病院に残る医療従事者は約30人、患者の搬送もできず…戦闘激化のイエメンで活動継続──国境なき医師団
2026年09月15日
イエメンでは、西部沿岸におけるアンサール・アッラー勢力の急速な進軍と内戦の激化により、国境なき医師団(MSF)の活動が深刻な影響を受けている。
南西部の都市モカでは、モカ総合病院を除く市内のほぼすべての医療施設が機能を停止。患者を市内外の別の施設へ搬送することもできない。
MSFは分娩や救急医療などの機能を維持するため、モカ総合病院に残って支援を続けている。最新の状況について、イエメンの活動責任者ルー・コーマックが報告する。
イエメン活動責任者 ルー・コーマック
母子医療を支えてきた地域で情勢が急変
MSFは2018年から、イエメン南西部の都市モカとその周辺地域で活動しています。主に取り組んでいるのは、小児医療と妊産婦医療へのアクセス改善です。こうした医療を受けることが日常的に難しい地域で、多くの女性や子どもたちの命を支えています。
モカでは、MSFがモカ総合病院で活動するとともに、病院や保健省のスタッフを幅広く支援しています。市外でも、モカ東方のマフラクと北方のハウハにある基礎診療所2カ所で、妊産婦・小児医療を支えています。両施設にMSFは常駐していませんが、資金援助や研修、医療機器・物資の提供をしています。
モカでは、MSFがモカ総合病院で活動するとともに、病院や保健省のスタッフを幅広く支援しています。市外でも、モカ東方のマフラクと北方のハウハにある基礎診療所2カ所で、妊産婦・小児医療を支えています。両施設にMSFは常駐していませんが、資金援助や研修、医療機器・物資の提供をしています。
9月に入り、アンサール・アッラー勢力が急速に進軍し、西部沿岸の大部分を掌握するなど、情勢は目まぐるしく変化しました。ここ数日、医療活動と人びとのニーズの両方に大きな影響が出ています。
ほんの数日前まで、MSFはモカで、以前運営していた仮設病院の再開を準備していました。マフラクの東で戦闘が起き、避難を余儀なくされた人びとが少しずつモカへ到着していたため、外傷患者の治療などをする予定でした。
また、市内へ到着した避難者への給水活動はすでに始めていました。モカとハウハではコレラ隔離・治療ユニットの設置を進め、まもなく完了するところでした。現地の病院が患者を受け入れられる限界に達していたことから、重症患者を別の都市へと搬送する救急車の増強にも取り組んでいました。
相次ぐ退避、続く分娩と救急医療
しかし、アンサール・アッラー勢力の急速な進軍により、状況は一変しました。
西部沿岸で外傷治療を担っていた病院では、わずか数時間のうちに相次いで退避を余儀なくされました。モカから南部やアデンへ逃れる人も続出し、その中には市内の病院で働く医療従事者も含まれていました。モカ総合病院も例外ではありませんでした。
MSFは活動を縮小・再編しつつモカにとどまり、モカ総合病院の基幹的な医療サービスを維持しようと注力しています。
これまでのところ、イエメン人の医師や産婦人科医、看護師をはじめとする医療従事者が尽力し、分娩、救急医療、集中治療など、必要最低限の医療を維持できています。現在、病院に残っている医療従事者は約30人です。決して多い人数ではありませんが、彼らの働きによって命が救われています。
アンサール・アッラー勢力がモカを制圧した時、産科病棟と小児科病棟には数十人の患者がまだ入院していました。その治療を続けながら、緊急の処置を必要とする患者も受け入れる必要がありました。
その日、病院では小児・産科救急に搬送された患者2人を診療し、緊急の帝王切開を2件実施しました。さらに、集中治療室の患者7人と新生児集中治療室の赤ちゃん10人をはじめ、一般病棟にいた数十人の患者や赤ちゃんの治療を続けました。
医療施設とスタッフの保護が不可欠
現在も極めて厳しい状況が続いています。9月11日現在、モカ総合病院を除く市内のほぼすべての医療施設が機能を停止しています。主な理由は、スタッフが退避したことです。市内の別の医療施設にも、アデンにも、患者を搬送することができません。
情勢が悪化する以前から、医療ニーズはすでに膨大でした。いま、そのニーズはさらに高まっています。
MSFはモカでの活動態勢を増強できないか模索していますが、簡単なことではありません。住民にとっても、MSFにとっても、緊張の続く極めて厳しい状況です。夜間にも爆撃があり、数時間から数日の間に何が起きるのか、いまも見通せていません。
情勢が悪化する以前から、医療ニーズはすでに膨大でした。いま、そのニーズはさらに高まっています。
MSFはモカでの活動態勢を増強できないか模索していますが、簡単なことではありません。住民にとっても、MSFにとっても、緊張の続く極めて厳しい状況です。夜間にも爆撃があり、数時間から数日の間に何が起きるのか、いまも見通せていません。
私たちが医療を続けるためには、MSFの医療・人道援助活動が尊重されなければなりません。人びとが必要な医療を安全に受けられるよう、医療施設や車両、スタッフを保護する必要があります。現地では受けられない治療を必要とする重症患者を、安全に搬送するためにも欠かせません。
医療活動に対するいかなる脅威も、医療の提供を危うくし、MSFがモカで活動を続けられなくなる事態につながりかねません。こうした最低限の安全が保障されなければ、私たちは人びとを治療し、命を救うという役割を果たせません。
これから何が起きるのかは分かりません。ただ、医療ニーズが膨大で、外傷治療だけにとどまらないことは明らかです。MSFは活動を続けられる限り、人びとへの援助と医療へのアクセスを維持するため、全力を尽くします。




