜は勉強にはげみ、時間を見つけてはオンライン教材の内容を学習し、必要なときはメンター(学び全体をサポートしてくれる人)に連絡して助けを求めました。メンターたちはとても熱意があり、時には夜遅くでも返信をくれました。
プログラムを修了したいという思いはありましたが、それ以上に、「医療の学びに終わりはない」と強く感じています。
医師としての技術を高めることは、患者さんにより良いケアを提供することにつながっているのですから。
重要なのは、学び続けること
医療品は十分ではありませんでしたが、お金がなくて医療を受けられない人びとを助けたいと思い、病院にとどまろうと決めたのです。
その経験があるからこそ、どれほど厳しい状況であっても、学び続けることが私にとってとても重要なものになっています。
MSFアカデミーを通じて、MSFはこれまでに1500人以上のスタッフに学習プログラムを提供してきたよ。参加しているスタッフは、病院で働きながら研修を受け、身につけた知識や技術を現場で役立てていくんだ。こうやって、患者さんのために、医療の質を向上させていくんだね!
MSF Club【キッズ・ユース向けコンテンツ】で、世界のいまと国境なき医師団の活動をもっと見てみよう!





現地スタッフはどんなふうに学んでいるのかな? 「MSFアカデミー」で看護(かんご)スタッフに向けて行っているプログラムの様子を紹介するよ!