取り残される人びとに医療を──10年続く支援、それでも埋まらない空白:イエメン
2026年05月27日
内戦が長期化し、医療体制の著しい弱体化が続くイエメン。医療へのアクセスが深刻に不足する中、国境なき医師団(MSF)は10年にわたり、イエメン中部イッブ県にあるカーイダ総合病院で、外科治療を提供してきた。
MSFの援助はどんな意味を持ってきたのか。10年を振り返る。
終わらない人道危機 深刻なままの医療ニーズ
MSFは2016年、カーイダ総合病院での活動を開始し、紛争や事故、自然災害による重度の外傷に対応してきた。当時、地域の多くの人びとにとって外科医療へのアクセスは極めて限られていた。
それから10年が経過した今も、ニーズは高いままだ。生活環境の悪化や度重なる危機、長年の紛争による累積的な影響により、人びとは適切で質の高い医療を迅速に受けることが難しい状況に置かれている。とりわけ専門的な外科的治療を必要とする命に関わる外傷では、その影響がより深刻に表れている。
この10年間で、カーイダ病院はイッブ県における外科医療の重要な紹介拠点となった。MSFはこれまでに、救急外来で18万2000件以上の診療を行ったほか、集中治療室(ICU)への入院支援を約1万3000件、外科手術を約3万3000件、実施してきた。
これらの数字は、この地域における医療ニーズの大きさを示すと同時に、緊急医療および専門的な外科医療サービスの需要がいかに継続的で、高いものであるかを浮き彫りにしている。
「カーイダ総合病院は、単なる医療施設ではなく、周辺地域の人びとにとっての命綱です」と、院長のサミール・アル・アリキ医師は言う。
「病院は主要道路沿いに建っているため、交通事故から多数の傷病者が発生する事案まで、外傷患者が毎日のように搬送されてきます」
現在の経済状況では、多くの人びとは治療費を支払って医療を受けることが難しくなっています。無償の医療サービスは、なくてはならない存在なのです。
サミール・アル・アリキ医師 カーイダ総合病院の院長
「病院はこの数年で大きく発展しましたが、ニーズはいまも極めて深刻です。この支援が突然打ち切られれば、患者たちに重大な影響が及ぶでしょう」
すべての人に医療を──柔軟に進化する活動
医療ニーズの変化に伴い、病院の活動内容も進化してきた。当初は外傷の緊急対応に重点を置いていたが、今では整形外科手術や再建手術、熱傷治療などへと範囲を広げている。
また、重度の外傷を負った患者が再び自立した生活を取り戻せるよう、理学療法や心のケアを含む包括的な医療サービスも提供している。こうした変化は、人びとが直面する状況に応じて、MSFが医療提供のあり方を柔軟に適応させてきたことを表している。
同時にMSFは、イッブ県内の3カ所の基礎診療所を通じて、地域住民や避難民が医療にアクセスできるよう支援を続けている。
過去10年間で、MSFは5万2000件以上の入院患者を受け入れ、そのうち約1万4000件が小児患者だった。こうした数字は、医療施設にかかる負担の大きさと、弱い立場に置かれた人びとに対して包括的な医療が十分に行き届いていない現状を明確に示している。
こうした取り組みは、継続的な課題がある中でも、MSFの医療チームと地域の保健当局との連携によって支えられてきました。
アイヌル・アブセメトワ イエメンのMSF活動責任者
MSFは今後も、イッブ県およびイエメン全土で独立・中立に基づく医療援助を継続するとともに、この長引く人道危機の影響を受ける人びとのニーズと、持続的な国際援助の重要性を訴え続けていく。




