11月10日はトイレの日:排泄物は宝の山!? アフリカ・チャドにある「うんち工場」ってなに?【MSF Club:世界の課題や現状を知ろう!「公衆衛生」編】

2025年11月10日
排泄物(はいせつぶつ)の処理施設(しょりしせつ)である「うんち工場」で、元気に育つバナナの木。「うんち工場」といったいどんな関係が!? © MSF
排泄物(はいせつぶつ)の処理施設(しょりしせつ)である「うんち工場」で、元気に育つバナナの木。「うんち工場」といったいどんな関係が!? © MSF

中央アフリカに位置する国チャド。その東部にはスーダンの内戦から逃れてきた人びと、約4万6000人が暮らすアブテンゲ難民キャンプがあります。

国境なき医師団(MSF)はここに排泄物(はいせつぶつ:うんちやおしっこ)の処理施設(しょりしせつ)、その名も「うんち工場」を建設しました!

しんぞー先生

スーダンでは長い間、紛争が続いていて、たくさんの人びとがとなりの国チャドに逃げてきているんだ。チャドで避難(ひなん)生活を送る人びとのために、MSFが作ったのが「うんち工場」。いったいどんなもの? まずは動画を見てみてね!

「うんち工場」は排泄物から資源を生み出す、エコな取り組みなんだね。
「うんち工場」のこと、もっと知りたくなってきた! ということで、キャンプで水と衛生(えいせい)の部門を担当するMSFスタッフ、シャルロット・マブさんにくわしく聞いてみたよ。

Q1:「うんち工場」の目的は?

A:排泄物にふくまれる、ばい菌や病気のもとをなくすこと!

下水処理(げすいしょり)施設のない場所で、トイレが排泄物でいっぱいになったら、次のどちらかの方法をとります。
1、 トイレを使えなくして閉じる 
2、 排泄物を取り出して、別の場所に捨てる

2の方法は、まずトイレの中の排泄物をくみ出し、次に地面に穴を掘ってその中に捨て、最後に石灰(せっかい)をかけてふたをして閉じる、という3つのステップがあります。

でも、これを行うと、排泄物が土や地下の水をよごしてしまうことがあります。そうなると、そこに住んでいる人びとの健康や自然に悪い影響が出る可能性があるのです。

「うんち工場」の施設内の様子 © Djann Jutzeler/MSF
「うんち工場」の施設内の様子 © Djann Jutzeler/MSF
この問題を解決するために作ったのが「うんち工場」。広さは約3600平方メートルもあります。でも、人が住んでいる場所からは離れているので、キャンプの生活のじゃまになることはありません。

この施設は、水をきれいにするふつうの浄水場(じょうすいじょう)とは違います。

「うんち工場」の目的は、排泄物にふくまれるばい菌(きん)や病気のもとをなくすこと。この作業は「衛生化(えいせいか)」と呼ばれていて、人や環境にとって安全な状態にすることができるんです。

3600平方メートルは、サッカー場の半分とほぼ同じ。
こんな大きな施設で、どのように排泄物を処理(しょり)しているのかな?

Q2:排泄物の処理はどのように行っているの?

A:水分と固形物に分けて、それぞれしっかりと処理します!

「うんち工場」の施設内を走るトラック © MSF
「うんち工場」の施設内を走るトラック © MSF
まずは、トイレから排泄物をくみ出すところからスタートします。

トラックが入れない場所、特に避難用住居がぎっしり建てられているところでは、持ち運びできる携帯型(けいたいがた)のポンプを使ってくみ出します。 

くみ出した排泄物は大きなタンクに集められ、そこに石灰という白い粉を加えます。量の目安は、排泄物5に対して石灰1の割合です。

その後、ポンプでぐるぐるとかき回し、石灰と排泄物をよく混ぜます。すると、pH(ピーエイチ)という数値が12まで上がります。

これはとてもアルカリ性が強い状態で、ばい菌や病気のもとが生きられない環境になります。

このまま2〜3日(48〜72時間)おくことで、しっかりと安全な状態にします。

処理した水分を吸って育つバナナの木 © MSF
処理した水分を吸って育つバナナの木 © MSF
この間に、水分は上の方に、固形物は下の方に、と自然に2つに分かれます。 
 
水分は別のタンクに移して、数日間そのままにしておきます。

そのあと、砂利(じゃり)や石をしいた地面の溝(浸透溝:しんとうこう)に流して、土にしみこませます。
 
この時、水がたまりすぎないように、施設のまわりにはバナナの木を植えています。バナナの木は、1日に最大200リットルもの水を吸ってくれるんです。 

そして、実ったバナナは安全に食べられるんですよ!

処理した水分でバナナを育てるなんて、とっても良い仕組みだね!
固形物の方はどうするのかな?

下にたまった固形物の方は、乾(かわ)かすことがとても大切です。

「うんち工場」の施設内の様子 © Djann Jutzeler/MSF
「うんち工場」の施設内の様子 © Djann Jutzeler/MSF
まずは砂と砂利でできた乾燥床(かんそうしょう)に固形物を広げます。すると、重力で水分が下にしみ出していきます。

ある程度乾いたら、コンクリートでできた第2の乾燥床へ。ここで、残った水分をさらに乾かします。
 
最後は焼却炉(しょうきゃくろ)で焼きます。

こうすることで、寄生虫(きせいちゅう)などの病気のもとを、確実に消すことができます。

焼却炉は地面に掘った穴の上に設置されていて、焼いた後の灰(はい)をそのまま穴に捨てられるようになっています。穴がいっぱいになったら、灰を別の場所に埋めるか、焼却炉を移動することもできます。

3段階でしっかり乾かして、病気のもとを消し去っているんだね。
残った灰は、何かに使えるのかな?

Q3:処理した排泄物を、役立てることはできる?

A:肥料として使えるかも!

「うんち工場」の施設内の様子 © MSF
「うんち工場」の施設内の様子 © MSF
「うんち工場」で処理されたものには、植物が育つために必要な栄養素である硝酸塩(しょうさんえん)やリン酸塩がたくさんふくまれています。

なので、地元の農家が使う肥料(ひりょう)として利用できる可能性もあります。

もしそれができれば、畑の野菜や果物を育てる力になるかもしれません。 
 
ただし、本当に安全に使えるかどうかを確認するには、くわしい検査や分析が必要です。

今のところ、私たちにはそれらを行うための設備や技術がまだ足りていません。

肥料として使うのはもう少し先の話になりそうだけど、夢が広がるね!
この「うんち工場」は、MSFにとって初めての取り組みだったんだ。最後に、「ここがすごい!」と自慢(じまん)できるポイントを聞いてみたよ。

Q4:「うんち工場」は何がすごい?

A:排泄物の処理だけじゃない! 環境にもやさしいエコな取り組み

 今回の「うんち工場」は、MSFにとって初めての取り組みです。しかも、病気が流行していない、状況が落ち着いている時に、こうした施設をつくったのは初めてなんです。

「うんち工場」で働くMSFスタッフ © Djann Jutzeler/MSF
「うんち工場」で働くMSFスタッフ © Djann Jutzeler/MSF
「うんち工場」は、4万5000人以上の排泄物を処理できる力を持っています。施設は11人のスタッフで運営されていて、そのうち4人は衛生管理のプロたちです。

今回のプロジェクトでは、たくさんの学びがありました。たとえば、水の流れがうまくいくように、施設の一部を作り直したり、コンクリートの乾燥床を改良したりしました。

そして、このプロジェクトが特にすばらしいのは、衛生面だけでなく、環境のこともちゃんと考えているところです。

施設の運営に使うエネルギーはとても少なくてすむようになっています。そして、今は燃料で動くモーターポンプを使っていますが、将来は太陽光発電によるポンプを使うことも検討しています。 

人びとの健康を守るだけでなく、地球にもやさしい。
この「うんち工場」は、未来の衛生と環境をつなぐ、大事な一歩になりそうだね!

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