息子を抱いて病院まで3時間歩いた母 車の中で出産も 避難生活は苦しく…

2019年07月02日掲載

アブスの病院で栄養治療を受ける2歳のハイダルちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSFアブスの病院で栄養治療を受ける2歳のハイダルちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSF

4年以上も紛争が続くイエメン。2019年3月以来、サウジアラビアとの国境に近い北西部ハッジャ県で、暫定政府と反政府勢力「アンサール・アッラー」との紛争が激しくなり、1万5000人以上が避難した。すでに10万人が自宅を追われているなか、避難先には食べ物や清潔な水、下水設備もなく、人びとは極めて困難な状況に置かれている。国境なき医師団(MSF)は、ハッジャ県アブスで現地の病院を支援し、移動診療も2ヵ所で運営。診療と予防接種のほか、アブスの病院への搬送を行っている。子どもを対象に心のケアも行うほか、キャンプに水を供給しているが、必要な援助は足りない状態だ。 

はしかになった双子の娘たち

アブスの病院ではしかの治療を受けるブシュラちゃんとバシャイェルちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSFアブスの病院ではしかの治療を受けるブシュラちゃんとバシャイェルちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSF

農家のハレブさん(55歳)は5日前に、アブスの病院に双子の娘たちを連れてきた。ブシュラちゃんとバシャイェルちゃんは、はしかにかかっており、すぐに治療する必要があった。

「2人とも高熱でした。アブスの北にある交通の要衝地域、アヘム・トライアングルにある医療機関を全て回りましたが、無駄足でした」とハレブさんは話す。「3時間くらいかけて病院に行きましたが、燃料不足のため、交通費は4万イエメン・リヤル(約1万7000円)もかかってしまいました」

一家が暮らす地域では、食品の値上げ、高い生活費、水不足、生活基盤の少なさが住民に重くのしかかっている。ハレブさんは山で働いた稼ぎで家族を養っており、一家で唯一の働き手だ。子どもや孫、家族全員を養うのは簡単ではない。 

2歳の息子を抱き、3時間歩いて病院へ

治療中のハイダルちゃんと母親のガリサさん © Al Hareth Al Maqaleh/MSF治療中のハイダルちゃんと母親のガリサさん © Al Hareth Al Maqaleh/MSF

「3時間も歩いてここにきました。途中で息子は死んでしまうのではと心配でした」と語るのは、2歳の息子ハイダルちゃんの母親、ガリサさんだ。 アブスにあるメルナブ・キャンプから病院まで、抱いて連れてきた。まず着いたのは救急部門で、そこからハイダルちゃんは院内の栄養治療部門に移された。

ガリサさん一家は紛争を逃れ、アヘム・トライアングルからハイラン、さらにそこからベニ・ハッサンに移った。ベニ・ハッサンにまで戦闘が飛び火してきたとき、ガリサさんは子どもと夫と一緒にアブスのメルナブ地区へ逃げ、テントで暮らすことになった。寝る場所、水や食べ物も見つけられず、援助団体がくれる以外には収入源もなく、家族全員にはとうてい足りない。 

2人目の子どもを車中で出産

アブス病院に来る途中、車の中で出産したジンヤさんと赤ちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSFアブス病院に来る途中、車の中で出産したジンヤさんと赤ちゃん © Al Hareth Al Maqaleh/MSF

2人の子どもの母親、ジンヤさんは、ハラドからアブスのアルマアラス地域に避難して4年ほどが経つ。国内避難民キャンプで結婚して、最初の子どもはキャンプで誕生した。2人目の出産で陣痛が来たとき、夫はジンヤさんを車に乗せてアブス病院へ向かった。赤ちゃんは車の中で生まれた。

「戦争と爆撃があったので、避難しました。戦争が始まってすぐに逃げ出したんです。親戚を何人か、この戦争で亡くしました」とジンヤさんは話す。「キャンプの生活環境はかなりひどいです。食べる物が何もないこともあります」

ジンヤさんは夫と2人の子ども、夫の家族と一緒にわらのテントで暮らしている。夫は魚市場で働いている。ジンヤさんは続ける。「夫は兄弟と一緒に市場へ行って、どんな仕事でも引き受けています。仕事がなくてお金が入ってこないこともあります」

キャンプでは食糧や飲み水、下水設備も不足している。燃料不足のため、地域では交通費も上がっている。病院に来るにも15米ドル(約1622円)はかかり、収入のない家族が必要な治療を受けることが、難しくなっている。 

イエメンで緊急活動展開中
「緊急チーム」募金にご協力ください

寄付をする

※【支援対象】から「緊急チーム」募金を選択してください。
※国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。 

関連情報