プレスリリース
性暴力の被害が広がるコンゴ東部──国際社会は被害者へのケアを優先事項に
2025年06月16日
MSFは全ての紛争当事者に対し、民間人の安全を守り、全ての人が必要な治療や支援を受けられるよう求める。また、援助資金の削減を続ける国際社会に対し、性暴力被害者へのケアを優先的に維持することが必要だと訴える。
キャンプの撤去で危険にさらされる女性たち
コンゴでは、3年前に国軍と武装組織「3月23日運動(M23)/コンゴ川同盟(AFC)」とそれぞれの同盟勢力との戦闘が再開して以来、MSFが治療した性暴力被害者の数は急増している。
65万人超の避難民が住んでいた北キブ州の州都ゴマのキャンプは、「M23/AFC」によりゴマ市が占拠された今年2月に撤去された。しかし、MSFは市内外で新たな性暴力被害者の治療を続けており、1月から4月までの累計患者数は約7400人に上る。ゴマから20キロ西の小さな町サケでは、同期間に2400人超の被害者の治療にあたった。
キャンプが撤去されて以来、避難中の女性の多くは村に帰れないか、帰るのをためらっているため、子どもとともに避難先に残ることが多い。北キブのプロジェクト・コーディネーター、フランソワ・カラスはこう語る。
病院には間借りする家や近隣の施設で性被害を受けた多くの女性が来ています。女性たちは宿泊と引き換えに性行為を強要されることが非常に多いからです。どこにいても安全な場所はありません。
プロジェクト・コーディネーター フランソワ・カラス
武器で脅されて暴行
カラスは「ゴマでは多くの被害者が、治安が悪化している夜間にレイプされたと訴えます。夫が誘拐されたり殺害されたりするケースも少なくありません。一部の地域では、日中にも暴行が行われています」と言う。
家を追われ、学校の中庭に建てたシェルターで過ごしている女性、ナーシャさん(仮名)は「夜10時半ごろ、武装した男たちが私たちの家に入ってきました。何人かの男性は殺され、私を含む複数の女性がレイプされました」と語る。
夫と8人いる子どもの目の前で、3人の男たちが私をレイプしようとしたのです。抵抗した夫は殺されました。
ナーシャさん(仮名)

医療を受けるまでの多くの壁
「私たちは避難先の畑で被害に遭いました」と、南キブのカマンヨラ周辺の丘陵地帯にある村の女性は語る。「武装した男たちは、私たちが村を越えるのを許さなかったのです。医療施設に行くために越えて行こうとしたら、レイプされた女性もいました」
南キブの医療コーディネーター、ルダース・ルリッシュはこう説明する。
報復の恐れ、差別、地理的な遠さ、施設の治療能力不足など、医療を受けるには多くの壁があります。この数字以上に被害はあるはずです。
医療コーディネーター ルダース・ルリッシュ
地域による症例数の違いは、その地域の問題の規模ではなく、医療事情によると考えられる。
性暴力被害者へのケアを優先事項に
コンゴでは医療環境がますます厳しくなっており、北キブ州と南キブ州のいくつかの医療施設では、性暴力被害者の治療に必要な医薬品やキットが既に底をついた。
カラスは「紛争が続きサプライチェーンは寸断され、医薬品が届きません。世界的な人道援助資金の削減により、今後の懸念が高まります。しかし、どんなに難しい課題があっても、私たちは被害に遭った女性や子どもを見捨てることはできません。性暴力を受けた人たちのケアは絶対的な優先事項とする必要があります」と訴える。
MSFは、被害者のケアを支援するだけでなく、全ての関係者に対し、民間人の保護と医療へのアクセスをさらに手厚く保証するために最大限の努力をするよう求めている。
MSFは、北キブのゴマ、ルチュル、マシシ、ワリカレ、南キブのカレヘとウビラで、性暴力の被害者に総合的な医療と心のケアを提供している。これには、性感染症の予防治療、緊急避妊、ワクチン、安全な中絶などに関する活動が含まれるほか、重症患者を専門医のいる病院へ搬送する支援も行っている。
