「家が怪物になってしまった」──トルコ、震災被災地で求められる心のケア
2023年04月26日
被災した人びとの心はいま──。現地からの声を伝える。
心のケアを行う現地団体を支える
震災直後の数日間、多くの人びとは全半壊した自宅の外で、捜索救助隊が負傷者を助け出すのを見守っていた。がれきの中から遺体が見つかると、一体一体、家族や友人かを確認するのだ。トルコ当局によると、4月上旬の時点でトルコ国内だけで5万300人以上が亡くなった。
今回の地震は、人びとの心に重大な影響をもたらしている。国境なき医師団(MSF)は、トルコの現地団体へのサポートを通じて、被災した人びとに心理社会面の支援を行っている。
アドゥヤマン県とマラティヤ県ではイメジェ・イニシアティフ協会を通し、またハタイ県とカフランマラシュ県ではマヤ・バクフィを通して支援し、3月24日までに7500人を超える人びとに心のケアを届けた。
イメジェ・イニシアティフの心理療法士であるナーズル・シーナム・コイタク氏は次のように語った。
「家が、守られる場所から恐怖の場所に」 ──心理療法士

© Mariana Abdalla/MSF
子どもの心への影響も
余震は今も毎日続いているので、過去の経験が絶えずよみがえり、次の地震が起きるかもしれないという思いが離れないのだ。トルコ災害・緊急事態対策庁(AFAD)によると、2月6日の地震以降、2万5000回以上の余震が発生し、そのうち47回はマグニチュード5以上の地震が発生している。
また、震災による心のダメージは体にも影響を与え、時としてパニック発作や摂食障害などを引き起こす。
アドゥヤマンのカヤテペ村(レズィプ)村に暮らす姉妹はこう話した。
「本を読んでも何も頭に入ってこないんです」 ──11歳の少女

© Mariana Abdalla/MSF
MSFがサポートする現地団体は、地震で被災したさまざまな人びとへの心理社会面の支援に当たっている。トルコの医療従事者、シリア難民、ボランティア、男性、女性、そして子どもたちだ。
心理社会面の支援にはさまざまな形があり、特に子どもたちは絵を描いたり、踊ったり、音楽を聴いたりといった活動で心理面の効果が表れることが多い。

再び立ち上がるために
壊滅的な被害をもたらした地震の余波は、今後何年にもわたって人びとの生活に影を落とすと考えられる。MSFは現地の団体と協力して心理社会面の支援を行い、被災した人びとが再び立ち上がるために必要な強さと回復力を高められるよう支えていく。

MSFの支援先団体
イメジェ・イニシアティフ協会
トルコのイズミルに拠点を置く非営利団体で、共同作業による助け合いを重視するトルコ伝統の習慣「イメジェ」を中心に据えて活動。地域に根差したアプローチによる地域発展を重視し、震災後は救援物資の配布、弱い立場に置かれた人びとへの心理社会面の支援などを行っている。
マヤ・バクフィ
5歳から24歳までの子どもと若者とその保護者の心身と学びの発展に焦点を当てて活動。現在、被災者の対処能力を高めるための心理社会面の活動やイベントを行っている。長期にわたって被災地で対応する公務員の能力開発と健康促進活動も担っている。
ヤルドゥム・コンボユ
イスタンブールに拠点を置く緊急援助団体。災害などの危機に見舞われた地域で、医療、水と衛生、食料などの面で救援活動に当たっている。震災発生以来、カフラマンマラシュ、アドゥヤマン、ハタイ、ガジアンテプで活動。