パレスチナのいまを伝える“五つのポイント”──子どもが週に1人殺害され、爆撃、銃撃が日常に…活動地から最新報告
2026年05月26日
いま、パレスチナで何が起きているのか──。
ガザ地区では「停戦」という言葉とは裏腹に、イスラエル軍による攻撃が日常化。子どもたちが爆発や銃撃で傷つき、水、食料、医療物資などの必需品も十分に届いていない。
ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍や入植者による暴力が激しさを増し、ほぼ週に1人のペースで子どもが殺害されてきた。住民は攻撃におびえ、外出さえためらうなかで心の健康がむしばまれている。
パレスチナでいま、人びとの命と暮らしを脅かしているものは何か。国境なき医師団(MSF)が活動する現場から、五つのポイントに整理して伝える。
ガザ地区では「停戦」という言葉とは裏腹に、イスラエル軍による攻撃が日常化。子どもたちが爆発や銃撃で傷つき、水、食料、医療物資などの必需品も十分に届いていない。
ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍や入植者による暴力が激しさを増し、ほぼ週に1人のペースで子どもが殺害されてきた。住民は攻撃におびえ、外出さえためらうなかで心の健康がむしばまれている。
パレスチナでいま、人びとの命と暮らしを脅かしているものは何か。国境なき医師団(MSF)が活動する現場から、五つのポイントに整理して伝える。
1.攻撃が日常化するガザ地区で、子どもたちが深刻な被害を受けている
ガザでは、ほぼ毎日のようにどこかで攻撃が起きている。ガザ保健省によると、いわゆる「停戦」が発効して以降、イスラエルによって870人以上が殺害され、2600人以上が負傷した。
子どもたちも例外ではない。MSFは2025年10月10日~2026年5月11日の7カ月間に、ガザ中部デールバラハの仮設病院で、攻撃に巻き込まれてけがをした子ども243人を受け入れた。これは、この病院で治療した暴力関連の負傷者のうち約12%を占める。
子どもたちも例外ではない。MSFは2025年10月10日~2026年5月11日の7カ月間に、ガザ中部デールバラハの仮設病院で、攻撃に巻き込まれてけがをした子ども243人を受け入れた。これは、この病院で治療した暴力関連の負傷者のうち約12%を占める。
こうした子どもたちのほとんどは、爆発によってけがをしていた。その中には5歳未満の子ども37人が含まれており、12人は銃創の治療を受けた。
また、ガザ南部ナセル病院でも2026年1~4月の間、MSF外傷部門に入院した15歳未満の子どもが196人に上った。これは負傷患者全体の5人に1人の割合だ。
さらに、同じ4カ月間、ガザ市内にある別のMSFの診療所では、負傷した子ども113人が治療を受け、そのおよそ96%が爆撃による爆発や銃撃で負傷していた。
こうした問題が続く背景の一つには、停戦合意以降、ガザを分断してきた「イエローライン」がある。
このラインはイスラエル軍が指定・管理する区域だが、境界線は曖昧で、その範囲は少しずつ拡大している。現在、ガザの約58%がイスラエル軍の管理下に置かれている。
MSFは「イエローライン」の周辺地域から搬送される、攻撃を受けて負傷した患者の治療を続けている。けがの種別は、爆発による外傷、破片による傷、爆風に伴う打撲や骨折、銃創などさまざまだ。
2.ヨルダン川西岸地区では、イスラエル人入植者による暴力がかつてないほど激しくなっている
ガザで紛争が激化した2023年10月以降、ヨルダン川西岸でもパレスチナ人に対し、イスラエル入植者による暴力、軍事作戦、あらゆる制限がいっそう強まっている。
パレスチナ人は、自宅、土地、学校などあらゆる場所で攻撃を受けている。2026年3月には、過去20年間で最も多くのパレスチナ人が入植者による暴力で負傷した。
パレスチナ人は、自宅、土地、学校などあらゆる場所で攻撃を受けている。2026年3月には、過去20年間で最も多くのパレスチナ人が入植者による暴力で負傷した。
子どもに対する暴力も増えている。
2025年1月以降、東エルサレムを含むヨルダン川西岸で、少なくとも70人のパレスチナ人の子どもが殺害された。平均するとほぼ1週間に1人の子どもが殺されてきた計算になる。
その一方で、加害者はなんの責任も問われていない。今世紀に入ってから、ヨルダン川西岸でパレスチナ人の民間人を殺害したとして起訴されたイスラエル兵、警察官、入植者は存在しない。
2026年だけでも、すでに16人のパレスチナ人が入植者によって殺害されているにもかかわらずだ。
こうした状況を受け、人びとの心の健康も脅かされている。
住民たちは外を移動するだけでも、道中でイスラエルの入植者や軍、行政当局に見つかることを恐れている。「家を離れれば取り壊されるかもしれない」という恐怖から、外出自体をためらう人もいる。
MSFはヨルダン川西岸地区で心のケアを続けている。
現地でパレスチナ人に接していると、感じているストレスが一過性のものではないことが分かる。恐怖や不安、睡眠障害、状況の不安定さ、自由に日常生活を送れない制約。このようなあらゆる負の感情が、人びとの心の健康をすり減らしているのだ。
2026年1月1日~4月30日の間に、MSFはヨルダン川西岸・北部のナブルスで心のケアの個別相談983件を実施した。ほとんどの患者が、現地の状況に関連した重いトラウマ、不安、抑うつ症状を訴えるか、すでにその治療を受けていた。
3.イスラエル軍による必需品の搬入制限が、ガザ地区での暮らしと命を脅かす
ガザの物流において特に深刻なのは、低温管理が必要な医薬品の輸送だ。イスラエル当局は、インスリンやワクチンなど温度管理を誤れば劣化する物資についても、冷蔵トラックでの輸送を認めていない。
そのため、MSFが提供できる医療の質が損なわれ、患者の命が直接危険にさらされている。
さらに、発電機や車両を動かし続けるために欠かせない燃料も尽きかけている。
そのため、MSFが提供できる医療の質が損なわれ、患者の命が直接危険にさらされている。
さらに、発電機や車両を動かし続けるために欠かせない燃料も尽きかけている。
燃料がなければ、病院や給水設備、救急搬送、物資輸送などが止まってしまう。発電機で動く保育器のなかで命をつないでいる乳児を含め、多くの人びとの命が危険にさらされる。
MSFは、パレスチナで活動する団体としての登録をイスラエルによって取り消された後、1月1日からガザに物資を直接搬入できていない。それでもガザ地区各地で活動を続けており、これからも可能な限り続けていく。
イスラエル当局に対し、燃料を含む十分な量の人道物資を直ちに搬入できるようにすることを強く求める。人びとの命がかかっているためだ。
4.水を奪われたガザ地区で、防げるはずの病気が広がっている
イスラエルは、ガザにある水・衛生インフラ約90%の一部または全てを破壊した。そこには、海水を淡水化する施設や井戸、水道、下水設備が含まれる。
MSFは、イスラエル軍が給水車だと明らかにわかる車両を銃撃したり、数万人が使っていた井戸を壊したりした事例を記録している。こうした暴力的な事案は、水の配布時に起きることも多く、パレスチナ人や援助従事者が被害を受け、機材も損傷している。
MSFは、イスラエル軍が給水車だと明らかにわかる車両を銃撃したり、数万人が使っていた井戸を壊したりした事例を記録している。こうした暴力的な事案は、水の配布時に起きることも多く、パレスチナ人や援助従事者が被害を受け、機材も損傷している。
水を使えない影響は、人びとの健康被害や衛生状態の悪化にとどまらない。
特に、女性や障害のある人びとへの影響は大きい。水に加えて、石けん、おむつ、生理用品など、身の回りの衛生に必要な最低限のものさえ手に入れづらくなっている。
また、人びとは地面に穴を掘ってトイレ代わりにするしかなく、そこから汚物があふれ、周辺の環境や地下水を汚染している。
さらに、過密なテントや仮設の避難場所での劣悪な生活環境は、病気の増加につながっている。特にMSFの基礎医療センターでは呼吸器感染症、皮膚疾患、下痢性疾患などが多く見られる。
5.依然として深刻なガザ地区の栄養失調
ガザでは、栄養失調がいまも深刻な問題だ。
2026年1~3月には、MSFの外来栄養治療センターで計383人の子どもを受け入れた。このうち35%は重度の急性栄養失調だった。
また、同じ期間にナセル病院と北部アルヘロウ病院では、妊婦5996人のうち4人1人が栄養失調の影響を受けていると確認された。いったん回復しても、再び栄養失調に陥る患者も出ている。
2026年1~3月には、MSFの外来栄養治療センターで計383人の子どもを受け入れた。このうち35%は重度の急性栄養失調だった。
また、同じ期間にナセル病院と北部アルヘロウ病院では、妊婦5996人のうち4人1人が栄養失調の影響を受けていると確認された。いったん回復しても、再び栄養失調に陥る患者も出ている。
飢饉(ききん)は、食料が戻れば解決するものではない。ガザでは2025年、紛争による治安悪化とイスラエルの意図的な封鎖で食料を奪われた。その影響がいまも人びとの体に栄養失調という形で表れているのだ。
人びとの回復を妨げる要因も重なった。国連によると、ガザにおける失業率は80%に達し、食料価格の多くは2倍に高騰した。そのため、新鮮な食品やたんぱく源は多くの家庭にとって手の届かないものになってしまった。
人びとは日々の炊き出しに頼らざるを得ない。OCHAによると、いまも5世帯に1世帯は1日1食しか食べられていないという。
ガザに入るトラックは増えているものの、そのほとんどは商業用であり、人道援助のためではない。




