イベント報告

【イベント報告】ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2023連携企画

2023年05月24日

国境なき医師団(MSF)は5月21日、アジア最大級の国際短編映画祭 ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)連携オンライントークイベントを開催。

「気候変動と人道危機の現実——世界のいまを伝える映像の可能性」と題し、with Planet編集長の竹下由佳さんと、3月上旬にアフリカ南部を直撃したサイクロンの影響で壊滅的な被害がもたらされたマラウイを取材して帰国直後の写真家の渋谷敦志さん、MSFからは気候変動で人びとの命の危機がおびやかされているキリバスで活動中の産婦人科医 森田恵子が現地からライブで参加し、写真や映像を紹介しながらディスカッションをしました。

気候変動の影響を強く受けるのは、いつも弱い立場の人びとです。

MSF産婦人科医 森田恵子

「キリバスの現状を見て、他人ごとではないと強く感じている。気候変動による影響を強く受けるのはいつも弱い立場の人びと。世界に目を向け、日本にいると気づけない現状を知ること、そして自分たちの快適さだけを求めるのではなく、私たちが小さなことからできることに取り組んでいくことが大事」

さまざまステークホルダーがつながり、一緒に考えていくことが不可欠。

with Planet編集長 竹下由佳

「人びとと地球が健康であるためには、一つの課題だけではなく、さまざまな課題を解決していかなければならない。そのためには、専門家だけではなく、私たち一般市民や企業、行政など様々なステークホルダーがつながり、一緒に考えていくことが不可欠。企業で働いている方であれば、サステナブルなビジネスのために自分たちの事業分野では何ができるのかを考え、社内だけではなく、さまざまな機関と連携することもできる。私たち一人ひとりの声が一番強い。SNSでの声がきっかけで政治が動いた例はたくさんある。人道危機や関心のある問題についてSNSで発信したり、政治家に行動を促すなど、声を上げてほしい。with Planetでも、みなさんの行動の一歩になるような記事やコンテンツを発信していきたい」

難しいと思っても、未来がかかっている。今すぐやるしかない。

写真家 渋谷敦志

「異常気象がもたらす自然災害は、途上国に限らず日本でも起きている。日本にいても課題は身近にあるので、それぞれの方法でアプローチすることはできる。難しいと思っても、未来がかかっている。今すぐやるしかない。自分は写真家として最前線の現場に行き、そこに生きる人びとの声を、地球の声と思って耳を傾け発信している。人間の健康と地球の健康はつながっている。国を超え、地球人としての視点を持ち、地球レベルで考え、行動に移す必要がある」

人道危機の現実を日本でより多くの人に分かりやすく伝えていく上で、映像の果たす役割も大きい。

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア エグゼクティブ・ディレクター 東野正剛

「『言葉が常に人命を救えるわけではありませんが、沈黙は確かに人を殺し得ます』(国境なき医師団 ノーベル平和賞受賞スピーチより)という言葉が心に残っている。人道危機の現実を日本でより多くの人に、分かりやすく伝えていく上で、映像の果たす役割も大きい。環境問題や人道危機、戦争や紛争に巻き込まれる人びとに関する作品も非常に多い。映画祭をツールとして作品を届けることで、考えてもらえるきっかけになればと願っている。これからも映画祭を通じてできることに取り組んでいきたい」

映画祭は6月26日まで都内複数会場にて開催、オンライン会場は7月10日まで開催中です。世界の今を映すショートフィルムを無料でご覧いただけます。

また渋谷さんのマラウイの取材記事は後日with Planetでも掲載されますので、ぜひご覧ください。

トークイベントのアーカイブは以下より視聴できます。(再生時間:約60分)

イベントでは参加者の皆さまからたくさんのご質問をいただきました。当日回答しきれなかったご質問について、いくつかお答えします。

Q気候変動による不安や恐怖にはどんな医療・対応をしていますか?

国境なき医師団は、自然災害の被災者や援助の最前線で働く人びとに対し、心理士による心理ケアも行っています。

【東日本大震災から10年】被災地に通い続けた心理士が語る 知っておきたい災害時の心のケア

「家が怪物になってしまった」──トルコ、震災被災地で求められる心のケア

気候変動に人道援助はどう対応するか 気象データによるマラリア予測、太陽光発電の病院も

Q(キリバスの)医療費、保険はどうなっているのでしょうか?

キリバスでは医療費は無料で、国が負担をしています。キリバスは、ハンセン病や結核、糖尿病などが人口に対して世界で最も多く確認されている国です。それでも、人びとの基礎医療へのアクセスは最低水準にとどまっています。国境なき医師団は2022年10月からキリバスで医療・人道援助活動を開始。小児科医、助産師、医師のチームが、妊産婦と新生児の健康状態の改善のため、現地の保健省を支援しています。

キリバス:浸食される土地、食料不安、病気のリスク… 人びとの命を脅かす気候変動

Q(マラウイは)被災も大変だと思いますが、復興のための経済状況も厳しくなっているのでしょうか?

経済は厳しい状況です。コロナ禍で頼みの観光収入が落ち込んでいたところで、コレラの流行にも見舞われました。さらに、ウクライナ戦争の影響で燃料や農作物価格の上昇が激しい中、サイクロン直撃の大きな被害を受けています。衣食住から教育、医療に至るまで影響を受け、貧困の深刻化が懸念されます。

Q将来森田さんのように海外で活躍する医師になりたいと思っています。現地で必要な能力はなんですか?

職種ごとの経験に加え、多国籍チームの一員として活動するコミュニケーション能力、マネジメント能力、ストレス対応力などが求められます。詳しくは以下のページをご参照ください。

国境なき医師団の海外派遣スタッフとして働く:求める人物像

国境なき医師団の海外派遣スタッフとして働く:説明会・イベント情報

登壇者プロフィール

竹下 由佳(ジャーナリスト)

1988年 広島県生まれ。2011年、朝日新聞社入社。名古屋報道センター、岐阜総局、大阪編集センターを経て、2017年より政治部で勤務。2020年よりデジタル部門で若手ビジネスパーソン向けメディアの立ち上げに携わり、インターネットメディア「ハフポスト日本版」への出向を経てwith Planet編集長。

渋谷 敦志(写真家)

🄫 MSF
🄫 MSF
1975年大阪府生まれ。高校生の時に一ノ瀬泰造の本に出会い、報道写真家を志す。大学在学中に一年間、ブラジル・サンパウロの法律事務所で働きながら本格的に写真を撮り始める。卒業後、ホームレス問題を取材したルポで国境なき医師団主催の1999年MSFフォトジャーナリスト賞を受賞したのをきっかけに、アフリカへの取材を始める。日本写真家協会展金賞、コニカミノルタフォトプレミオ、視点賞・視点展30回記念特別賞など受賞。ノンフィクション『まなざしが出会う場所へ——越境する写真家として生きる』を新泉社より刊行。

森田 恵子(国境なき医師団 産婦人科医)

© MSF
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1986年埼玉県生まれ。2012年富山大学卒業後、富山大学附属病院で初期研修を行う。
東京都立広尾病院、富山大学附属病院を経て、国境なき医師団 産婦人科医として、2022年南スーダンで活動。2023年4月からキリバスで活動中。趣味は旅行、映画鑑賞。現在最も訪れたい場所はアラスカ。

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