エボラ出血熱:MSFスタッフ、国連安保理で緊急対応を呼びかけ

2014年09月20日掲載

国連の安全保障理事会がエボラ出血熱の対策を話し合う緊急会議を2014年9月18日に開催し、リベリアで活動している国境なき医師団(MSF)のジャクソン・K.P.・ナイマが、各国に対して早急に行動することを呼びかけました。ナイマはリベリア出身で、MSFのエボラ治療センターのチームリーダーを務めています。ナイマのスピーチの日本語訳を掲載します。

国境なき医師団(MSF) エボラ治療センター・チームリーダー(リベリア)
ジャクソン・K.P.・ナイマ

(前略)

MSFのエボラ治療センターでチームリーダーを務めるジャクソン・K.P.・ナイマ MSFのエボラ治療センターでチームリーダーを務める
ジャクソン・K.P.・ナイマ

国境なき医師団(MSF)は、米国のオバマ大統領のエボラ出血熱対策の計画を歓迎するとともに、その即時実施に期待を寄せています。 また、この場をお借りして全ての国連加盟国に対し、米国と同様に各国の力を活用してくださることをお願い致します。エボラは日ごとに広がり、人びとの命を奪い続けています。

今回のエボラ流行を私が耳にしたのは2014年3月でした。流行はすぐに、リベリアの首都モンロビアにまで到達しました。以来、犠牲者が増え続けています。

私のめいのフランシラ・コリーと、いとこのジャンプ・ロワはいずれも看護師で、医療施設でエボラに感染しました。治療を受けましたが、回復することなく7月に亡くなりました。ほかにも、友人、大学の同期、同僚も相次いで命を落としています。

私には医学の心得があり、祖国を助ける責任があると感じました。

私は現在、モンロビアにあるMSFのエボラ治療センターのチームリーダーです。感染が疑われる方を診察するテントで、トリアージ(※)を担当しています。エボラには現時点では治療薬がなく、MSFができることは対症療法・緩和ケアです。患者さんに水分と栄養をとってもらい、身体症状を和らげる基本的な対応だけでも、早い段階でできれば生存率は高まります。

  • 重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること

祖国の人びとが亡くなる姿を手をこまねいて見ていることはできません。しかし、私も含めMSFだけではエボラと闘えません。 国際社会の皆さまの力をお借りしなければならないのです。

MSFが直面している闘いがどのようなものかお話したいと思います。

本当に多くの"死"を目にしました。患者さんたちは独りで恐怖におびえながら、家族にも付き添われないまま亡くなるのです。医療者としてこのままではいけないと思っています。感染が確定した患者さんが入院している高リスク区画に入る時には、患者さんたちが何を必要としているかに気を配っています。衰弱して食事にも介助が必要な人や、感染したことで心がひどく傷つき、強い恐怖に襲われてカウンセリングを求めている人を最優先でケアしています。

できるだけ多くの人を治療しようと努めていますが、治療施設の数も病床も足りません。施設前に並んでいる人びとに帰ってもらわなければならないのです。施設に受け入れられなかった方の中には、門前で亡くなった方もいます。

こうしてお話している間も、人びとはMSFのエボラ治療センターの門前に座り、文字通り"命乞い"をしているのです。誰もが孤独で、誰にも顧みられず、社会から拒絶されたと感じています。絶望的な死を待つばかりなのだと……。

エボラ対策の具体的な支援がないばかりに、MSFは感染した人びとのわずかな期待にも背いているのです。それだけではなく、治療施設に受け入れられなかった人からさらに感染が拡大する可能性が高いことを知りつつ、感染者を保護・隔離して治療してほしいと願っている人びとの期待にも背いているのです。

エボラ治療センターの外に腰を下ろし、お昼を食べていた時のことでした。男の子が門に近づいてきました。1週間前にお父さんがエボラで亡くなったと話す男の子の口は、出血で赤く染まっていました。それなのに、この子を受け入れる場所はないのです。男の子は私に背を向け、町に戻って行きました。この子は家族のもとへ帰るだろう、そして家族もエボラに感染するだろう……と思いました。

夜勤の時には、救急車で半日も"たらい回し"にされた患者さんを診察しました。どの医療施設も満床で、受け入れ先がなかったのです。

世界は、エボラを今すぐ抑え込む必要があります。それには、各国の協力が必要です。

接触者の追跡が必要です。感染者や、感染して亡くなった人と接触した人をすべて把握し、経過を追う必要があります。人びとの意識を高めることも必要です。この状況でもなお、「エボラなど存在しない」と主張する人があまりにも多いからです。

感染したすべての人が入院して治療を受けられるように、自宅にとどまって家族に感染させる危険を冒さなくてすむように、エボラ治療センターの増設が急務です。また、正しい対処法を身に着けた医療スタッフを増やし、治療施設の安定した運営につなげる努力も必要です。

もちろん、医療スタッフの安全確保の徹底も重要事項です。非常に多くの医療従事者や救急車運転手が、エボラに感染し、患者としてMSFの治療センターに運ばれて来ています。

ですから、お願いです。各国が保有している輸送能力、エボラ治療センターの設置能力、病床の管理・運営能力、そして感染症対策や災害時の緊急対応などの専門家を、流行地域に投入してください。日用品も必要です。モンロビアには、石けん、水、バケツのない家があります。手洗いなどの基本的な公衆衛生で、エボラを予防することが期待できるのです。

エボラは生活そのものを直撃しています。学校や大学、そして行政機関までも閉鎖されています。リベリアの未来は予断を許さない状況にあると感じています。

私の妻はモンロビアのジョン・F・ケネディ医療センターに勤めています。私たち夫婦は、子どもたちに、「自分で自分の身を守って生き延びろ」と教えています。医療従事者の子どもたちとして、子どもたちが"友だちのお手本"になれると考えています。

各国の皆さまも、この大惨事を食い止めるために必要不可欠な資源、物資、技術を備えた国として"友だちのお手本"になってください。

MSFだけではもう、この危機に対応する余力がありません。国際社会が立ちあがらなければ、私たちはもう終わりです。皆さまの力が必要です。 今すぐ、必要です。

MSFインターナショナル会長、ジョアンヌ・リュー医師のコメント

MSFはエボラ出血熱に関する国連安保理の緊急会議が開催されたことを歓迎します。私たちは各国政府に対し、すでにエボラ対策に加わる決意を表明している国々に続くことを呼びかけます。具体的な行動が求められています。

スピード感が重要です。行動は危機的に遅れているものの、米国や英国は意欲を見せています。ただ、対策は"待ったなし"です。何ヵ月どころか数週間すら待っている時間はないのです。数千人の命がかかっています。各国が、人的・物的資源をエボラ流行地域に可能な限り早く供給することが求められています。

私たちはすでに、未知の領域に足を踏み入れています。対策を表明した国の行動だけで充分かどうか、予測することは不可能です。事態が数週間でどのように悪化していくか、誰にもわからないからです。どれだけ大規模な対応でも、大きすぎるということはありません。この予測不能な事態にあわせていく柔軟性が全てに優先します。野外病院、訓練を受けたスタッフ、緊密な連絡・調整システムが、切実に求められています。今すぐ、です。

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