2月6日で震災から1年
トルコ・シリア地震 国境なき医師団の緊急医療援助
2024.02.07

国境なき医師団(MSF)は、シリア北西部で地震発生の数時間後から負傷者の治療を開始。その後も紛争と震災の二重の困難に見舞われた人びとへの援助を続けてきました。トルコでは現地の団体と連携し、被災者への対応に当たりました。1年間の活動を数字で報告します。
一人でも多くの人へ援助を──数字で見る1年間の活動
シリアでの活動







震災直後から負傷者の治療を開始し、援助物資の提供を行った。その後、水と衛生や心のケアなどの活動を拡大。地震から6カ月後、緊急対応の段階を終え、それぞれの活動を通常の活動に組み込んで継続的な取り組みを行っている。
(2024年1月時点)
トルコでの活動(現地の連携団体を通して実施)





トルコではさまざまな現地のNGOや市民団体と連携し、心理社会面の支援や水と衛生の改善、救援物資の配布などを実施。緊急対応については5月31日をもって段階的に終了し、トルコ当局や現地の組織に引き継いだ。
(2024年1月時点)
最新の活動ニュース
2023年2月6日、大地震発生──その時どう動いたか

命を救う活動を、どうぞご支援ください。
寄付をする※国境なき医師団日本への寄付は 税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。
2023年5月時点の活動
シリア
-
(2023年4月30日時点)
-
(2023年4月30日時点)
緊急対応の第1段階
地震の発生後、MSFは被災者の救援と医療援助を行うため、緊急対応を開始。最初の数日間は、必要な物資や人材の提供、救急車のサポートなど、医療施設の支援に力を注いだ。また、被災した人びとに救援物資を配布した。
イドリブ県の4つの医療施設では、負傷した患者の治療を行い、屋外にはテント病棟を設置して病院の対応力を強化。さらに、患者を搬送するために90台の救急車を支援した。





緊急対応の第2段階
満たされていないニーズやギャップに焦点を当てた、より計画的・戦略的なアプローチに移行。より多くの救援物資の配布、水と衛生活動の実施、移動診療所の継続的な運営、心理的応急処置や心のケアの提供など、取り組みの規模を拡大した。

キャンプでは授乳中の母親のプライバシーを確保するために、母子スペースを設置。イドリブ県では、急患でない患者の他の医療施設への紹介をサポートし、ICUと透析を備えた2つの病院と血液バンクを支援している。


シリア北西部では、現地のパートナー団体とともに、暖房キット、衛生用品キット、調理キット、6000張り以上のテントと3万7000以上の毛布を含む、11万800以上の救援物資を配布した。また、現地のパン屋を支援し被災した人びとに36万7000個以上のパンを提供した。
アレッポ県では、地元のパートナー団体と協力して、トイレや貯水タンクを設置。アフリン市の水処理工場には薬品を提供し、人びとに清潔な水を提供した。

緊急対応の第3段階
現在、MSFは緊急対応の第3段階を開始。この段階では、シリア北西部における医療提供の継続性と持続性を確保するため、長期的な戦略活動に焦点を当てている。また、再建手術などの地震後の医療介入にも力を注いでいる。
イドリブ県では、MSFがすでに支援しているサルカン、アル・マランド、ヘイル・ジャムスの3つの病院と基礎医療施設が地震で被害を受けたため、再建を進めている。

アレッポ県では、避難所に住む人びと、特に子どもたちにレクリエーション活動や心のケアを提供。人びとの心身の健康を向上させることを目的に、ゲームやスポーツ、図画工作、体験談や物語の創作などを実施している。これらの活動は、ストレスの多い避難所生活に欠かせない気晴らしとなり、社会的なつながりやコミュニティに所属している感覚の構築に役立つことがある。

今回の地震で何千人もの人びとが怪我をし、緊急手術が行われた。緊急手術は通常、見た目や可動性よりも、命を救うことを優先する。そのため、緊急手術を受けた患者の多くは、将来の傷跡や可動性にまつわる問題を防ぐため、追加手術や再建手術が必要になる可能性がある。このニーズに応えるため、MSFは現在イドリブ県の病院を支援。追加手術と再建手術を行い、長期的な身体的影響を最小限に抑えるための支援を行っている。

震災と内戦という二重の苦難の中にあるシリア北西部。およそ12年に及ぶ内戦で不安定な状況に置かれた200万人に加え、18万人以上が震災により避難を余儀なくされた。地震発生から3カ月以上が経ち、シリア全土で死者約7300人、負傷者1万1100人が報告されている。
トルコ
-
(2023年4月25日時点)
-
(2023年4月25日時点)


地震により900万人以上が影響を受けたといわれるトルコ。震災で5万1000人以上が命を落とし、300万人以上が避難を余儀なくされた。MSFは5月31日をもって緊急対応を段階的に終了し、トルコ当局や現地の組織に引き継いだ。しかし、被災者の心身への影響は依然として懸念され、今後数カ月間は、救援活動を続ける現地の団体に一定の支援を行っていく。
現地からの活動ニュース
-
心の傷はまだ癒えず──シリア、紛争下での大地震発生から1年
【2024年2月7日公開】
-
トルコ・シリア地震から約半年──シリア北西部 復興の兆しと残された課題
【2023年9月1日公開】
-
大地震後のシリア 避難民には水もトイレも足りない──子どもに広がる感染症
【2023年7月6日公開】
-
「家が怪物になってしまった」──トルコ、震災被災地で求められる心のケア
【2023年4月26日公開】
震災は被災地の人びとの心に大きな影響を与えた。MSFはトルコで心のケアを行う現地団体を支えている。 -
がれきの町と化したシリア北西部──医療体制は限界 いま必要な支援とは
【2023年4月6日公開】
地震から2カ月が経ったいま、被災したシリア北西部の医療体制は限界に達し、人びとは危機に瀕している。 -
がれきの中で生き延びて──トルコ・シリア地震から1カ月 被災地の状況は
【2023年3月15日公開】
地震から1カ月—現地で活動を続けるスタッフが、トルコとシリアの状況を伝える。いま、被災地の人びとに必要な医療・人道援助とは? -
移動診療を、救援物資を──シリア北西部の地震被災地での活動を拡大
【2023年2月27日公開】
シリア北西部で4つの移動診療所を運営し、救援物資を配布している。しかし、いまも満たされていないニーズは多いと現地のスタッフは訴える。 -
トルコで救援物資や食料を提供 寒さの中で避難生活を送る人びとのもとへ
【2023年2月22日公開】
トルコでは、パートナー団体と連携し、被災した人びとに物資や食料を提供。寒さの中で避難生活を送る人びとへ支援を届けている。 -
「ママ、助けに行ってあげて」医療者の私は病院へ向かった シリア、被災地の助産師の24時間
【2023年2月21日公開】
自らも被災しながら、医療者として混乱の医療現場向かったシリアの助産師。彼女が経験した震災直後の24時間を伝える。 -
シリア北西部に対する援助物資搬入の急拡大を要請
【2023年2月20日公開】
MSFの物資を積んだトラックが、トルコ南部からシリア北西部に入国。戦争による人道ニーズと地震による新たなニーズの双方に対応するためには──。 -
「病院は負傷者と死者であふれている」 壊滅的被害のシリア北西部、医師からの報告
【2023年2月16日公開】
あふれる負傷者、不足する物資、限られる援助……。厳しい現実に直面するシリア北西部の医療現場から、医師が報告する。 -
内戦と震災、二重の危機にあるシリア 「今年こそ苦しみが終わって──」願い続けた末に
【2023年2月15日公開】
12年近くに及ぶ内戦、そして震災──。「二重の危機」の中で生きる人びとの思いと、MSFが進める活動を、シリア出身のスタッフが伝える。 -
「大地震、どう緊急援助を行う?」アクセスが困難なシリアで活動する国境なき医師団
【2023年2月9日公開】
現在、シリア北西部で緊急援助を行うMSF。内戦の避難民が多く暮らす地域が被災し、援助ルートも限られる中、いま必要な支援とは──。 -
トルコ・シリア地震──MSFはニーズ急増に対応規模を拡大
【2023年2月7日公開】
2月6日早朝に発生した大地震を受け、MSFはシリア北西部で活動していたチームを動員し、被災地で高まる医療ニーズへの対応を開始した。
#トルコ・シリア大地震 により多くの人命が失われた痛ましい悲劇からわずか2週間、また大きな地震が発生しました。シリア北西部とトルコ南部に暮らす人びとの多くは既に愛する人や住む家、生活手段を失っており、新たな不安が大きくのしかかっています。
— 国境なき医師団日本 (@MSFJapan) February 21, 2023
(次へ) pic.twitter.com/5MdK7HCXfj
人道危機が続くシリア
2011年から内戦が続くシリア。1460万人が人道援助を必要とし、国内避難民の数は世界最多の690万人に達した*。MSFの活動は情勢不安などにより大きく制限されているが、アクセス交渉が可能な北西部や北東部では、病院や保健センターを運営・支援し、避難民キャンプで医療を提供している。
*国連難民高等弁務官事務所「グローバル・トレンズ・レポート 2021」
命を救う活動を、どうぞご支援ください。
寄付をする※国境なき医師団日本への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。

トップ写真:シリアの避難民受入センターで、MSFは救援物資の配布を行っている=2023年2月18日 Ⓒ MSF