「私たちに逃げ場はありません」──ミャンマー地震 湖上で暮らす人びとへの影響とは
2025年05月26日
国境なき医師団(MSF)は、インレー湖の4つの村で人びとのニーズに対応。飲料水の供給をはじめ、建築資材や救援物資の提供も行っている。被災した湖上の村に今、求められる援助とは。人びとの声と共に伝える 。

崩れ落ちた水上の家 復興作業も難しく
地震はここで暮らす人びとに甚大な被害をもたらした。いくつかの村では家屋の9割が損壊または倒壊したという。家々が水中に崩れ落ち、人びとは恐怖の中で逃げ、生き延びた。地震後、被災した人びとの多くは過密状態の家屋やテント、仮設避難所で暮らしているが、地震によりボートの多くも壊れ、生活や移動にも困難が生じている。飲料水の供給も途絶え、水上のアクセスの難しさや資材の高騰により、復興作業も厳しい状況だ。

また、湖上で暮らす人びとは、雨期には洪水のリスクにもさらされており、2024年9月に起きた大洪水では、いくつかの村が大きな被害を受けている。雨期が迫る中、被災した人びとが暮らす避難所の整備などが緊急に必要とされている。
インレー湖で被災した人びとの声
「家ごと水の中に落ちていった」
家は倒壊し、私たちは丸一日、食べ物もなく水も飲めませんでした。
村の人は皆、泣いていました。誰もが同じ状況で、助け合うこともできません。
自分の家が倒壊した後、村を見て回りましたが、ほぼ全てが壊れていました。地震の被害は村全体におよび、245軒あった家屋のうち、残っているのは3、4軒のみでした。

地震の直後は、怖くて眠れませんでした。また地震が来るんじゃないかと思うのです。私たちは、安全を感じることができる場所──陸地に住むことにしました。陸の上なら地震が起きても、逃げることができるでしょう。
村の人たちの中には、水上の大きなボートの上で暮らす人もいれば、陸に作られた仮設避難所や僧院に身を寄せる人もいます。今は皆、家を再建するのに必死です。私も一刻も早く家に住めるようになりたいと思います。

ずっと、地震は陸で起こるものだと思っていましたが、それは間違いでした。
湖上での暮らしが好きでしたが、このような災害に遭うと思うのです。水の上で暮らす私たちには、どこにも逃げ場がないんだ、と。
マ・タジンさん
「浮き上がろうともがくほど、深く沈んでいった」
地震が起きた日は、89歳の母だけが自宅にいました。私はちょうど給水塔で洗濯をしていたのです。水面が揺れ始めた、と思ったら給水塔が倒れ、私は水の中に投げ出されました。
水はたちまち泥とがれきに覆われ、浮き上がろうともがくほど、私の体は深く沈んでいきました。運よく流れてきたものを踏み台にして、水の中からはい上がることができたのです。
地震により、5人家族の私たちは水上農園と家、そして2隻のボートを失いました。私たちは、主に水上農園の収穫で生計を立てていたのです。
2024年9月に洪水が起きたときは、家の1階が水没しましたが、今回の地震に比べれば、洪水の被害ははるかに軽かったように感じます。

心も体も不調が続いています。気力がなくなり、何かをする気が起きません。心臓の鼓動が激しくなり、ふらふらして歩くことも大変です。
将来への不安と地震によるトラウマの両方に打ちのめされています。
ドー・メイ・ルインさん(仮名)
