スーダン:暴力、飢餓、医療崩壊──それでも力強く生きる人びと 国境なき医師団が報告書『南ダルフールからの声』を公開
2025年06月12日
報告書の中でMSFは、まん延する暴力、不安定な治安、飢餓、崩壊した医療制度、そして、不十分な国際社会の対応が相まって、現地の生活がいかに限界まで追い込まれているかを、人びとの証言を通じて明らかにしている。
「人びとの声や物語からは、南ダルフール州全域に広がっている苦難や虐待、残酷さが浮き彫りになるだけでなく、人びとの忍耐力と思いやりも見えてきます」と、スーダンでMSF緊急対応マネージャーを務めるオザン・アグバスは話す。
民間人の保護が崩壊し、人道援助も依然として十分でないなかで、人びとは自分たちの声に耳を傾け、注目し、行動を起こしてほしいと訴えています。
オザン・アグバス スーダンのMSF緊急対応マネージャー
拘束、窃盗、略奪、レイプ──日常にはびこる暴力
とても不安です。外に出れば、私もレイプされてしまうでしょう。
避難民キャンプで暮らす南ダルフール州出身の女性
ここ3日間、何も食べていません。でも外に出たら、帰り道で何が起こるか分かりません。夫を殺した人たちが、私にも同じことをするかもしれないと思うと、怖いのです──。
ベレイルに避難してきた21歳の女性
暴力により医療制度は崩壊し、さまざまな要因──施設の破壊や損傷、医療従事者の逃亡や給与の未払い、物資の不足や供給の中断など──が重なって、人びとは適切な医療を受けることができなくなっている。
また、残されたわずかな医療施設にも、人びとは交通費が工面できず、たどり着くことが難しい状況だ。

1日1食もままならない 加速する飢餓
2024年1月から2025年3月にかけて、MSFは南ダルフール州で、5歳未満の急性栄養失調の子ども1万人以上を治療した。また、栄養失調の妊婦、授乳中の女性や少女たち数千人にも、栄養治療を提供した。
何か手に入れば食べる、手に入らなければ食べない。それが私の生活です。
アル・サラム避難民キャンプに暮らす24歳の女性

紛争が始まって以来、南ダルフール州に対する国際機関や国連機関の対応は不十分で、一貫性がなく、援助の開始も遅かった。
2024年11月、ニヤラに住む23歳の女性はこう語った。
国際機関が人びとを助けていると聞きましたが、私たちには何も届いていません。
ニヤラに住む23歳の女性
最近は、国連機関が南ダルフール州に援助物資を届ける方法を徐々に見出しており、NGOも少しずつ活動を拡大している。
しかし、アクセスが著しく制限されているため、紛争開始から2年以上が経過した今も、国連機関は現地で援助活動を指揮・調整するための拠点を設置できておらず、NGOも慎重な対応を続けざるを得ない。

団結すれば暴力を乗り越えられる──
ダルフールの地域コミュニティは、必要なサービスを提供するための知識と専門性を兼ね備えています。こうした最前線で活動する人びとに、物資、資金、そして意思決定権を与えることは、人命救助に大きく貢献するでしょう。
オザン・アグバス スーダンのMSF緊急対応マネージャー

※報告書『南ダルフール州からの声』に掲載されている証言および医療データは、2024年1月から2025年3月までの活動を通じて収集したもの。