干ばつで「非常事態宣言」 国際援助も急減──ソマリアで広がる深刻な食料危機、650万人超が直面
2026年05月19日
雨期に降る雨が4期連続で不十分だったことで、何百万人もの人びとが急性の食料不安に陥り、家を離れた住民もいる。さらに、国際援助の急激な削減が追い打ちとなり、最後に残された命綱さえも断たれようとしている。
国境なき医師団(MSF)は、ソマリアの避難民居住地で安全な水の供給や栄養失調の治療をするとともに、国境を接するエチオピア東部にも支援を広げている。
避難を強いる干ばつ
そう話すのはソマリアの国内避難民、レガイ・アリさん。ウェールベリルという町にあった自宅を離れた後、近所の人からお金を借り、約160キロ離れた同国南西州の町バイドアにある避難民キャンプまでたどり着いた。
干ばつで作物がだめになり、家畜も死んでしまいました。私たち家族は飢えのせいで避難してきましたが、まだ苦しんでいます。水はもらえますが、1日にポリタンク二つだけで足りません。洗濯、体を洗うこと、料理、飲み水……生活のすべてに使います。五つあっても足りないくらいです。
ソマリアの国内避難民 レガイ・アリさん
食料危機のレベルを判断する枠組み「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」によると、ソマリアでは650万人以上、つまり約4人に1人が深刻な急性食料不安に陥っているという。
このうち200万人以上が、5段階で上から2番目の「フェーズ4」に分類された。これは食料が極度に不足し、人びとが栄養失調や死亡につながる危険性の高い状況にあることを示している。2026年には、国内で5歳未満の子ども184万人以上が急性栄養失調に陥ると見込まれる。
こうした事態を受け、ソマリアでは国内避難民が増え続けている。
レガイさんのように、干ばつや紛争によって国内避難民となった人は約330万人に上る。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、水や支援を求めてエチオピアに越境した人も5万人を超えた。
そのため、バイドアや、ソマリア中部の町ガルカイヨ周辺の避難民居住地には多くの人びとが急速に集まっている。水の価格は高騰し、多くの世帯には手が届かない額にまで達した。現地では限られた量の水源を共有しているが、必ずしも清潔ではなく、感染症リスクも高まっている。
そのうえ、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ガルカイヨが位置するプントランドでは、2025年12月時点で約170カ所の深井戸と浅井戸が機能していなかったという。現地では安全な水を得ることが非常に難しくなっている。
栄養失調の子ども急増、MSFが支援拡大
病院は患者でひっ迫し、受け入れ能力を超えて治療にあたっている。収穫前で食料が不足しやすい「端境期」が始まったばかりにこれほど急増したことは、これから数カ月間で状況がさらに悪化することを示している。
MSFはソマリアで、2025年12月から干ばつの緊急対応をしている。
バイドアでは、避難民居住地17カ所で、2万1000人以上に3000万リットルを超える安全な水を届けた。またガルカイヨ近郊では、約1万1000人に300万リットルの飲料水を供給したほか、井戸の修復、衛生キットの配布といった衛生環境の整備にも取り組んでいる。
国境を越える干ばつ、エチオピアでも
2025年の雨期後の調査によると、隣国エチオピア東部のソマリ州でも同じ傾向が見られ、雨不足が牧畜民や農牧民たちに深刻な影響を及ぼしている。
ソマリ州南部、特にソマリアとの国境に近い乾燥低地のアフデル県とシェベリ県では、雨不足によって家畜が失われ、深刻な水不足と食料不安が起きている。牧畜民は生計を立てられず、限られた水資源を巡る緊張も高まっている。
アフデル県に暮らすイサク・イブラヒム・ムハンマドさんはうなだれる。
この地域の人たちは生きるため、家畜を育てていました。しかし、雨が降らなくなると家畜を失いました。私たちは水を得られる場所へ逃れましたが、何も頼れるものがなく非常に厳しい状況です。人びとは川から水をくむためだけに1時間以上歩き、そのうえその水を家畜と共有しています。体調を崩し、下痢や栄養失調になる人もいます。
エチオピア・アフデル県の住民 イサク・イブラヒム・ムハンマドさん
この状況は、資金不足によって医療・人道援助団体の撤退が進んでいることでより悪化している。さらに、中東での紛争激化に伴う燃料価格の上昇や、サプライチェーンに制約が生じていることも対応を一層難しくしている。
MSFエチオピアの副医療チームリーダー、アブドゥラヒ・ムハンマド・アブディはこう説明する。
地域保健局と調査した地域では、医療施設で栄養失調による入院が多く確認されました。現地で私たちが目にしているのは、世界的な国際援助の削減や物資不足、そして支援団体の活動縮小です。患者がこれまで受けられていたサービスは減っています。その結果、既存の体制に大きな負担がかかっています。特に影響を受けているのが水・衛生の分野です。
MSFエチオピアの副医療チームリーダー アブドゥラヒ・ムハンマド・アブディ
エチオピアでは、MSFはアフデル県バレイ郡で地元保健当局と協力して栄養支援と水・衛生活動をしているほか、シェベリ県への支援拡大も計画している。
援助急減、命を守る活動に危機
OCHAによると、ソマリアでは2026年に必要とされる人道援助の資金のうち、わずか10.9%しか集まっていない。
その影響はすでに食糧支援にも表れている。国連世界食糧計画(WFP)は、緊急食料支援の対象者を200万人超から60万人強へ削減した。
食料支援を必要とするソマリアの人びとのうち、いま支援を受けられているのは7人に1人だけだ。この資金不足の影響によって、30万人以上が安全な水を得ることができなくなり、プントランドでは70カ所超の医療施設が閉鎖された。
MSFは各国政府をはじめとする資金提供者に対し、ソマリアとソマリ州における支援活動を続けるための援助額を速やか回復し、さらに増やすよう求めている。
MSFソマリアのプロジェクト・コーディネーター、ムハンマド・オマルはこう訴える。
私たちが避難民居住地の各地で目にしているニーズは膨大で、一つの団体が単独で対応できるものではありません。人びとは毎日のように逃れてきますが、資源がそのペースに追いついていないのです。さらに多くの命が失われる前に、国際社会と各国政府がいますぐ支援を強化するよう求めます。
MSFソマリアのプロジェクト・コーディネーター ムハンマド・オマル




