プレスリリース
「病院を撃つな!」 紛争下の医療保護を求める国連決議から10年──各国政府は約束の実行を
2026年04月30日
採択から10年が経過したが、世界各地では今も医療への攻撃が後を絶たない。国境なき医師団(MSF)はこの節目にあたり、各国政府に決議の約束を守り医療を保護するよう求める。
医療への攻撃で昨年2000人近くが死亡
MSFは現在、パレスチナ、レバノン、ウクライナ、スーダン、ミャンマーなど、紛争や戦争が続く地域を含む70を超える国と地域で活動している。この10年間で、攻撃を受けて業務中に命を落としたMSFのスタッフは15件の事案で21人に上る。世界保健機関(WHO)の「医療への攻撃監視システム(SSA)」によると、2025年だけでも医療施設への攻撃は1348件に上り、それにより1981人が死亡した。
MSFインターナショナル会長のジャビド・アブデルモネイムはこう訴える。
かつては例外的だと見なされていた医療への攻撃が、今では日常的に起きています。
「各地の紛争下で医療活動の保護が明らかに無視されています。2016年に医療を保護すると約束した国々は、言い訳や非難合戦を止め、行動を起こさなければなりません」
この10年間、医療への攻撃はさまざまな形で行われてきた。シリアやイエメンでの病院への空爆、ウクライナやパレスチナでの病院への砲撃、ミャンマーでの病院へのドローン攻撃。そしてカメルーンやハイチ、レバノンでは、明確に救急車と示した車両が攻撃を受けた。
攻撃をした国々はこれらについて、否定したり、誤爆だったと説明したり、保護の対象でなくなったから攻撃したと証拠もなく主張するケースが多い。医療従事者は守られる存在より、疑われる存在として扱われるようになってきている。
長期的に地域から医療が奪われる
例えば2025年、MSFはスーダンで約85万件の外来診療を行い、約9万5600人を入院治療し、2万9000件の出産を介助した。ガザ地区では同じ期間に、91万3000件の外来診療、5万4000人の入院治療、8万9800件の心のケアのカウンセリングを行った。ウクライナでは、MSFの救急車が1万700人の患者を搬送、そのうち60%は戦争による負傷者だった。また、移動診療所を通じて4万5300件の外来診療を行い、9750回の理学療法を行った。
医療施設が壊され、このような医療活動が不可能となり、また人びとが恐怖のため外出できず医療を受けることができなくなったら、苦しむのはそこに暮らす人びとだ。
言葉だけでなく行動を
「紛争下の医療は、極めて深刻な脅威にさらされています。過去10年のほぼすべての紛争において、医療従事者や病院への攻撃が起きています。MSFは各国政府に対し、国連安保理決議2286号に基づく義務と約束を守り、保護と説明責任を強化するよう求めます」
国際人道法の下で私たちと患者に保証されている保護は、単に言葉ではなく、行動によって示されなければなりません。
MSFインターナショナル会長 ジャビド・アブデルモネイム
MSF日本事務局長の村田慎二郎はこう述べる。
「本決議は、2015年に米軍がアフガニスタンのMSF外傷病院を爆撃し42人の尊い命が失われた事件がきっかけの一つとなっています。以来、私たちも『病院を撃つな!』と訴え続けてきました」
決議の起案国の一つとして採択を主導した日本政府には、10年の時を経て、改めて国際社会に対し、決議の原則を行動で示し責任を果たすよう働きかけていただきたいと考えます。
MSF日本事務局長 村田慎二郎




