閉ざされる道、奪われる命──スーダンの避難民キャンプで、いま何が起きているのか
2024年10月02日
- スーダン北ダルフール州の国内避難民キャンプ、「ザムザムキャンプ」では、封鎖措置により30万人以上の住民に必要な物資や食料が届いていない。
- 9月上旬に実施された栄養状態のスクリーニングでは、子どもたちの栄養失調が憂慮すべきレベルであることが判明した。一方、物資が入手できないため、国境なき医師団(MSF)は活動の縮小を余儀なくされている。
- キャンプに食料や物資を迅速に届けるため、あらゆる選択肢の検討が求められる。
数千人の子どもたちが命を落とすことに──
MSFの緊急活動責任者ミシェル・オリビエ・ラシャリテは、状況を次のように説明する。
「今回の調査結果によって、MSFなどの援助団体がこれまで目の当たりにして警告を発してきたことが、改めて事実として確認されました。しかも、事態は日々悪化しており、時間が残されていません。このザムザム・キャンプに、一刻も早く人道援助と必要物資を届けなければなりません」
このままでは、今後数週間のうちに、数千人の子どもたちが命を落とすことになります。彼らは医療を必要としています。
ミシェル・オリビエ・ラシャリテ、MSFの緊急活動責任者

今年5月、ファシール周辺で戦闘が激化して以来、ほとんどの補給道路は、準軍事組織である即応支援部隊(RSF)に支配されている。医薬品や必要物資をキャンプまで運び込むことは不可能に近い状況だ。
MSFの活動も限界に
しかし、もはや一刻の猶予も許されない。本来なら防ぐことのできる数千人の死を防がなければならない。9月初旬、ザムザム・キャンプにおいて集団予防接種があった際、同時にスクリーニングも実施された。その調査結果によれば、5歳未満の子ども2万9000人以上のうち、10.1%が重度急性栄養失調に陥っており、生命の危機にあることが判明した。また、全急性栄養失調(中等度と重度の急性栄養失調を合わせたもの)の割合は34.8%に及ぶ。適切かつ迅速な治療を施さなければ、さらに深刻な栄養失調のステージに進むだろう。
MSFにて医療チームリーダーを務めるクローディーン・メイヤーは、次のように語る。
「今回のスクリーニングで、栄養失調率が非常に高くなっていることが判明しました。おそらく、世界最悪の部類に入ります。さらに懸念されるのは、今回の調査結果が、実態よりも低く見積もられている可能性です。本来なら、体重や身長も測定すべきなのですが、今回は、上腕の周囲長だけを測定基準にしているためです」
今年3月にMSFが実施した集団検診では、急性栄養失調率が8.2%だった。全急性栄養失調率は29.4%である。これは、世界保健機関(WHO)が示している警戒値15%の約2倍となる数値だ。

いま現地で手に入る食料は、以前からの備蓄分のみだ。現地の人びと全員に行き渡る量ではない。しかも、ダルフール地方の他のエリアと比較して、食料価格は少なくとも3倍になっている。燃料価格も高騰しているため、水を汲み上げることすら難しい状況だ。診療所の運営には、発電機を用いた電力確保が必須だが、それも困難を極めている。現地のMSFスタッフたちによれば、1日1回の食事すら不可能な人びとが大勢いるという。
先ほどのクローディーン・メイヤーが、さらに説明する。
これほど事態が深刻になっているのですから、本来なら、MSFも対応を強化すべきです。しかし、極度の物資不足ゆえに、私たちも限界に達しつつあります。
クローディーン・メイヤー、MSFの医療チームリーダー
「ここしばらくは活動縮小を余儀なくされ、最も症状の重い子どもたちにのみフォーカスしています。言い換えれば、軽度から中等度の栄養失調にある子ども2700人については、治療を中断するしかない状況です。また、5歳以上の子どもや大人に向けた治療も停止しています。毎月数千件の診療がストップしているのです」
最も弱い人びとが犠牲になる
ザムザム・キャンプには、推定30万から50万人の避難民が暮らしている。その多くは、昨年より続く内戦から逃れてきた人びとだ。彼らがかつて住んでいたファシールでは、紛争によって多くの病院が破壊された。今では、部分的に機能している病院が一つ残っているのみである。
先ほどのミシェル・オリビエ・ラシャリテが、最後にこう語った。
この理不尽な物資の遮断によって、私たちは、患者を置き去りにし、見捨てているように感じています。
ミシェル・オリビエ・ラシャリテ、MSFの緊急活動責任者
「患者たちは、自分の命を守るために医療を求めているのに、その医療を受ける術がないのです。物資をキャンプまで運ぶための道路が使えないのなら、国連は他のあらゆる手段を検討すべきです。物資の供給がこれ以上遅れたら、さらなる数千人の死者が出ることになる。その多くは、最も弱い立場にある人びとなのです」
