「病院は負傷者と死者であふれている──」 壊滅的被害のシリア北西部、医師からの報告
2023年02月16日
緊急事態の病院へ
「破壊がすさまじく、この地域は破滅的な状況にあるとすぐに判断しました。最初の地震から3時間もしないうちに緊急対応を立ち上げ、スタッフが警戒態勢に入ったのです」とMSFアトメ病院の副院長、モハマッド・ダルウィッシュは話す。
現地のチームは、北西部のバブ・アル・ハワ、イドリブ、アタレブなどにある約10カ所の病院に医療機器を輸送し始めた。地震で800人の救急患者を受け入れ、そのうち250人は外科治療を要したという外科病院のサミ・カドゥール院長は、「どの病院もひっ迫している最中に、MSFが真っ先に人員とギプス材料や傷口の消毒用品などの物資を送ってくれた。けが人の受け入れは続いています」と話す。だが残念なことに、被害者の人命を救助できるタイムリミットは過ぎてしまった。
同僚を支えるため、トルコとの国境沿いにある病院へ派遣されたMSFの外科医モハマッド・ザイトゥンはこう振り返る。
「地震後2月13日まで国境が閉鎖していたため、外からの支援やけが人の移送を期待できなくなり、私たちには大きなプレッシャーがかかりました。負傷者はあまりに多く、医療スタッフは疲弊していました。私は手術室にいましたが、この地域でこれほど多くのけが人が押し寄せたのは、かつての砲撃や虐殺以来のことでしょう」

膨大なニーズを前に
MSFはアトメ病院の救急車も用いて、病院間の患者搬送を可能にした。また移動診療については、状況に応じて援助活動計画を立て、被災者が集まっている場所に派遣。移動診療チームは、これまでも内戦の避難民が暮らすキャンプで定期的に活動していた。現在、家を失った人びとの避難先を毎日のように訪れ、医療を提供している。
アトメより広い範囲での状況についてはまだ見えていない、とダルウィッシュ副院長は先週末に語っている。「病院が負傷者や死者であふれ、膨大な物資を必要としていることだけは明らかです。人びとはあらゆるものを必要としているのです」
MSFはすぐに倉庫を開け放って、2500枚の毛布を各病院に寄贈し、数百の生活必需品セットを被災者に配布したが、十分ではない。

限られてきたアクセス
「地震から1週間近く経っても、外部から何の助けも来なかった」と話すのは、アトメの町にある病院のモヒード・カドゥール院長。「支援は他の病院や地域のコミュニティ、震災前にすでに活動していた団体からのみ。この状況でMSFのアトメ病院は重要な役割を果たしました。ただ、約20の医療機関を定期的に支援することで築かれたこのネットワークでは、現状に対応しきれません」と嘆く。
通常なら重症患者をトルコ側の病院に搬送するが、現状それも叶わない。イドリブ県内の専門病院はすでに満床だ。
※緊急事態を受け、2月15日、越境地点が2カ所追加された。

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