がれきの中で生き延びて──トルコ・シリア地震から1カ月 被災地の状況は
2023年03月15日

Ⓒ Assia Shihab/MSF
シリアのイドリブで国境なき医師団(MSF)のプロジェクト・コーディネーターを務めるアーメド・ラフモに、現在の医療・人道ニーズ、そして2カ国で続くMSFの活動状況について聞いた。
- Q1カ月が経過した今、震災はトルコとシリアにどのような影響を与えていますか?
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シリア北西部の、私たちがいるイドリブ県とアレッポ県では、今回の地震で元からひどかった人道状況がさらに悪くなりました。ここには地震で避難した18万人に加え、過去12年間の戦争で何度も避難を繰り返し、厳しく不安定な状況で生活している人びとが280万人います。

トルコでは、公式発表によると、3月4日現在で300万人以上が家を追われ、そのうち150万人以上がテント生活を余儀なくされているそうです。この地震は、国内の全人口の16%が住む11の県で、程度の差はあるものの、影響を及ぼしています。当局による大々的な対応とトルコの市民社会の連帯にもかかわらず、十分な援助を受けられていない被災者がまだ大勢いるのです。
また、トルコ国内の被災地の一部では、以前から多くのシリア難民を受け入れており、非常に不安定で住むのもままならない環境の下で、難民の人びとが暮らしています。
- Q現在、最も緊急な医療・救援ニーズは何ですか?
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大勢の避難民が避難所や食料、清潔な水、生活必需品を手に入れることのできない状態です。人びとは医療援助、トイレ、シャワー、暖房器具、防寒具、発電機、毛布、衛生用品、清掃用品を必要としています。捜索・救助活動や緊急の危機対応の段階は終わり、被災された方々へ救援物資の配布などの支援を継続することが急務です。
また、多くの人が家や生計手段を失くし、親族や大切な人を失って、非常に厳しい状況の中で生活しています。ほとんどの人は、悲しみ、絶望、不安、将来への不安を抱え、日々、余震による恐怖や心的外傷後ストレスに耐えながら生きていかなければなりません。
人びとは、地震が来た時のことを心の中で追体験し、同じような破壊が再び起こるかもしれないと考えています。そのため、このような苦しみの後には、心理・社会的支援を提供することが重要です。
また、シリア北西部では、弱体化した医療制度とインフラという困難にも直面しており、55カ所の医療施設が損害を受けたか、完全には機能していません。
- QMSFはこの危機にどのように対応していますか?
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シリアでは、イドリブとアレッポで機能している医療施設を支援しています。また、イドリブ県とアレッポ県の受入施設や避難キャンプで、基礎医療や心のケアを提供する移動診療所も運営しているところです。私たちは現在も救援物資やキットを必要な人たちに配布しています。

トルコでは現在さまざまな現地のNGOや市民団体と連携し、必要とされる人道援助や救援活動を実施しています。私たちはMSFの援助活動がより一層価値あるものになるよう、見過ごされている分野に注力し、活動を行っています。
トルコのパートナー団体を通じた支援の中で、MSFは医療、食料、水、生活必需品をはじめ、衛生用品キット、毛布、電気ストーブ、防寒下着などの救援物資を寄付し、現在も寄付を継続しています。仮設キャンプにはシャワーやトイレを建設し、水と衛生のニーズにも対応しています。また、被災者やボランティア、捜索救助隊など、地震の影響を受けた人びとに対して、個人およびグループワークを通じた心理・社会面の支援活動も行っています。

- Q人道援助は、シリアの被災者のニーズを十分に満たせていますか?
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シリア北西部に届く人道援助は、あまりにも限られており、時間もかかりすぎます。避難所、飲料水、手洗い場や洗面設備、暖房器具など、必要なものはまだたくさんあります。バブ・アル・ハワは、国連が支援するトルコとシリア北西部を結ぶ主要な人道援助の越境地点ですが、ここから救命に不可欠な医療物資をシリア北西部に搬入しています。

2月13日には、トルコからシリア北西部へ向かう2つの人道援助目的で認められた越境地点、バブ・アル・サラムとアッライが追加され、当初3カ月間開かれると発表されました。また、2月26日、MSFの2回目の物資を積んだトラック15台が、NGO「アル・アミーン」の支援によってシリア北西部に入りましたが、特に外科手術のための物資が足りなくなりつつあります。シリア北西部に人道援助を届けるための越境支援ルートを増やすよう求める声を、MSFは引き続き支持します。
MSFは人道援助をニーズに合わせて住民に届けるよう呼びかけています。ただ、残念ながらシリア国内の援助はニーズを満たすには、ほど遠いのが現状です。
MSFの現在の活動

Ⓒ Omar Haj Kadour
■シリア北東部では、一般診療所、非感染性疾患プログラム、移動診療の外傷ケアを運営。アルホール難民キャンプでは、安全な飲料水を供給するための浄水場を運営している。病院だけではなく、外来病棟や救急処置室、栄養治療プログラムも支援。現在は、子どもの死亡率の高さに対応するため、B型インフルエンザの短期援助活動にも取り組んでいる。
■トルコでは、被災地の人びとを支援する現地のさまざまなパートナー団体と協力し合いながら活動を継続中。MSFは医療ニーズや救援ニーズへの対応を最適化するため、常に援助活動の動向を把握し、現状にあわせて調整を続けている。これまで、ガジアンテプ、マラティヤ、アドゥヤマン、ハタイ、エルビスタン、ヌルダウ、キリス、イスラヒエ、デフネ、サマンダー、アンタキヤ、ナーリチア、パザルジク、イスケンデルン、カフラマンマラシュ市などで支援を行っている。