多剤耐性結核との闘いに大きな前進 新しい短期治療法をWHOが推奨

2024年09月04日
インド西部プネーでMSFスタッフによる診察を受ける結核患者=2023年10月29日 © Siddharth Singh
インド西部プネーでMSFスタッフによる診察を受ける結核患者=2023年10月29日 © Siddharth Singh

世界保健機関(WHO)は8月19日、endTB臨床試験で研究された多剤耐性結核(MDR-TB)およびリファンピシン耐性結核(RR-TB)に対する3つの新しい治療法(以下、レジメン)を推奨することを発表した。

これにより、経口投与で9カ月での治癒が可能になる。従来のレジメン(毎日痛みを伴う注射を含む18カ月の治療)と比べ、はるかに短期間で同等の効果を得られるため、患者にとっては大きな負担軽減となる。
 
このendTBレジメンは2017年から2023年にかけて、7カ国で研究された。 endTB臨床試験は、結核に対するより効果的で期間の短い治療法の研究と、その普及を目指すプロジェクトで、国境なき医師団(MSF)、パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)、インタラクティブ・リサーチ・アンド・ディベロップメント(IRD)を中心とするコンソーシアムによって実施されており、国際医薬品購入ファシリティ(ユニットエイド=UNITAID)が資金提供を行っている。
 
「従来のレジメンは数十年に渡って使われてきましたが、NGOを含む独立した組織によって評価された新しいレジメンがWHOの推奨療法として取り入れられたのです」とMSFのendTBプロジェクトディレクターで、臨床試験の共同治験責任医師であるロレンツォ・グリエルメッティは話す。

「この快挙は、この2年間で二度目となりますが、治療が特に困難な数百万人の患者にとって、大きな前進です。毎年約50万人がMDR-TBまたはRR-TBに罹患し、その多くが死亡していることを忘れてはなりません」

新たなレジメンで治癒の可能性を高め、まん延を減らす

今回のWHOの発表にはもう一つ特筆すべき点が盛り込まれた。南アフリカで行われたBEAT-Tuberculosis臨床試験で検証された6カ月の治療戦略の推奨だ。

この治療戦略と、「BPaLM」として知られている6カ月のレジメン(MSFが主導してきたTB-PRACTECAL臨床試験の結果を受けて、2022年にWHOが推奨したレジメン)を併用することで、長期かつ副作用の強い従来のレジメンに代わって、治療の選択肢が広がることになる。
 
「製薬業界は、多額の公的資金を受け入れておきながら、新薬を世に送り出しているだけに過ぎないということを忘れてはいけません」とグリエルメッティ医師は語る。
 
「これらの薬剤をレジメンに使用するための情報を、製薬会社は提供していません。新薬の実用化や技術革新のための臨床試験はNGOが担い、慈善基金や公的資金がさらに使われているのです」
 
endTBの研究結果は、WHOが「小児、青少年、妊婦および授乳中の女性を含む、人口の多くを占めるグループ」において、新しい短縮レジメンの計画的な使用を推奨することを裏付ける、初めてのものだ。
 
これまで、このグループの人びとは、進化した治療法から除外されたり、導入が遅れたりする対象になってきた。
 
「医師はこれで、ほぼすべての患者に新しい治療を提供することができます」とendTB プロジェクトの PIH研究ディレクターで、この研究の共同主任研究者、かつハーバード大学医学大学院のグローバルヘルスおよび社会医学教授であるキャロル・ミトニック博士は話す。

新しい治療を提供することで、副作用を軽減しながら治癒の可能性を高め、また社会における薬剤耐性結核のまん延を減らしていくことができるのです。

endTB プロジェクトPIH研究ディレクター キャロル・ミトニック博士

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